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日本の農業に未来はあるか ─ 種子が危ない? Vol.3

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皆さん、こんにちは。Parole編集部です。
九州地方豪雨災害の一日も早い復旧・復興を祈念しつつ、今回もインタビューをスタートさせていただきます。

前回は「種子法」について深く掘り下げつつ、反対派の方々の問題提起、その背景などについて、ゴトウさんに詳しくご説明いただきました。
実際の農業現場からの情報は、新しい気づき、学びに繋がっているのではないでしょうか。

今回は前回の予告どおり「遺伝子組み換え種子」(以下、「GM種子」)についてお話を伺います。

陰謀論に必ず登場するテーマということで、読者の皆さんのなかにも興味をお持ちの方がたくさんいらっしゃると思います。
タブーなしで、ゴトウさんに切り込んでいただきましょう。


日本における「GM種子」の栽培と消費について

【編集部】
今回(Vol.3)では、「種子法廃止」「種苗法改正」に重点を置きつつ、「GM種子」に関連する部分について話をお伺いしたいと思います。

【ゴトウ】
かしこまりました。なるべく分かりやすくご説明できるように頑張ります。

前回の繰り返しになりますが、本来、「種子法」の廃止問題と「遺伝子組み換え種子」の問題とは直接的な関係性はありません。

しかし、反対派の方々の多くが「種子法が廃止されると、多国籍GM種子会社が日本のイネ種子市場に参入して独占する!」というような問題提起を拡散させているので、ここでも「GM種子」との関連について触れておかないワケにはいかないですからね。

【編集部】
本題に入る前に、ひとつお願いがあります。
「遺伝子組替え○○」「GMO」「GM種子」などの言葉はよく耳にするのですが、専門用語の意味や用語の違いなどが一般人に分かりにくいと思います。
ですので、最初に本題を理解するために、最低限必要な専門用語について整理していただけますか?

【ゴトウ】
そうですよね。
フェイクニュースを見抜くため、情報を精査するためにも、それが必要だと思います。

最初にお伝えしておきたいのですが、専門用語の意味について理解するのは、実はとてもややこしいです。専門用語の使い方だけで論争になっているほどです。

まず、米国、日本などの国によって言葉の使い方が異なります。しかも、各国の政府の各省庁、民間組織でも言葉の使い方が異なります。

以下に簡単に整理整頓してみました。違いがおわかりいただけるでしょうか?

用語解説

▼米国
・米国農務省(USDA) = バイオ工学食品 = Bioengineered Food = BE
・米国農務省動植物検疫局(APHIS) = 遺伝子工学 = Genetically Engineered = GE
・米国食品医薬品庁(FDA) = 遺伝子工学 = Genetically Engineered = GE
・米国環境保護庁(EPA) = 遺伝子工学 = Genetic engineering = GE
非GMO食品検証非営利組織(NON-GMO PROJECT)

※2020年1月より法改正
・バイオ工学食品 = Bioengineered Food = BE
※図表-1:米国農務省(USDA)
「バイオ工学食品・BE(Bioengineered Food)」ロゴマーク

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▼欧州
・EU:遺伝子組換み変え作物
= Genetically Modified organism = GMO
・フランス:遺伝子組換み変え作物 = Genetically Modified organism = GMO
・ドイツ:遺伝子組換み変え作物 = Genetically Modified organism = GMO
・スペイン:遺伝子組換み変え作物 = Genetically Modified = GM作物

▼日本国
・農林水産省:遺伝子組換え農産物
= Genetically Modified organism = GMO
 ※ただし農林水産省は「GMO」という表記を推奨していない
・厚生労働省:遺伝子組替え作物
・食品衛生法:組替えDNA技術応用作物
・環境省:遺伝子組換え生物

▼消費者団体
・生協パルシステム:遺伝子組み換え作物 / 遺伝子組替え食品 / 遺伝子組替え原料
= GMO
・生活クラブ:遺伝子組み替え作物 = Genetically Modified = GM作物 / 遺伝子組替え食品 = GM食品
・らでぃしゅぼーや:遺伝子組み換え作物 = GMO
・ビオ・マルシェ:非遺伝子組み換え = NON-GMO

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米国では法改正がありましたので、今年から「 バイオ工学食品 = Bioengineered Food = BE 」という表記に統一されていくようです。
日本でも、省庁や組織によって表記が異なるので、統一してほしいと思います…個人的には。

【編集部】
確かに、これはややこしいですね。専門用語を理解するだけでも面倒です。
理解するのが面倒だと、なおさらフェイクニュースとなって拡散しやすいのかも知れませんね。

【ゴトウ】
その可能性はあります。世の中的には専門用語の統一はされていませんが、この連載では取りあえず理解度を深めるためにも用語を統一しておきましょう。


専門用語の統一

1.「遺伝子組替え種子」=「BE種子」=「GE種子」=「GMO種子」=「GM種子」(以下、GM種子)
・遺伝子を組み換えた種子
・圃場で栽培するための種子

2.「遺伝子組替え作物」=「BE作物」=「GE作物」=「GMO作物」=「GM作物」(以下、GM作物)
・遺伝子を組み替えた種子で栽培された農作物

3.「遺伝子組替え食品」=「BE食品」=「GE食品」=「GMO食品」=「GM食品」(以下、GM食品)
・遺伝子を組み替えさえた種子で栽培された農作物を原料とした食品

ここまではよいでしょうか?

【編集部】
ありがとうございます。おかげさまで少し頭の中が整理できました。

【ゴトウ】
「GM種子」の開発の仕組み、「GM種子」と他の作物との違い、安全性や危険性などに関して基本的な解説をさせていただきたいのですが、それだけでも膨大な量のコンテンツになってしまいます。

今回は「種子法」や「種苗法」に関連する部分が主題テーマですから、本題を理解するために必要な解説のみに絞り、専門的な解説は別の機会に譲るということで進めさせていただきます。

さて、いよいよ本題に入りましょう。まずは、「GM種子」=「GM作物」の現状についてです。


現状その1:「GM作物」にはどんな種類があるのか?

1996年に世界で初めて「GM作物」の商業栽培がスタートしたのは米国でした。その際の「GM作物」は、ダイズとトウモロコシの2品目だけでしたが、
その後「GM作物」の品目はどんどん増加していきます。

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