見出し画像

谷沢について考えた話

最近、スラムダンクにハマっている。スラムダンクの登場人物のなかでも、谷沢について色々考えた。

本名、谷沢龍二、彼は2mを超える巨体ながら、スピードもあり将来を嘱望された大学バスケット界きっての新人であった。そんな谷沢は、大学バスケット界の名将であり、当時「白髪鬼」として恐れられていた、安西光義の下でプレーをすることとなる。安西は、彼に期待をしており、彼が、高校時代には自身の能力頼みのプレーをしがちで、基礎を疎かにしていたことを見抜いていた。そのため、才能を開花させるために徹底した基礎練を彼に課した。

しかし、谷沢にその意図は伝わっておらず、彼は安西のそのような指導方針に対して不満を募らせていく。そして、ある日、谷沢は突然安西の下から姿を消し、かねてからの憧れであったアメリカへ渡った。彼は、自分には能力があり、もっとのびのびプレーできる場所でこそ、自分の良さが最大限に出せると考えていたのであった。

谷沢が、アメリカへ去って以降、安西は元気をなくし、谷沢のことを常に気にしていた。だが、谷沢の消息は全くつかめていなかった。そんな中、一本のビデオテープが届く。それは、谷沢が出場した試合のビデオであった。安西は、その試合での谷沢のプレーをみて、彼が全く成長しておらず、チームメイトとのコミュニケーションもうまくいっていないことを見抜く。そして、彼を日本に戻そうとするも、またも連絡はとれず、五年後に新聞で谷沢の死を知ることとなった。

谷沢の死後、彼の母親から、出せずにいたであろう手紙を安西は手渡される。そこには、アメリカでの苦悩が書かれており、手紙は「バスケットの国アメリカの、その空気を吸うだけで僕は高く跳べると思っていたのかなあ」という言葉で締められていた。谷沢の死後、安西はバスケットに対してまっすぐに向き合えなくなり、かつてのような覇気も失われていった。

谷沢は、大学バスケット界きっての期待の新人であった。そのため、プライドも高く、自分が自分のことを一番わかっていると考えていたのであろう。だが、谷沢は、自分が思っているほど自分のことをわかっていなかった。今までの結果から逆算して彼は自分には能力があるから、今更基礎練など必要ないという考えに至ったのであろう。だが、安西は、それを見抜いていた。そして、ダイヤの原石である谷沢が正真正銘のダイヤになるためには基礎練が必要だと考えたのである。しかし、自身をすでにダイヤだと考えていた谷沢には、それは受け入れられなかった。その結果、彼は、現実から目を背けるようにアメリカ留学という道を選ぶ。

この谷沢の話は、二つの大切なことを教えてくれる。ひとつは、基礎こそがなによりも重要であるということ。もうひとつは、空気を吸うだけでは高く跳べないということである。まず、基礎が大切であるということは、説明する必要もないであろう。スポーツ、音楽、学問どれにおいても基礎が重要である。意外性というものも、結局は基礎がしっかりしていなければただの誤魔化しで終わってしまう。

次に、空気を吸うだけでは高く跳べないということである。全員が全員ではないが、なかには良い学校に入っている、有名人と知り合い、高いブランド物を身に着けているということで満足し、自分がすごくなったように感じる人がいる。そして、自分もその一人であった。高校時代の成績の割には、良い大学に入れて、それで満足してしまい大学院試験で大失敗をした。良い大学に入れたことによって、自分がすごくなったと勘違いして、そこで胡坐をかいてしまったのだ。

しかし、結局どんなにすごいものとつながっていようと何かをするのは自分である。その場に胡坐をかいてしまっては、自分自身は全く成長せず、自分のしたいことをしようとしたときに現実を突きつけられる。そして、そこから逃げる。こう自分に言い聞かせる。「たまたまだ。自分はすごいんだから大丈夫」。結局、それの繰り返しになり、何も成長せずに時間だけが過ぎていくのである。慢心は、害でしかない。そして、それが慢心であると気づくことはとても難しい。だから、谷沢の話を戒めとして、基礎を大切にし、慢心せず、これからを生きていきたい。

P.S. 谷沢が天国で基礎練をしていることを願って。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?