パラスポ!

障害者スポーツの情報発信をしている一般社団法人パラスポの公式noteです。このページに掲載されている写真、記事は、パラスポで活動しているライターやカメラマンが取材・撮影したものです。無断での使用、複写、転載などはご遠慮ください。

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    最近の記事

    拡げようKUNDE JUDO「組んで柔道」

    全日本視覚障害者柔道連盟が普及振興に取り組んでいる「KUNDE JUDO(組んで柔道)」のルール説明とデモンストレーションが、第38回全日本視覚障害者柔道大会(5月21日、講道館)で行われた。 パラスポーツにおいて、柔道は視覚障害者の競技と位置付けられ、1988年のソウルパラリンピックからパラリンピックの正式競技となった。 視覚障害者柔道は、対戦する選手同士が互いに組んでから試合を開始し、選手同士が離れてしまったら審判の「待て」が掛かる点などが特徴。試合の会場や柔道の技など

      • 【パラ陸上】注目の視覚障害T13クラス、川上、福永、世界で表彰台狙う

        パラ陸上の視覚障害男子T13 クラスで注目を集めている選手がいる。川上秀太(アスピカ)、福永凌太(中京大クラブ)の2選手で、この数年で100m、400m、走り幅跳びの従来の日本記録を塗り替える記録を出し、頭角を現わした。川上、福永はこのほど、今年7月にフランス・パリで開催されるパラ陸上の世界選手権の日本代表選手に選ばれた。 パラ陸上では、視覚障害の選手は障害の程度に応じて3つのクラスに分けられ、各クラスごとに競技を行う。クラスはアルファベット1文字(T=トラック種目、F=フ

        • 【パラ陸上】世界選手権へ向け、意欲

          第2回オール陸上競技記録会(3月26日、駒沢会場)が開催された。朝から雨が降り続き、肌寒い気温の中、今年7月にフランス・パリで開催予定のパラ陸上世界選手権や、2024年パリ・パラリンピックでの活躍を目指す選手たちが出場。冬季練習の成果や、自身の調子を確認した。 21年夏の東京パラリンピック日本代表の石田駆(男子T46、トヨタ自動車、写真左)は、100mに出場。記録は11秒36だった。「寒さで万全に走れる状態にできなかった点が悔しいところ」としながらも、まだシーズン序盤のため

          • 【東京マラソン2023】異次元の走りに「どこまで」

            東京マラソン2023・車いす男子のレースの見どころを挙げるなら、「誰が優勝するか」ではないだろう。 競技用車いす(レーサー)の故障や体調不良など余程のトラブルが起こらない限り、優勝は、マルセル・フグ(スイス、37歳)でほぼ間違いない。スピードは他の選手と各段の差があり、持久力も十分にある。複数の選手と一緒に走っていても、他の選手を引き離したいと思えば、いつでもそれを実現できるに違いない。瞬発的にスピードを上げて集団から前に飛び出し、あっと言う間に後続との差を広げてしまう。そん

            静寂から解き放つ、決勝ゴール

             ブラインドサッカー(5人制サッカー)の特徴を挙げる時、観客席に求められる「静寂」を忘れてはならない。  11人制のサッカー、例えばJリーグやFIFAワールドカップの試合を見る時、観客席には音が溢れている。応援している選手がドリブルで相手陣地に切り込んでいけば、「ウォー」という歓声が地鳴りのように響いて聞こえてくる。サポーターたちが太鼓や笛を鳴らすようなこともあるだろう。新型コロナウイルス(COVID-19)対策のため、静かに応援することを求められていた期間はあったが、今後は

            パリに向けた熱き戦い 視覚障がい者柔道 東京国際オープン

            東京・文京区にある講道館の建物の7階。エレベーターの扉が開くと、左手の大道場から熱気が流れ込んできた。柔道着を身に着けた選手の両肩を、スーツ姿のコーチらしき男性がもみほぐしながら、何か声をかけているのが見える。試合開始までまだ30分ほど時間があるため、緊張をほぐそうとしているようだ。エレベーターを降りてすぐ靴を脱ぎ、道場に入ると、畳に載せた足裏を通じて自分の身体が軽く弾み始めた。ウォーニングアップのため、私の身体の倍以上はありそうな体格の男性選手が一人、軽くジャンプしており、

            ◆強さ際立つ「銀色の弾丸」  ◆大分国際車いすマラソン

             1週間前の天気予報に出ていた傘のイラストが、一昨日には雲に変わっていた。天気は回復する方向にあり、明日は雨に見舞われずに済みそうだ。 車いすマラソンの好記録が生まれる条件の一つは、雨や風などがない気象条件に恵まれることだろう。雨で路面が濡れると車輪が転がりにくくなり、陸上競技用の車いす(レーサー)のスピードは上がりにくい。その分、漕ぐ力が必要になり、選手は体力を消耗する。向かい風や横からの風が強い場合も、それに抵抗するように走らなくてはならず、その分、余計に力が要る。 大

            【全日本視覚障害者柔道大会】国際ルール変更受け、体重別4階級で実施。有力選手集まる階級も

             視覚障害者柔道の国際ルールは今年1月、大きな変更があった。これまで競技の実施に当たり視覚障害の程度によるクラス分けがなかったが、J1(全盲)とJ2(弱視)の2つのクラスに分けられることになった。また、体重別の階級も従来の男子7階級、女子6階級から、男女ともに4階級に統合された。アジアパラ競技大会やパラリンピックなど今後開催される国際大会は、この新たなルールのもとで実施される。  9月11日に開催された第37回全日本視覚障害柔道大会は、この新たな国際ルールのうち、体重別4階

