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植物と共生するニューノーマル。アップサイクルな「地球を掘削しない土」開発秘話

人も、植物も、環境も、すべてが心地よく感じる空間デザインを目指し、設計やデザイン、プロデュース等を手掛けさせていただいているparkERs(パーカーズ)。4年ほど前から、植物を室内に植える際に使う「土」の開発プロジェクトに取り組み始めました。

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約4年の歳月をかけ、グッドデザイン賞受賞へ

そして今年、2020年度のグッドデザイン賞を受賞!なぜ新しい土を開発することになったのか、どんな土なのか、この記事で詳しく紹介していきます。

空間づくりを行なう中で抱いた違和感

「青山フラワーマーケット」を姉妹ブランドに持つ、空間デザインブランド「parkERs(パーカーズ)」は、「日常に公園のここちよさを。」というブランドコンセプトのもと人の感覚を刺激する独自の空間デザインを展開しています。

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parkERs office @南青山 Indoor Park エリア

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parkERs office @南青山 Forest Park エリア

わたしたちは植物屋さんでも、土づくりの会社でもありません。訪れる人誰もが心地よい時間を過ごし、笑顔で帰っていく「公園」のような空間を、都心を中心にもっと広げていきたいという思いで、7年前から空間デザイン事業を行なっているチームです。

羽田・成田国際空港のラウンジ空間や、スターバックスの表参道ヒルズ店でデザインコラボをさせていただくなど、少しずつですが活動の幅を広げてきました。(ホームページのWORKS

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公園の要素や風景を室内に取り込むために、植物を植え空間づくりをする中で感じたこと。それが、人が心地よく過ごすために、山の土を切り崩し室内に運搬して植物を植えるということへの“違和感”でした。

「地球に負荷をかけることなく、植物のある心地よい空間をつくるサイクルを生み出せないだろうか?」

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実は、一般的に販売されている植物育成用の培養土は、山の土であることがほとんど。
山の土を削って、室内で人が心地よく過ごすために植物を植える…このサイクルを断ち切り、人が排出したものから植物が育つ土を開発することも可能なのでは?という発想から、環境に負担をかけない土の開発がスタートしました。

園芸資材製造卸大手の株式会社プロトリーフ 開発部にご協力いただき、植物を丈夫に長く楽しむための、持続可能な素材配合を研究。2016年に第一弾が完成しました。

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parkERs soil
(パーカーズソイル)
-地球を掘削しない土-

容量:14リットル/1袋、重さ:約1.5〜1.7kg/1袋
第一弾が2016年に完成し、2019年に改良を加えさらに進化したオリジナルの土

「parkERs soil」がなぜ地球に負荷をかけないのか、特徴と一緒にご紹介していきます。

①原材料は廃棄されゆく素材たち

土は土でも、何が特別かというと、実は原材料がすべて「廃棄されていく素材」でできているんです。

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・ココヤシピート(ココナッツ果実の殻を砕いたもの)
・コーヒーの豆かす
・ハスクチップ(ヤシの外皮)
・竹炭

山の土は一切用いず、使い道がなく捨てられていく資源を原料に、菌根菌などを混ぜて作られている点がまず一つ目のポイント!

②軽くて衛生的

また一般的な土の約6分の1の重さなので、ご高齢の方や子供でも扱いやすいのも特徴です。空間づくりの施工現場や植物のメンテナンスでは土を運ぶことも日常茶飯事なため、女性スタッフが多いわたしたちならではの実用的な発想が活かされています。

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さらに山の土を含まない「parkERs soil」は、虫やその卵を含んでいる可能性が低く、室内でも虫の発生がしにくいので衛生面でも安心です。

③日本の森林も守る!

2019年のリニューアルでは、700度の低温で焼いた千葉県産の竹炭を新たに配合。多孔質な竹炭が微生物の住処を作り浄化作用を促すため、植物の育成環境を良好にしてくれる効果もあります。

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「parkERs soil」を使って植え込んでいる植物たち
parkERs office @南青山

また国内の森林には、人が放置した竹林が原因で周囲の植生を破壊してしまう被害が出ているのをご存知でしょうか?この問題に対し、竹を放置せず土の原材料として有効活用することで植生破壊を抑えることにもつながります。

つまり「parkERs soil」で植物を植えれば植えるほど、普段自然が身近にない都市生活者も豊かになり、さらに日本の森や里山が元気になるという仕組みも構築することに成功しました。

また竹を炭化する際に空気中のCO2を固定する効果があるため、温暖化対策の効果も確認できました!


グッドデザイン賞受賞までの道のり

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2020年度のグッドデザイン賞では一次審査(web審査)を通過すると、愛知県国際展示場で行なわれる二次審査に出展し、現物を評価するといった流れでした。わたしたちも土を持参して現場へ! 

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トランクケースいっぱいに土・土・土...。
異様な光景です。飛行機で怪しまれることなく搭乗でき何よりでした。

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当日はこの白いテープで仕切られた一区画を使って二次審査に挑みました。

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あらかじめ大体の配置は決めていましたが、実際の現場は初見のため、実物を配置しながらレイアウトを決めていきます。

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「parkERs soil」のブース

ブース内に「parkERs soil」を盛り、土が飛ばないよう水で十分に湿らせ、parkERs soilの袋から植物が顔を出し元気に育っているような演出に。
土の原材料もカップでディスプレイし、現物を見て触れられるような、体感できるブースにしました。


ますます広がるサスティナブルな取り組み

今回の受賞に際して評価いただいたポイントとしては、まず植物を取り入れた空間デザインを展開している企業が、環境に対する問題意識を持ち新しい土づくりを始めたということ。

そして山を堀り起こす一般的な土づくりとは異なり、廃棄されているものを原材料にし、室内で安心して使用できるオリジナル培養土の開発を行なった点から、「関係者の想いが伝わってくる」との評価をいただきました。

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「parkERs soil」開発担当者
parkERs クリエイティブ室 プランツコーディネートチーム 
児玉絵実(こだま えみ)

開発を始めた当時は、今ほど「サスティナブル」という言葉が通じにくく、室内緑化と言えば「癒し」や「エコ」といったワードが連想されやすい中、小さくても良いから自分たちでサイクルを生み室内緑化を実現できないかを模索する中で昨年ついに完成した「parkERs soil」。

児玉:「『parkERs soil』は何よりも植物がよく育ちます!
保水力も高く、通気性もよい、さらに水やりも簡単なので、気軽に植物を楽しんでもらえると嬉しいです。
都市に植物をたくさん育てていたら、気づくと森も元気になっている。そんな未来であってほしいと思います。」


世界中で地球を守るための様々な取り組みが行なわれている中、今後はますますSDGsや地球の未来を見据えた動きが加速していくはずです。わたしたちも植物が根を張る「土の中」からデザインしたこの取り組みをはじめ、植物のある心地よい時間とサスティナブルな空間を室内外に広めていけるよう努めていきたいと思います。


この記事を書いた人は
parkERs マネジメント室
ブランドコミュニケーションチーム
森み

二次審査の出張では電車を間違えるハプニングが。
飛行機に乗る時は国内線でも2時間前に
空港着にしようと心に決めた弾丸出張でした。
(よき思い出)