憶えた振り #01 | 写真家・三輪卓護
#01
自分の中の写真を見てもらう『個展』は、今回が初めて。
今回の写真展は、東北の町に暮らす祖父の姿が一つ大きなテーマになった。
少しずつ淡くなっていく姿を、写真につかまえておいて。
僕は安心したかったんだと思う。
写真を仕事にしてからもう少しで5年目になる。仕事で撮る写真も好き。でも最初にカメラを持った10歳の僕が撮りたかったものは何だったのか、或いは10歳の頃の僕に撮れた写真を今でも撮れるのか、確かめる必要があった。
実家の窓から、赤城山の向こう側に沈む夕日を何枚も撮った。近所の幼馴染と遊んでいた日の様子を、何枚も撮った。そこに居る自分がそうするように、真っ直ぐに見つめたり、ちょっと引いたところから、フィルムに焼き付けた。
自分がそんな日を過ごした事を憶えておきたかった。僕は安心したかったんだと思う。
僕が育った家にはもう他の人が住んでいるけど、僕はいつでもそこに戻っていい。あの窓から見る夕焼けは、僕がいつか見る走馬灯の最初の方で、暖かく僕を迎えてくれるだろう。
三輪卓護
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