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COLLECTIVE レビュー #49 奈良都民『奈良都民のおえかき』(東京都)

歴史の先生が生理的に嫌いで、歴史の授業があまり好きじゃなかったという理由で歴史があまり好きではない。そんな僕が NHK の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に、熱中している。源頼朝が、鎌倉に幕府を立ち上げるその前後を描いたいわゆる鎌倉時代の話。できるだけ史実に基づき、人気脚本家で演出家の三谷幸喜が脚本を手がけている作品だ。
 
毎週日曜日を楽しみに、本作を追っていると、自然と鎌倉時代についての知識が身につき、詳しくなっている。学生時代に解けなかった問題が、今なら解ける気がした。歴史×エンターテインメント。「歴史を知る」ことが大切ならば、もっと歴史の授業はエンターテインメントである必要があった。物語的であるべきだった。先生から言わせれば「いやいやあれはドラマ⋯」という声もあるかと思うけれど。
 
COLLECTIVE ZINE REVIEW #49
奈良都民「奈良都民のおえかき」

例えば、グラフィックデザイナーの奈良都民さん。奈良をテーマに開催されたデザインコンペへの参加がきっかけで奈良のことが好きになり、奈良に通うようになった。東京を拠点にしながらも奈良に強い愛着を感じ、奈良をモチーフにした制作を精力的に行なっている。普段は奈良以外のデザインも手がける「プロ」だが、奈良の地図や東大寺の鹿の雑貨、イラストレーションと、ウェブサイトのワークス欄は「奈良」だらけ。
 
もちろんエントリーされた ZINE のテーマも昨年に引き続き「奈良」だ。 

奈良に伝わる「おんまつり」を不思議なキャラクター「ちいさいひとたち」を用いてファンタジックに描いた絵巻が印象的だった前作に続く今回のテーマは「おえかき」。奈良の史跡や古刹や祭祀へ対する、奈良都民さんなりのイメージが描かれた今作は、再び「ちいさいひとたち」が登場して、説明(パフォーマンス)してくれる。キャラクターの個性、強さ、かわいさ。グラフィックデザインの枠を超えた奈良都民さんのイラストレーション力に圧倒される。

正倉院、春日大社、采女祭り etc…。奈良という古都が生み出した、今も残る数々のエンターテインメント。ページをめくっているうちに楽しみながら奈良のことをかんたんではあるが学べるのもポイントだ。
 
学生時代、もしも奈良都民さんが作った教科書があったなら、ぼくは歴史の授業でこんなに苦しむことはなかっただろうと思う。

キャラクター含めて、「好きだ」と感じた人はぜひ奈良都民さんのウェブサイトへ。ZINE だけではなく、さまざまなアプローチで、キャラクターグッズや作品を見ることができますよ。まるで奈良の博物館のようなウェブサイト。ぜひ ZINE だけではなく彼女が描く奈良の世界観を相互的に楽しんでみてください。
 
それにしてもこのクオリティの ZINE がワンコインで買えるなんて。本当に奈良が好きで伝えたいんだなと思う。あっぱれ!

レビュー by 加藤 淳也


---- 以下 ZINE の詳細とそれぞれの街のこと ----

【 ZINE について 】
奈良で見た史跡・古刹や祭祀への私なりの印象をオリジナルキャラクター「ちいさいひとたち」に託して描きました。とんちんかん多めですが、奈良への入り口になったら面白いかな、と。

タイトル『奈良都民のおえかき』
価格:¥500(税込)
ページ数:20P
サイズ:A6

作家名:奈良都民(東京都)
奈良県限定発売商品のデザインコンペをきっかけに奈良通いを始めた東京在住のグラフィックデザイナー。偶々縁ができた町への愛着を形にして、展示に出したりネットのお店で販売したりしております。
https://naratomin.com
https://www.instagram.com/naratomin

【 街のオススメ 】
HANPA はすぬま … 風呂なし木造アパートの一室を使ったレンタルスペース。とても和める空間です。

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