            【NAGASEカップ】女子400mで保田が世界新記録

            第1回NAGASEカップ パラ陸上競技大会(7月3日、東京・駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場)の女子T63クラス400mで、保田明日美(所属:みえのパラ)が1分21秒50の世界新記録を出した。 T63は片脚大腿義足を装着して競技をするクラス。このクラスの400mは、2024年にフランスで開催予定のパリ・パラリンピックの実施種目になっていない。パラリンピック実施種目となっている100mにエントリーする選手は多いが、400mにエントリーする選手は珍しい。 世界パラ陸上

            【今読みたい!パラスポーツ関連本】世界を手で見る、耳で見る 目で見ない族からのメッセージ」

            「世界を手で見る、耳で見る 目で見ない族からのメッセージ」(堀越喜晴・著) パラアスリートに限った話ではないが、「子どもを見ていると、親の様子が透けて見える」という感じがすることがある。 子どもの言葉や態度を見ていると、その子がどんな関係性の中で育てられているのか、なんとなくわかる気がするのだ。実際に、お父さん、お母さんと知り合いになると、「透けてみえた」ものがより濃く見えてくることが多い。子育てをしたことのない私が言うのは、とてもオカシイのだが、「一人の人間を育てる・育

            【東京マラソン2021】車いす男子はマルセルが独走で優勝

            (記事:河原レイカ、写真©東京マラソン財団) 東京マラソン2021(3月6日)の車いす男子は、マルセル・フグ(スイス、36歳)が1時間22分16で優勝した。2位に鈴木朋樹(トヨタ自動車、27歳)1時間29分12、3位に西田宗城(バカラパシフィック、37歳)1時間29分55が入った。 東京マラソンは、東京都庁前をスタートし、新宿から東へ、靖国通り、外堀通りを飯田橋、神保町方面へ進む。コースの特徴は、まず、スタートから序盤5キロの下りだ。 競技用の車いす(レーサー)は、選手た

            2021年東京のゼッケン 連載第5回(最終回)

             最後尾の選手がゴールラインを通過した。選手は漕ぐ動作を止めたが、レーサーは余力でゆるゆると前に進んでいく。肩で息をした選手の背中は少しずつ遠くなっていった。  フォトグラファー用の撮影エリアで、私は構えていたカメラを降ろした。誰もいない観客席を、改めてぐるりと見渡した。地鳴りがするような大歓声は聞こえてこない。場内の空気を波立たせるような拍手もない。  私は撮影エリアを後にした。メディア控室のある地下へ向かうため、2階の観客席に移動して、そこからエレベーターに乗った。同乗

            2021年東京のゼッケン 連載第4回

             ひと月ほど前、最寄り駅から歩いて帰宅する途中、小さな書店のガラス窓に、「No」から始まる3つの言葉が掲示されているのが目に入った。 「No Olympic」 「No Paralympic」 「No Pandemic」  東京オリンピック・パラリンピック開催に反対する意思を表明した貼り紙だった。新型コロナウイルスの感染爆発(Pandemic)に対する「No」は、オリンピック・パラリンピックを中止することで「感染を止めてほしい」「抑制してほしい」ということだろうと思った。  

            2021年東京のゼッケン 連載第3回

             時刻は12時40分過ぎ。  車いす男子(T54クラス)1500m予選2組に出場する選手10人がスタートラインに並び始めた。一番外側のレーンから順番に出場選手が英語で紹介されている。スタートの予定時刻まで残り時間が少ないのか、アナウンスの声の速度がやや駆け足気味で、選手の氏名を立て続けに読みあげた。映像用のカメラがアナウンスのすぐ後ろを追いかけるように、選手一人ひとりの姿を捉えていく。カメラが捉えたものは、競技場の大型モニターにも映し出された。  日本代表の鈴木朋樹が出場を

            2021年東京のゼッケン 連載第2回

             2021年8月30日。  空は灰色の雲に覆われている。肌を焦がすような暑さはないが、気温は朝から30度を超えていた。  東京・千駄ヶ谷にある国立競技場。私は、メディア用の控室で、大会事務局からフォトグラファー用として事前に配布された褐色のベストをTシャツの上に羽織った。ベストの右胸と背中には4桁の番号が記されており、それを身に着けている個人を特定できる。競技場内では、このベストを身に着けていることが写真撮影用のエリアへ入るための許可証替わりになっていた。  私が初めてパラ

            2021年東京のゼッケン 連載第1回

             車いす陸上選手の鈴木朋樹がInstagram(インスタグラム)に投稿した写真には、本人の姿は写っていない。陸上競技用の車いすの一部分、ゼッケンを付けた座席付近が背後からクローズアップで捉えられている。ゼッケンそのものは国内外で開催される他の陸上競技大会で目にするものと、大きさや形、材質にも違いはないように見える。ただ、そのゼッケンには、選手の名前の下に「TOKYO2020」という小さな文字と、パラリンピックのシンボルマークであるスリーアギトスが描かれていた。  新型コロナウ