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「ある」エビデンス、「ない」エビデンス

運用開始された携帯電波5Gの電波によりコロナウィルスが活性化し蔓延した、と物理学者の先生が一般向けに講演したことについて、本ブログでお伝えしました。
 
 
この記事を書く際、私は何をしたのか?
 
 
当然、彼が主張するメカニズム、すなわちでコロナウイルスの「ヒゲ」がテレビアンテナの要領で5G電波に共鳴してそのエネルギーを吸収し、その結果ウイルスが活性化する、という事実が本当にあるかどうかを検証したわけです。
 
 
で、調査した結果と物理学の知識を踏まえ、そのようなメカニズムは存在しないという結論に至りました。
 
 
現代物理学の知識では、5G電波がウイルスのヒゲに共鳴してこれに吸収されるということはあり得ないことが示されたのですね。
 
 
これはA(=5G電波が共鳴してウイルスを活性化する)という事実を否定する根拠を手にした、ということです。
 
 
この時は、Aを否定する事実が科学的に明らかになったので、ブログを書きました。

積極的否定、消極的否定

 しかし、次のような場合も考えられます。
 
 
つまり、Aを否定する情報が得られたのではなく、Aを肯定する情報を探したんだけども、見つけることができなかった、と。
 
 
Aを否定する情報が明らかになることと、Aを肯定する情報が見つけられないこと、この両者の違い、分かります?
 
 
前者の方がよりAを否定する根拠が強い。
 
 
後者の、Aを肯定する情報が見つけられない場合というのは、単に情報収集能力の欠落という可能性も考えられます。
 
 
Aを否定する根拠としては、前者は積極的、後者は消極的、ということになります。 

イラク戦争に対する米政府の「言い訳」

2003年、アメリカはイラクが大量破壊兵器を所有していると疑いをかけ、イラクへの侵攻を開始しました。
 
 
しかし大規模戦闘の終結が宣言された後に行われた調査で、大義名分だった大量破壊兵器はイラクのどこにも見つかりませんでした。
 
 
このことについて米国政府は内外の批判にさらされたのですが、その際国防長官ラムズフェルドは”Absence of evidence is not evidence of absence.” と言いました。
 
 
「証拠がないことは、ないことの証拠ではない」、つまり、大量破壊兵器があったという証拠がないからと言って、それがなかったと証明されるわけではない」、と。
 
 
たいへん言い訳がましく聞こえます。
 
 
しかし、あくまで一般論としてですが、この論法自体は誤りではありません。
 
 
ある事実Aが正しいことを示すエビデンスがないことは、Aが間違いであることを示すわけではない。
 
 
そのAが間違いであることを示すエビデンスもないのであれば、Aを受け入れる余地が残ります。

グレーゾーンで人は決断を迫られる

 日常生活やビジネスの場でも、確たる証拠がないままうわさ話や印象論が独り歩きしているケース、多々ありますね。
 
 
エビデンスには確度においてランクがあることは、本ブログでお話ししました。
 
 
例えエビデンスがあったとしても、それをもってして100%OK、とはならない、と。
 
 
100%の確証はないが、かなり濃厚な可能性があるとか、根拠はあるにはあるが消極的であるとか、いろいろです。
 
 
「根拠は100%ではない」イコール「全くゼロ」、でもない。
 
 
これは、天気予報の降水確率を見て、何%の時に傘を持って出かけるか、と決断するのにも似ています。
 
 
人は決断しなければならないときがある。
 
 
その時に持っている情報は大抵、白黒つかない。
 
 
でも行動は「とる、とらない」の二択だったりするので、そこで複雑な考慮と判断が求められます。
 
 
情報の確からしさはゼロか100かではない。
 
 
それへの「期待度」は、ゼロと100の間のどの程度なのか、「どの程度確かなのだろう?」という見方に切り替えていく必要がある、ということですね。

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