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子育ての「中庸」:とある子育て本の個人的レビュー

2019年秋に出産し新米ママになった私。

社会科学系研究職の性だろうか。

なんであれ、学ぶ時はまず本を手に取る。

気付けば、いわゆる「育児本」と称される類の本を15冊近くは読んだ(離乳食や授乳に特化した本も含める)。

そのなかで、印象に残っている本が2,3冊あるけれど、直近で読了した本が予想以上に響いたので記録しておこうと思う。

正直言うと、そんなに期待していなかった。むしろ、タイトルだけ見るとこれは私の苦手な部類の本かもしれないとすら思ったくらい。なぜかって「頭のいい子に育てるために必要なこと」というサブタイトルに幾分引っかかりを覚えたから。

じゃあなぜ読み始めたのかと言われそうだけれど、好奇心を育てることに関心があると公言したからには、それを中心に据えている本を読まないわけにはいくまい、と図書館の棚から手に取った。普段なら、中身を少しはチェックして借りるのだけれど、息子と一緒にいるとそう悠長にしてもいられない。タイトルから感じた違和感も一緒に自宅へ持ち帰ることとなった。

冒頭のとおり、この違和感は読了してすっかり吹き飛んだ。

この本を読み終えて、本の中には一言も出てこないけれど思い浮かんだ言葉がある。

「中庸」

私は、「何事も偏りすぎないことが大事」、換言すれば「バランスが重要」という意味と理解している。

まさに、この本の論点もそこにある。

160ページから成る本なんだから、もちろん様々なことが書いてあるけれど、詰まるところ私が受け取ったメッセージは

「バランスの良い刺激が、豊かな人間性と奥の深い能力を開発することになります。... 最適な場所は、いうまでもなく毎日生活している場所です。赤ちゃんが寝て、起きて、泣いて、笑って元気に活躍している我が家や、いつもの公園や散歩道が能力を育てる最高の舞台です(P128)」

という部分に集約されている。

加えて、著者のいう能力や頭の良さとは、偏差値で測れるような知能とイコールではない。知的能力を伸ばすこと以上に、感情や意思の働きを十分に発達させることの重要性を説いている。つまり、ここ数年教育界で注目が集まっている「非認知能力」の重要性とも言える(ここら辺については「頭の良い子に育てたい?」という投稿で私の考えをまとめているので、ご笑覧いただければ幸いです)。

更に、著者は年齢に不相応な知的刺激についての弊害にも言及している。例えば、経験を伴わない言葉だけの知識が脳に大量にインプットされている状態では、単なる形式的な知識にすぎず深い理解には繋がらない。そしてその形式的な知識が豊富なことと、豊かな人間性の発達は別物であるということ。早すぎる「お勉強」には注意が必要という警鐘を鳴らす例がいくつか挙がっている。

全体をとおして、「特別なことは必要がないんだよ」、「しっかり我が子を観察して、日常のなかでしっかり子どもと向き合っていたらそれで十分なんだよ」、と著者の熱意のこもった温かなメッセージが随所から感じ取れる。

これから初めて出産する友人へプレゼントしたくなるような、そんな本だった(高齢出産の部類に入る私の周辺ではもうあまりいないんだけど...!)



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