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2−5:生産性に影響を与える要因

「企業が顧客を創造する」ために必要な生産性について読み解いていこうと思います。

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顧客の創造という目的を達するには、富を生むべき資源を活用しなければならない。資源を生産的に使用する必要がある。これが企業の管理的な機能である。この機能の経済的な側面が生産性である。

顧客の創造に必要なことは、マーケティングとイノベーションの2つです。そのために資源を生産的に使用する必要があると言っています。何を意識すればよいのでしょうか。

必要とされているものは、労働だけが唯一の生産要素であるとする生産性のコンセプトではない。

まず、生産性とはなんでしょうか。パッと思いつくのは労働ですかね。でも労働だけでは解釈が狭いです。

成果に結びつくあらゆる活動を含む生産性のコンセプトである。さらにいうなれば、そのようなコンセプトさえ、目に見える直接的なコストとして測定できるものに限定していたのでは正しいとはいえない。つまり会計学の定義に従っていたのではまちがいになる。なぜならば、目に見えるコストの形はとらなくとも、生産性に重要な影響を与える要因がいくつかあるからである。

生産性とは、成果に結びつくあらゆる活動に関係しています。それは目に見えるもの計測可能なものだけに限定されません。生産性は目に見えるもの以外の様々なものから影響を受けるからです。

では、生産性に影響を与えるものはどんなものがあるのでしょうか。
ドラッカー先生はその要因を6つ挙げています。

①知識
知識とは正しく適用した時、もっとも生産的な資源となる。逆にまちがって適用した時、もっとも高価でありながら、まったく生産的でない資源となる。

個人単位で見ても年数を重ねるほど業務知識が身につき、仕事のスピードは向上します。会社単位で見ても一度行ったプロジェクトは次回以降のプロジェクトに流用可能です。知識は生産性を向上させるのです。

でも注意が必要です。間違った知識は思いがけない失敗につながるからです。企業が過去の成功体験に囚われるのはその例ですね。知識があるからといって奢らずに、その価値を正しく判断しないといけません。

②時間
時間はもっとも消えやすい資源である。人や機械をフルに使ったときと、半分しか使わなかったときでは生産性に大きな差が生ずる。

時間がもっとも消えやすいというのは、イメージがつきやすいと思います。何も行動しなければ時間はただ消費されていくだけです。時間を有効に使える人とそうでない人では1日にこなす業務量は異なります。機械も上手く工程を組むことができれば生産能力は格段に向上するものです。

③製品の組み合わせ(プロダクト・ミックス)
製品の組み合わせとは資源の組み合わせでもある。

車は「数多くの部品」と「労働者の労働力」を組み合わせて出来ます。モノと人という異なる資源を組み合わせることで製品は生まれます。ここの生産性は生み出す数量に影響します。

④プロセスの組み合わせ(プロセス・ミックス)
部品を買うのと自分でつくるのといずれが生産的か。組み立てを内製するのと外製するのといずれが生産的か。販売を流通業に任せ彼らのブランドを使わせるのと、自らの販売網を使い自らのブランドを使うのといずれが生産的か。

全ての部品を0から作っている会社はほとんど存在しません。開発から販売まで一貫して行うユニクロでさえ生地作りに参加すれど、実際に製造するのは生地会社です。多くのブランドがZOZOでオンライン販売するのは、ZOZOを使う方がより多くの人の目に留まり、より生産的だからです。

ただし、ドラッカー先生は内製と外製のどちらが良いとは言っていません。外製によって時間を確保しているかもしれませんが、内製によって得られたかもしれないノウハウを失っているとも言えます。外部に委託するか、自社で完結させるか、プロダクト・ミックスは一長一短あることを考えないといけません。

⑤自らの強み
いかなるマネジメントといえども万能ではない。収益が見込める事業すべてに進出すべきであるとはかぎらない。いかなるマネジメントにも能力と限界がある。したがって、それぞれの企業とそのマネジメントに特有の能力を活用し、特有の限界をわきまえることも、生産性を左右する。

今まで、生地の染色業をしていた企業が流通業に手を出しても成功は難しいでしょう。それなら生地の染色で培ったノウハウを生かして自社のオリジナルの服を作るのが良いかもしれません。顧客ニーズが見込める事業に投資をすることはもちろん大事ですが、それ以上に自分の強みを正しく活かすことが生産性向上には欠かせないんです。

⑥組織構造の適切さ、および活動間のバランス
組織構造が不適切なために、マネジメントが自らなすべきことを行わなければ、マネジメントという企業にとってももっとも稀少な資源が浪費されることになる。トップマネジメントが、マーケティングに関心をよせるべきであるにもかかわらず、技術にしか関心を示さなけれれば、生産性は低下する。その結果被る損失は、単位時間当たりの生産量手の低下による損失をはるかに上回る。

そもそもマネジメントが機能しなければ、生産性は大幅に低下してしまいます。仮に、企業のマネジメントを取り仕切る社長が顧客の欲求を考えようとせずに、自社の技術ばかり追い求めていては生産性は低下してしまいます。

自己満足な製品やサービスを提供するだけの企業は淘汰されてしまいます。ある料理人は顧客の食べたいものではなく、自分が良いと思う料理を追求しました。結果、材料費が高くつき、料理の工数が増え、店には人が来なくなりました。マネジメントを疎かにした結果、その料理店は廃業になりました。

適切にマネジメント運営を行うことは、企業の生産性向上、および企業の存続のために必要不可欠なのです。

これらは全て、労働、資本、原材料など、会計学や経済学のいう生産性要因に追加すべき要因である。いずれも重要である。

生産性=労働だけではなく、より幅広い分野に及ぶことが分かっていただけますと幸いです。これらはそれぞれが極めて重要です。もしあなたが勤める会社の生産性に疑問を覚えたら、上記6項目のどれかが欠けているかもしれません。

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様々なビジネス書にも生産性の向上については書かれています。しかしその多くは、個人や工場の生産性向上を目的に書いたものが多いです。でも、ドラッカー先生が生産性を重要視する理由は、顧客を創造することために必要だからです。忘れてはならないのは、生産性の目的は顧客の創造ということです。

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