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【 完結 】 COLLECTIVE 2022 レビュー

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COLLECTIVE 2022 に全国から集まった ZINE を PARK GALLERY 加藤が1つ1つ向き合いレビューしていきます。まだ触れたことのないパーソナルな ZINE…
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#イラスト

COLLECTIVE レビュー #60 TARP『TARP vol.3』(東京都)

COLLECTIVE レビューも最後です。全タイトルをひとりでレビューするというのも最初で最後。大変だったけど、参加者のみなさんのお礼のメッセージを通じて、今回のレビューが新たな創作のモチベーションになったり、自信をなくして塞いでいた気分を明るく照らしたりしたのだと知って、僕自身もうれしくなりました。やってよかった。おそらく、60タイトルのレビューを全部読むと、ZINE に限らず、創作をする上で大切にしなければいけないことっていうのがなんとなく見えてくると思います。その ZI

COLLECTIVE レビュー #54 YUKI KODAIRA『TuTuJi』(埼玉県)

もうとっくに終わらせているはずのレビューだが、ここでは書けないくらいいろいろなことが起こって、結局この3連休まで引きずってしまった。この連休で COLLECTIVE は終わる。長かったような短かったような。5年が終わる。   特に順番は決めずに、目の前に積まれた ZINE のレビューを書き続けている。ふと思い立ったように下から取る時もあれば、パラパラとめくってピンとこなくて置いてそのまま忘れてしまうこともある(待たせてしまったひとはごめんなさい)。早くアップされたからいい Z

COLLECTIVE レビュー #53 dayoung cho 『ㅂㅗㅁ,ㅇㅕㄹㅡㅁ,ㄱㅏㅇㅡㄹ ,ㄱㅕㅇㅜㄹ』(東京都)

20年サイクルで生み出されると言われるファッションの流行の波。確かに少し前まで20代の子たちのあいだで、GAP や POLO を代表する90年代のミドルスクール的なストリートファッションが流行していたように思う。コロナ禍になるとそういったフィジカルなファッションの子が減り、わりとシックでタイトなモードとルーズな古着をミックスさせたようなカッティングエッジなファッションが目立つようになる。音楽活動をはじめた2000年のはじめころ、そういう仲間がたくさんいたように思う。   振り

COLLECTIVE レビュー #50 ヒラヤマメグミ『Blue shadow,Green flower and Girls portrait 』(神奈川県)

ずっと映画が好きで、映画を毎日のように何本も観ていた時があった。映画好きだった母の影響も大きかったと思う。物心ついた時にはビデオテープがなぜかたくさんあって、タイトルも内容もわからないまま映画を見ながら育った。スクリーンがあるわけでもないけれど、小さなボロボロのテレビで、それはやっていた。東京に来る時の夢も「映画監督になる」だったし、いまでも本数は減ったけれど、映画を観ている時はあの頃と同じくらい夢中だ。   そんなぼくが絵や写真などの作品を見る時に大切にしているのが「映画的

COLLECTIVE レビュー #49 奈良都民『奈良都民のおえかき』(東京都)

歴史の先生が生理的に嫌いで、歴史の授業があまり好きじゃなかったという理由で歴史があまり好きではない。そんな僕が NHK の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に、熱中している。源頼朝が、鎌倉に幕府を立ち上げるその前後を描いたいわゆる鎌倉時代の話。できるだけ史実に基づき、人気脚本家で演出家の三谷幸喜が脚本を手がけている作品だ。   毎週日曜日を楽しみに、本作を追っていると、自然と鎌倉時代についての知識が身につき、詳しくなっている。学生時代に解けなかった問題が、今なら解ける気がした。歴史

COLLECTIVE レビュー #47 グーシック花里咲『INHERITANCE』(東京都)

友人が以前「ZINEって買うって決めた時がピークだよね」って言っていて、なんかやけに納得したことがある。   買う時がピークというのは、悪くいえば「帰ってからはあまり見返すことはない」ということでもある。ただ、書店やうちみたいなギャラリーや雑貨屋で瞬間的に「感動した」「激しく共感した」、または「ピンときた」りするのだろう。それはレジに持っていってお金を払う瞬間ではなく、「買おう」と「決めた」時がピークだ。   そういうぼくも、あとでゆっくり読もうというふうに買うことはあるけれ

COLLECTIVE レビュー #42 諸星朋子 『彼女のはなし』(東京都)

イラストレーターの ZINE が今回本当に多い。自分の作品や作風、世界観を発信するのに、本当に便利な媒体として普及しているのだと改めて感じる。どこかに ZINE を作るレシピでもあるんじゃないかと思うくらい、どの作品もクオリティが一定数で高く、世界観がしっかりとしているから驚く。何冊も向き合ってきて、イラスト ZINE に感じていることをまとめると、   ・ZINE というメディアが持つ「軽さ」に御用心 ・本当にA5版でいいの?としっかり自問自答 ・作りながらワクワクドキドキ

