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Tiny chat for "mood" #02 by killdisco

6月5日(水)から PARK GALLERY さんで個展を開催させていただきますイラストレーターの killdisco です。この連載では自分の好きなものや影響を受けたものを紹介しながらするっと個展のことについて考えていることなどをお話していきたいなと思っています。


前回は展示のテーマについてさらっとお話したので今回はまず「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」という作品の話から始めていきますね。ロイヤルエントリー


青春ブタシリーズは不安定な精神状態から引き起こされる「思春期症候群」という思春期特有の感情から生まれる不思議な現象を主軸にしながら繊細な感情表現と小気味のいい会話が魅力的で大林宣彦尾道三部作の匂いもするとてもいい作品なので未見の方は公式が youtube にアップしている総集編だけでも見てみて欲しいなと思います。その最初のエピソードではヒロインの麻衣が学校や社会の中で空気のような存在になりたいと願ったことで他者から認識されないようになってしまうという思春期症候群を発症してしまいます。これは自己と他者(世界)の関わり方の話で他者からの認識によって自分が存在することを定義するという話はディルタイの「自己もまた、このような他者もしくは世界なしには決して存在せず、これらからの抵抗を受けながら存在する」というものであったり釈迦縁起の話などにも繋がります。このことは今回の展示のテーマにも繋がっているのでもう少しその話を続けますね。

自分と世界というと急にぐっと広くなりすぎているように感じてしまうかもしれませんが自分の周りにあるものというか自分を構成するもの、普段暮らしている中で触れるものや自分の好きなものなど自分を取り巻くあらゆるものと考えてもらえればいいかなと思います。自分が触れたものや見たもの、聞いたこと、食べたものなどや周りにいる友人や他者との間で生まれる摩擦によって自分が定義されていくというようなイメージです。線で囲むとその中と外が生まれるとか張子のようなものを想像してもらうと分かりやすいかもしれないですね。その定義された自分というのは周りにある自分を構成する様々な要素によって常に更新され続けていてそこに広がりや可能性を感じています。

例えば新しい街に引っ越しをしたときに最初は不動産屋さんから教えてもらった駅から家までのルートを辿っていってそこから一本外れた路地のお店というのは認識していないから自分の中には存在していないけれどたまたま路地を曲がってそこにあるお店を見つけたときからそこにお店があるということが自分の中に上書きをされて街が立体的に見えてくることがあると思います。

いつもとは違う路地を歩いてみるというのは誰かと会話をして自分の知らない話を聞くこと、同じものを見ていても解釈の違いを感じること、好きなバンドの special thanx に掲載されている知らないバンドを聞いてみることなどなど様々なタイミングで起こります。このテキストの中に貼ってある文中リンクもそうです。

自分の話に戻しますが自分の好きな物は何かなと考えたときに音楽も好きだしアニメやイラストや漫画、民芸品スケートゲームも文学も洋服も … といろいろなものがそれぞれ好きなのですがそれを紐付けて誰かと会話をしていくことが好きなんだなということを改めて認識しました。その空気感を感じてもらえたらと思い今回の展示では作品のテイストを絞らずにラフなドローイングに近いものを多く展示する予定です。

ここで今回の展示作品の小ネタをひとつ。今回の作品は一部をのぞいて紙を一度コピー機にかけてノイズを乗せています。これは作品の中でモチーフとして描かれているもののまわりにあるけれど見ているこちらの中には今はまだ存在していないものを表現しています。

前回自分を構成するものを星だと考えてその星をどう組み合わせるかで星座を作っていくという話をしたかと思います。その話と同じ話に繋がっていってしまいますが今回の展示では自分が自分として存在するということ、その自分というものはどういうものなのかということを完全に定義することは難しいけれど好きなものや影響をうけたもの、友人との会話などの様々な星を集めた星空を一緒に見上げながら今の気分がどういうものなのかであったりそこから繋がっているいまは見えていない星を見つけたりできたらと思っています。

6月5日(水)から展示が始まります。いままで集めた星を見ながら一緒にいろいろなお話ができたら嬉しいです。では、また書きますね。

ー killdosco


⦅ 今回の曲紹介 ⦆

6月5日(水)より PARK GALLERY で、killdisco 個展『mood』が開催されます。

killdisco(キルディスコ)
デザイン会社勤務、アパレルブランドのインハウスデザイナーなどを経て 現在は書籍の装画や挿絵、パッケージやリーフレットなどを中心にイラストレーター/グラフィックデザイナーとして活動中。 物の形にフォーカスした作品や、それぞれの境界を曖昧に混ぜ合わせるような作品を制作しています。
https://killdisco.work
https://twitter.com/killdisco_0708
https://instagram.com/killdisco

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