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【 ZINE REVIEW 】 COLLECTIVE エントリー (52) ぽつねんとして、 『2019ふたりごと』(東京都武蔵野市)

COLLECTIVE ついに残すは5日に。寂しいな。いつも、いつの展示も、終わり際は寂しい。朝、こうしてレビューを書くのもいったん終わりになる。会場にいるひとみんなで焼肉食べに行ったり、みんなでフジロックの映像を見たり、クラフトコーラを作って飲んだり、楽しい週末だったな。夏休みって感じ。これがきっかけで知り合った人、仲良くなった人と、また何かパークで企画できたらうれしい。年末には、自分が2020年で作ったものの中の『ベストだ!』と言える作品を募集して展示する『THE BEST』という企画展もあります。今年のベスト ZINE でも、ZINE を作るにおさまらないひとなど、ぜひチェックしてみてください。ちなみにすでに COLLECTIVE 参加者との企画展も開催予定です。情報、お楽しみに。

今年の COLLECTIVE は絵も文章も、写真も、とてもクオリティが高い。デザインもとても勉強になる。けれど、少し物足りなく感じるのは製本・仕様かなと思う。ZINE ってもっと自由勝手気ままでいいと思う。紙だって世の中にはいろいろあるし、版型だっていろいろあるから。そういえば去年、一昨年はレトロ印刷(https://jam-p.com/insatsu/jam/)で作られた ZINE が多かった。お、この ZINE おもしろいな、と思うと、巻末に『レトロ印刷』の文字が記載されている。いろいろな印刷の手法や紙の取り扱いがあるので、個性豊かな ZINE 作りが可能です(リンク先に飛んでもらうと『レトロ印刷』でできること、が書かれているので気になったひとはチェックしてみてください)。

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ふらりと立ち寄った場所で拾ったものがたり

今日紹介する ZINE『2019ふたりごと』も表紙をパッと見ただけで印刷に凝っていることがわかる。手に取れば、そのこだわり、遊び心、創作意欲が伝わってくる。イラスト、彫刻、陶芸など幅広い分野で活動する鈴木恵里さんと、主に言葉のインスタレーションなどで表現活動をする松山由佳さんによるユニット『ぽつねんとして、』によるこの作品も、表紙はレトロ印刷によるもの。何層にも分かれて刷られ、『手ざわり』を感じさせてくれる。絶妙なかすれ具合、インクのバリエーションなど、やはりネット印刷などではなかなか再現できない作りになってる。しかもただ奇をてらいたくてやってるわけではなく、ちゃんと、『ふたりだけの世界』であるということ、ふたりの生生しいくらいの意思が伝わってくるよう。見つめ合うかのような2人を表現した絵もすばらしい。レトロ印刷は表紙だけということだけれど、中で使用している紙も、1話ごとに変えていて、ページをめくるたびにドキドキする。クリエイティビティを感じることができる1冊は、これだけでも買いです。

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『2019ふたりごと』は 2019年に noteで連載していたイラストと絵を改めて ZINE 用にまとめたもの。2020年6月に発行。2人の日常の中の『気づき』がユーモラスに時にシュールに描かれています。見えている景色がまったくちがう2人でも、似ている部分が見えてきたり、共感し会えたり、その違いを楽しんだり。男女問わず、共感できる部分が結構多いと思います。井の頭公園の感じとか、ぼくも体験したことあるなって思ったり。視点が鋭いし、表現が溢れてるから共感しやすいんだろうなと思う。かく(描く・書く)ことが好きなんだなというのがすごく伝わってくる。note では今でもたくさんの(それこそ溢れんばかりの)バックナンバーを読むことができるので、気になった人はそちらもぜひ。

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ちなみに、『ぽつねんとする』は立派な日本語で『ひとりでさみしそうにしている様』、ひとりぼっちみたいな意味。けれど、2人でいれば、怖いものはないというようにも聞こえてきます。ふたりぼっちってあったかい。それと絵と言葉の相性がとてもいい。


レビュー by 加藤 淳也(PARK GALLERY)


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作家名:ぽつねんとして、(東京都武蔵野市)
それぞれが美術作家として活動する鈴木恵里(イラスト)と松山由佳(テキスト)によるユニット「ぽつねんとして、」。
noteで連載している《ふたりごと》の2019年分と書き下ろしを掲載。異なる質感と色合いの紙に、一話ごとに異なるデザインで印刷。
《ふたりごと》は、”ふらりと立ち寄った場所で拾ったものがたり”をイラストとテキストというふたつの視点で描いています。
https://note.com/potsunen0315
【 街のオススメ 】
古本屋「百年」・ギャラリー「一日」 ... 若手の展示に刺激をもらえる 。
http://www.100hyakunen.com
【 同じ地域で活動するひと 】
萩谷 至史 / 劇作家、演出家
https://cacapo.jp/author/author11


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