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【parkERsの課外授業vol.4】 未来へ繋ぐ「森づくり」で実現するSDGs

こんにちは。parkERs プランツコーディネート室の児玉です。

これまでnoteでもplants culture caravan野外版のvol.1〜3として、「明治神宮、鎮守の森をめぐる」、「間伐材を生む檜原村の森」「盆栽村の歴史と技を知る」をテーマにそれぞれ足を運んで体感してきたことをご紹介してきました。


人がつくった人工の森、ビジネスとしての森、文化としての盆栽、これらの植物たちはどれも人の手が入ったもので、これからも人の手を入れていかなければ成り立ちません。(明治神宮も自然の森に近いですが多くの人が訪れる場所のためやはり管理は必要のようです)

今回の「植樹祭」では、植えたあと数年の手入れをしたのち、人が干渉せずに育っていく森づくりを体験してきました。そんな森づくりの方法と「なぜこの取り組みが必要と考えているのか」をお伝えしたいと思います。

なぜ今、「植樹」なのか?

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古くから森と海は繋がっていて、縄文時代の人々はそれを知って生活していました。

森が水をつくり、水が海に流れて、蒸発し空に上がって、雨になってまた森に落ちる。この自然の流れのあいだに、人間は住んでいます。森がつくった水や空気、わたしたちはその恩恵を受けています。当たり前すぎてなかなか気づけないかもしれません。

昔は森だったところが都市になっていったり、森に人が自分たちに都合がよいように手を加えすぎてしまった結果大規模な土砂災害が起きてしまったり、都市化が進んで便利になる一方で、森を壊して失ったものが多いのもまた事実です。

2011年の東日本大震災では、津波でコンクリート堤防や松林がことごとく破壊される中、深く根をはった木々が津波の勢いを和らげてくれました。そして関東大震災や阪神大震災では、大火により建物が燃える被害を食い止め、防災林として大きな役割を果たしました。それだけ木々や森はわたしたちの生活に、実は強いつながりを持っているのです。

ここ数年は特にSDGsをはじめ世界では持続可能な地球を実現するための活動が積極的に行なわれていますが、わたしはその中でもこうした森の大切な役割を考えると「災害に強い森づくり」は災害予防という点からも大切な活動だと考えています。


100年かかる森づくりを10年で

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2019年11月8日 晴れ時々曇り。
一般社団法人Silvaさん主催の秋の植樹祭が開催されました。

※今回は植樹祭の前にも「森の講座」と題して、Silva代表で植栽衛生士の川下さんに森や植樹に関する講義を事前に行なっていただいてから、植樹に参加しました。ありがとうございました!


ゴルフ場を作るために森を壊し転圧をかけた直後にバブルが崩壊し、その結果放置されて荒れていた斜面を森に甦らせるべく集まった、総勢300人の老若男女。

第17回目となる植樹祭を主催する代表の川下さんは、「植樹の神様」と呼ばれる宮脇昭先生の教えのもと植樹を実践されています。

宮脇昭 先生
公益財団法人 地球環境戦略研究機関 国際生態学センター 名誉センター長 
理学博士(広島文理科大学)
紫綬褒章、勲二等瑞宝章、第 15 回ブループラネット賞、1990 年度朝日章、日経地球環境 技術大賞、ゴールデンブルーメ章、チュクセン章等数々の賞を受賞し、今に至るまで森づくりを続けている”4千万本の木を植えた男”と呼ばれています。


その植樹法とは、土地本来の樹種を数十種類選定し、混植密植することで原生林に近い森林を形成するというもの。この方法だと100年間かかる森づくりも10年ほどでできるそうです。

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混植密植とは・・・いろいろな種類を密集させて植える方法。
植物同士を離して植える一般的な方法に対して、あえて密植することで植物同士が競争し根が張り強くなります。また混植のため深いところに根を張る種類も入れば浅いところに根を張る植物もいるため、根っこが複雑に絡み合い地盤が強くなり災害に強い森づくりに繋がります。


