COLLECTIVE レビュー #54 YUKI KODAIRA『TuTuJi』(埼玉県)
もうとっくに終わらせているはずのレビューだが、ここでは書けないくらいいろいろなことが起こって、結局この3連休まで引きずってしまった。この連休で COLLECTIVE は終わる。長かったような短かったような。5年が終わる。
特に順番は決めずに、目の前に積まれた ZINE のレビューを書き続けている。ふと思い立ったように下から取る時もあれば、パラパラとめくってピンとこなくて置いてそのまま忘れてしまうこともある(待たせてしまったひとはごめんなさい)。早くアップされたからいい ZINE とか、最後に方になったからダメとかはないです。ただただ、みんながある日、書店やギャラリーで、名前の知らない誰かの ZINE に出会うように、ぼくもこの小さな世界で、出会いを演出している。だからただの「縁」だと思っている。ただ、少しだけ終わりに向けてエモーショナルな気持ちにはなっているのは確かだ。
COLLECTIVE ZINE REVIEW #54
YUKI KODAIRA「TuTuJi」
今日紹介するのは長野の八ヶ岳から、狭山茶でおなじみの狭山に拠点を移し活動しているイラストレーターの YUKI KODAIRA さんの ZINE「TuTuJi」。鮮やかな表紙が目を引くのと、パークギャラリーのスタッフが「これが好き」と言っていた ZINE でもあるので、頭にずっと残っていたが、今日になってしまった。
おそらく、表紙に YUKI KODAIRA ILLUSTRATION とあったので、ZINE というより過去の作品集のようなものだと高を括っていたのも原因かと思う。ただ、その勘は外れた。
確かに過去の作品をまとめたアーカイブにはちがいないが、KODAIRA さんが愛してやまない「ツツジ」を、一貫したテーマ・モチーフにすることでツツジ愛をみごとにとじこめた1冊になっていた。自身の作品をこんなふうにプロモーションできるのかと、ZINE のもうひとつの側面を見た気がして感心している。
ツツジと聞いてぼくが思い浮かぶのは道端の植え込みとか団地の生垣とかの風景(パークのすぐ横にもあたりまえのようにあって、もう誰も見向きもしない)。そんな何気ない風景の美しさに気づいてしまった KODAIRA さんが、このコロナ禍で、旅行の代わりに見つけた「ツツジを巡る旅」。自然の世界のものでありながら、人間の世話によって人工的な美しさを見せる不思議な存在として、ツツジをモチーフとしてとらえ、自身の作品に落とし込んできたという。あのなんとも言えない鮮やかな「ピンク」が、さまざまな景色の中で描かれている。それは絵だけにはとどまらない。立体作品やツツジ模様のバッグ、包装紙まで、いろいろだ。それこそポートフォリオのようになってしまうような編集の仕方だけれど、とにかくツツジ一色というのが、なんだか可笑しい。
イラストレーターのポートフォリオのようなものは ZINE とは言えないのではないかという疑問を追いかけてきた2022年のレビューだけれど、最後の最後に、新しい視点を得たような気がした。
ツツジのような派手なのに少し控えめで、自由奔放に見えてしっかりと整った、不思議な魅力のある YUKI KODAIRA さんのイラストが詰まった ZINE。ぜひこの連休に、もしくはオンラインストアで、ぜひ見てみてください。
今度ツツジを見つけたら、少しだけほめてやろうと思う。
レビュー by 加藤 淳也
---- 以下 ZINE の詳細とそれぞれの街のこと ----
【 ZINE について 】
休みがあれがあちらこちらへ、ふらふらと出かけてしまう私ですが、コロナ禍になり旅行ができなくなったことで、改めて自分の住んでいる街を知る機会となりました。去年は、団地の中や、道の脇に植えられたつつじの美しさに気づき、ツツジの作品を沢山つくったものをまとめたのが、この ZINE です。ツツジが人の手でカットされ、四角く整えられた中に、みっしりとピンクや白の花を咲かせる様が、自然でありながらも人口的で、そんなところが面白いなあと思います。
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