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issue 47 「神保町で最も歪な古本屋『ボヘミアンズ・ギルド』」 by ivy

私の本棚は歪だ。

『バサラブックス』の100均コーナーでジャケ買いした文庫本、知り合いのZINE、密かに集めた雑誌、インテリアの如くこれ見よがしに置かれた写真集やアートブック …。

ひとの本棚を見るのが一番面白い、なんて常々私は言っているけれど、私の本棚こそ自分自身を見透かされそうで怖い。ガタガタで、そのガタガタ具合に趣味や偏愛が詰まっている。

さて、そんな歪な本棚にある本の半分くらいは、神保町で手に入れたものだ。なんといっても家から歩いて15分。日本で一番本が多い街なんだから、暇つぶしにはもってこい。特にすることがない休みは、神保町へ行って、小銭をあまり役に立たなそうな本へ替えて帰るんだ。

休館した神保町三省堂ビルの横、路地にしては少し広い「すずらん通り」。そこにある『ボヘミアンズ・ギルド』なるお店が一番のお気に入り。

何がいいって、その歪さ。神保町は古本屋でも特定の出版社に強かったり、専門書に強かったり、なんだか整然としている。心理学の本屋にエロ本はないし、音楽専門店にプロレス雑誌はない。

そんな中、『ボヘミアンズ・ギルド』は絶妙に毛色が違う。

たとえば、入口の300円本コーナーには、だいたい『STUDIO VOICE』のバックナンバーとか、かなり前に日本で個展をした海外作家目録とか、写真集が並ぶ。中に入ればアートの本を中心に揃えていて、なんだかシュッとした雰囲気だ。

ところが … よくよく見たら、これがかなりクセのあるチョイスなの。300円コーナーには『映画で学ぶネイティブ英語』的なシリーズの『トレインスポッティング』編だけある。随分クセの強い発音になりそう。アート本だって結構色んな解釈のアートが混在している。

誤解を恐れずにいえば、ちょっとアートを捻くれて解釈したような、カルチャーとアートの擦り切れた吊橋を片足で渡るような、そんな感覚。

アート教育を受けたことはないし、語れるほど詳しくはないけれど、この本屋であれば高確率で好きな作家、作品に出会える。

ちょっぴり入りづらいけれど、いざ踏み入れたら懐が広くて、実に奥が深い。まるで近所に面白いおじさんを見つけて、その人の本棚を見ているような気分だ。

読書の秋、そろそろやってくる。相棒を探しに、パークから秋の散歩へ出かけてみては?


イラスト:あんずひつじ

ivy(アイビー)
会社員で物書き、サブカルクソメガネ。
自己満 ZINE 製作や某 WEB メディアでのライターとしても活動。創り手と語り手、受け手の壁をなくし、ご近所付き合いのように交流するイベント「NEIGHBORS」主催。日々出会ったヒト・モノ・コトが持つ意味やその物語を勝手に紐解いて、タラタラと書いています。日常の中の非日常、私にとっての非常識が常識の世界、そんな出会いが溢れる毎日に、乾杯ッ!
https://www.instagram.com/ivy.bayside


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