植樹の方法

1. 好きなポット苗を選び、穴を掘ります。
 根鉢がゆとりをもって入るくらいの大きさに。
 その時、隣の樹とスコップ2個分離して穴の位置を決めます。

ワンポイント:自然界には直線も均等もないので、まわりの樹と直線になったり均等にならないようにランダムにデザインすること

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2. ポットから苗木を外して穴に入れて優しく土を入れ戻します。周りをぐっと手で押して苗木を固定します。

ワンポイント:根がポットの形に回っているのは根が張っていい苗です!石も埋め戻してOK。根が張って微生物が土を柔らかくしてくれます。

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3. 地表が乾かないようにワラを地面に敷きます。その後、お願いごとを掛けて、水を根元にあげたら完成!

ワンポイント:ワラは横向きに。斜面に沿って縦に敷くと雨で流れてしまいます。

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大切な2つの準備


わたしたちはsilvaさん主導のもと、あらかじめ今回の植樹祭に向けて準備を行ないました。それは自然の成り立ちに沿った大事な作業です。せっかく植樹した樹が生きていくために欠かせない2つのこと。


1.  風を流すこと

水の道は、風の道。植樹をする山の両脇に雨水の流れる道(=水脈)を掘ります。

2.  水を流すこと
水が地中に浸透し根に染み渡るように、雨水をためる穴を掘ります。


このちょっとした溝や穴を大地に施すだけで、森の生育は急速に早まり健康に育ちます。またこの先少し苗木が成長した段階で、周囲の草をカマで優しく刈り取ります。本当にさっ、さっ、とカマで葉の先を撫でる程度に。刈り取った草もそのまま土の上に戻せば自然と栄養になっていきます。

実はこのちょっとした作業が風の通りと太陽の日当たりを良くし、100年かかる森づくりを10年で行なえるようになるのです。

こうして植物の育成の本質を知ることは、都会の室内に植物を植えるわたしたちに必要なアイディアを投げかけてくれているようにも感じます。


植樹の輪が広がるように

植樹

冒頭にも少し書いたように、人は環境を壊してきました。
でも、「森づくり」を手伝えるのも人の手でないとできません

わたしはたまたまparkERsという、昔から人にとって身近な存在だった植物を、日々過ごす室内に取り込み人がここちよいと感じる空間を提供するブランドで、その空間で生まれる”豊かな時間”をお客さまに提供しています。

植物をあつかう人間として、色々なお客さまと関わるこの仕事だからこそ、未来につながる森を作っていくことの大切さを、広く伝えていくことができます。

実際に、伊勢丹新宿店の店舗デザインのお手伝いをさせていただいた際、植樹の取り組みにとても共感くださったご担当のみなさんと一緒に、空間づくりの一貫として植樹を体感していただきました。

また社会福祉法人進和学園のみなさんが種から作り普段植樹祭で植えている苗木を、今年1月にリニューアルオープンした「Hondaウェルカムプラザ青山」に9種類約50本を植えさせていただきました。

こういった体験を通して、自分がいる環境に目を向けるきっかけが生まれることが大切です。

だから社内の人から社外の人まで巻き込んで、都会にも森にも樹を植えて、それぞれに必要なエネルギーを作る手助けになるよう呼びかけていく。そうしてつながりができたみなさんと一緒に持続可能な社会を作っていくため、わたしたちにできる取り組みを小さなことからでも増やしていきたいと思います。

その一歩としての植樹。
ぜひこの機会に一度みなさんにも考えていただけたら嬉しいです。


この記事を書いた人は

児玉絵実(こだま えみ)
plants coordinate division マネージャー

花店や造園、観葉植物、生産、出版と
あらゆる角度から植物に携わる。
一児のママで趣味は登山。
実はコーヒーにも強いこだわりあり。