COLLECTIVE レビュー #41 笹川路子 『Michko Sasagawa illustration 01 The Moments』(東京都)

PARK GALLERY はもともと「写真」に関わる仕事をしていたディレクターの加藤(ぼく)がはじめたお店なので、自然に写真の展示が増えていくのかなと思ったけれど、いつの間にか、7:3、いや、8:2くらいでイラストレーターのパーセンテージが高くなった。特にジャンルを絞って「えい!」と展示をやってるわけではないから、「いいものはいい」と言ってるうちに自然とそうなったのだと思う。ただ、自分が感覚的に「好き」な作品ばかり見ていると、視野が狭くなってしまうから、時々、COLLECTI

COLLECTIVE レビュー #40 koji 『DO.DO.DO. doodle note 2』(東京都)

イラストレーターが ZINE という媒体を使って自身の作品のプロモーションに使ったり、展示やグループ展でグッズとして販売するケースが、ここ数年で一気に増えた。オンデマンド印刷が進化して、より簡単で安くなったこともあるし、原画を売ることは難しいけれど、ZINE ならという考えで活動の費用の足しにするということもある。ただ、正直にいうと、出来すぎたカタログみたいな ZINE も増えていると思う。だから COLLECTIVE を通じて、作り方のアイデアを手に入れたり、少し工夫するよ

COLLECTIVE レビュー #38 くしだみさき 『コクーンの島』(東京都)

子どもの頃、将来の夢は漫画家で、休み時間のすべてを漫画の制作にあててた時期があった。いわゆる無地のノート「自由帳」は本当に自由な気がしたし、漫画に必要なスクリーントーンや G ペンの存在をうっすら気づきはじめていた年齢ではあったけれど、えんぴつ1つと、読者(クラスの同級生たち)を胸に、とにかくページを埋めてった。クラスで人気の女子の気を引きたいという思いもあったと思う。あの時の漫画に対する熱量は相当だった。   「スラリンの冒険」   というタイトルで、スライム状の液体が旅を

COLLECTIVE レビュー #25 CHIHAYURI『23-24』(東京都)

ZINE のジャンルの1つに、「ガール・ジン」がある。女性学やジェンダー研究を進めるアメリカのフェミニストのアリスン・ピープマイヤーが 「ガール・ジン 『フェミニズムする』少女たちの参加型メディア」という本にもまとめているが、長い歴史と確かな実績を持つジャンルだ。ちなみに訳は野中モモさん。ZINE を語る上で欠かせない存在だ。   ここでかんたんに「ガール・ジン」を定義することは難しいけれど、女性の社会進出において自身の立場の向上(という言い方が正しいかはわからないけれど)の

COLLECTIVE レビュー #19 ぽつねんとして、『ともこ』(愛知県)

ZINE を作るプロフェッショナルといってもいいと思う。   2020年から3年連続で参加してくれている鈴木恵里(イラスト)と松山由佳(テキスト)による ZINE ユニット「ぽつねんとして、」。 それぞれが美術家としても活動する2人。毎回、工夫に工夫を重ね製本された ZINE は、見る人たちを楽しませてくれる。去年、一昨年は、noteで連載している《ふたりごと》の2019年分と2020年分を掲載した ZINE でのエントリーだったが、今回は「ともこ」というなんとも不思議なタイ

COLLECTIVE レビュー #18 牧角春那『公園のあの子』(東京都)

2020年にイラストレーターとしてのキャリアをスタートさせ、2021年に自身の描き溜めた作品をまとめた初のZINEを制作し COLLECTIVE にエントリー。そして今年も参加してくれたイラストレーター牧角春那さん。2年という短い期間で、このクオリティのイラストを描けるのかと驚いてしまったが、プロフィールを見ると多摩美出身で、MJ イラストレーションズにも通い、ザ・チョイスにも入選している実力派だ。納得。   昨日レビューしたマサキヒトミさんと先週まで一緒のグループ展に出てい

COLLECTIVE レビュー #15 マサキヒトミ『HITOMI MASAKI』(東京都)

もう何年も何回も言ってきたことだけれど、COLLECTIVE をやっててよかったなと思えるのは、好きな作家さんに新たに出会えること。Instagram という大海原では出会うことがなかったかもしれない作家さんの ZINE が届いた時、本当にやっててよかったなと思える。参加者全員に対してそう思いたいけれど、ぼくの心はそんなに都合よくできていない。数人いればいいなと思う。 COLLECTIVE 2022 ZINE レビュー #15 マサキヒトミ「HITOMI MASAKI」