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エキシビジョンレポート 箕輪麻紀子さん「HOMESICK」 👉 unpis × 大津萌乃さん「DANCE」 by 加藤淳也

こんばんは。加藤です。

畑をやっていたり、出張なども多いせいかアクティブな性格に思われるけれども実際はそうではない。家が好きだし誘われないと滅多に家から出ない。そういえばずいぶん昔から「来て、来て」とばかり言ってる気がする。自分から出かけるのは旅行くらいで、なぜかと言っても明確にはわからないけれど、知らない街の知らない景色が見れるのが好き、知らない街の知らないお店でごはんを食べるのが好き(お酒が飲めたらもっといい)、知らない街で出会った誰かと話すのが好き。

だからでかける時は、できるだけ億劫に思わないように小さな旅だと思うようにしてる。一度行ったことあるところも、なるべく違う道を通るようにしたり、行った先でなるべくその街の中華やお蕎麦を食べる。ギャラリーに行く時も、ライブハウスやクラブに行く時も、洋服を買いに行く時も。それが思い出になる。要するにケチなのだ。貧乏性なの。ただ行って帰るようなことは性格的にできないのだ。小旅行だから時間をかける。時間がかかるから行けない。出不精になる。ああ…。

渋谷で缶ビールを買って、車窓を眺めながらまず一杯。移動さえも旅に。この日は SUNNY BOY BOOKS で開催中の箕輪麻紀子さんの展示『HOMESICK』を見るためにイラストレーターのなかおみちおくんと学芸大学駅前で待ち合わせた。店に行く前にまず飲もうよと街をぶらぶらし、気になったラーメン屋に入る。ただの移動だけど、こんな店があったんだとか、こんなところに道があるんだとか、看板の文字を気にしたり、すれ違う人を気にかけてみたり。何気ない行為の中にも気づきが多い。派手な風景はいらない。こういうのも小さな旅の醍醐味。ラーメンは頼まず青島ビールと水餃子、蒸し鶏、麻婆豆腐。もしここで酔い潰れて、SUNNY BOY BOOKS にたどり着けなくても構わない、と、そういう風に考えないといけない。

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SUNNY BOY BOOKS はギャラリーではなく本屋さん。なのに毎回すてきな展示をやってる。ネームバリューに頼らないキュレーションのセンスで言ったら業界屈指だと思う(本のセレクトももちろん)。ちょうどいいサイズのちょうどいい空気。

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箕輪さんの絵はなかおくんに紹介してもらってからというものずっと好きで、イラストレーターとしての印象が強いけれど、『Cyan』『ESCAPE』『HOMESICK』といったコンテンポラリーなコンセプトやモチーフの立て方はもはやポップアートの領域だと思ってる。だから原画で見られる機会ということもあって見逃したくなかった。繊細な色使いはきっと SNS やウェブで見てるだけでは伝わらないでしょうし、僕らが小さな旅に出る理由としてじゅうぶんだった(久しぶりにフユキくんにも会えたし)。

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ずっと見たかった淡いピンクがやはりとってもよかった。頭の中でこのピンクを作れと言われても、まったく思い浮かばない。もっと濃くなるかもっと明るくなる。ちょっとほろ酔いで見たのもよかった。ZINE 買うの忘れた。

伺ったのは最終日でした。会期はすでに終了。次は見逃さないようにね。

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その後、ヒカリエへ。unpis さんと大津萌乃さんの2人展『DANCE』(これは11月22日まで)。2人の脳内のテンションがそのまま表現されているであろう作品が見ていて楽しい。もっと見たいなと思った。特にはじめて見させてもらった大津萌乃さんの世界の作り方に驚いた。古きよきアジアのオリエンタルでトラッドな美しさをどうしたらあんな風にファッショナブルに今っぽく表現できるんだろう。シンプルでエッジの効いた unpis さんとの比較がまた心地よかった。

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比較と言えば、山積みになった本に囲まれた SUNNY BOY BOOKS での展示に対してこちらはホワイトキューブだ。久しぶりにホワイトキューブの展示空間に入ってみて思ったけど、ホワイトキューブで作品を見るというのはやはりハードルの高さを感じる。ちょっと前はアートはホワイトキューブで見るもの、という常識があったけれど、最近のアートはもっとプリミティブかつドラスティックでパーソナルであれ、という風潮があるなと感じるので、SUNNY BOY BOOKS のようなパーソナリティを提供する空間に軍配があがる気がする。SNS に慣れすぎて、カオスな空間じゃないと集中できないのではないかとさえ思う。ただ、作家の2人が在廊して交流しているし、ふたり楽しそうにしてるので、ホワイトキューブのネガは払拭されていたと思う。改めて展示する場所って大事。芳名帳がパークにそっくりだったのが気になった。

もっと見たい、もっともっと見せて、と思わせてくれるのが unpis のすごいところだと思う。今後の作品のコンセプトがすごく気になる。

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渋谷からそのままパークへ。銀座線でいっぽん。座っていれば着くからいいね、と改めて思う。帰るとやっぱり家が落ち着くねなんて言いたくなる。ちょっとした旅の気持ちになれたのは、ほろ酔いのせいか。アートのおかげか。

みなさんもぜひ「ギャラリーに行く!」と意気込まずに、そのまわりにあるおいしいとかたのしいを探して、旅するようにギャラリーに遊びに行ってみてください。きっといろいろな街に、いろいろな個性があると思いますので。

手前味噌ですが、パークは特に、です。

では、また近々、旅するように出かけたいと思います。

PARK GALLERY
加藤淳也

unpis × 大津萌乃 2人展
『DANCE』
会期:2020年11月16日(月)- 11月22日(日)
場所:渋谷ヒカリエ8階 Creative Lounge MOV aiiima 2
https://www.instagram.com/creative_lounge_mov/
時間:13:00-20:00
※ 22日は11:00〜15:00まで。

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