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ワクチンは「シートベルト」

神戸大学大学院教授で感染症が専門の岩田健太郎氏はその著書「予防接種は『効く』のか?」で、特にワクチンの特性についてのそもそも論が必要、と説きます。
 
 
「ワクチンは絶対的な存在ではない。
 
 
(中略)白黒はっきりしない煮え切らない存在なのです。
 
 
例えば、インフルエンザワクチンを摂取してもインフルエンザになってしまう人はいますし、ワクチンを打たなくてもかからない人はいます。
 
 
しかしたくさんの人を集めて数えてみると、やはりワクチンを打った人の方が打たない人に比べずっとインフルエンザにかかりにくいのです。」
 
 
氏はワクチンをシートベルトのようなものと説きます。
 
 
シートベルトをしていても交通事故で亡くなる人はいるが、そのことをもって「シートベルトは不要」と断じてはいけない。
 
 
「俺は今までワクチンなんか打ったことないけど、インフルエンザになったことなんかないよ。だから大丈夫だよ」というのは、「オレは今までシートベルトもせずに運転してきたけど一度も事故に遭ってない。だからシートベルトなんていらない」というのと全く同じ論理構造をしている、と。
 
 
ワクチンもそうですが、疑似科学とホンモノ科学の境界が明確に白黒つけられない、という事例をこのメルマガでも見てきました。
 
 
そこに付け込むのがまさに疑似科学の骨頂なわけで、年々いろんな顔をした疑似科学が「新規参入」してくるのは、やはりうま味(=儲け)が大きいんでしょうね。
 
 
マズローの五つの欲求でも第一段階、第二段階、第三段階を形成する「健康」や「お金」、「所属願望」を狙い撃ちするようなアイテムが、科学の魔力を纏って次から次へと出てきます。
 
 
 
 
運転中シートベルトをしなくても、おそらくは無事でいることの方が確率は高いでしょう。
 
 
しかし、「個人の体験は未来の何ものも保証しないのですが、僕らはしばしば過去の体験を未来への担保にしてしまいます」(岩田氏)。
 
 
通販の体験談は、被験者1名の検証実験を複数行い、操作されたフィルタを通ったものだけを表示したもの。
 
 
統計的に意味のあるものでもなく、当然ながらエビデンスとはなりません。
 
 
煮え切らない、すっきりしない、一意的に解決策のない悩ましい状態、そのような問題を「煮え切らない問題」として丸ごとそのまま受け止め、そして落としどころを探しに行くのが、成熟した議論。
 
 
対して、物事の一面だけ位にしか価値を見出さず、都合の悪い側面を無視する「子供っぽい」人を岩田は「ファンダメンタリスト(原理主義者)」と呼び、戒めます。
 
自ら多面的に情報を集めに行く、「成熟した大人」になりたいものです。

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