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ストア・コンパリゾンのすすめ

こんにちは、(株)ワシントン靴店 商品部長の北川純子です。わたしの得意技のひとつに、「諜報(ちょうほう)活動」があります。詳しくは企業秘密ですが、ライバル会社のふところに入り込み、周りを固めて有益な情報を言わざるを得ない状況を作り出して、情報を引き出し、その小さい手がかりから、徹底的に調査して、知りたい情報の全貌を獲得します。意外と刑事とか、CIAとかも、向いているかもしれません。
しかし、そんな高度な技を出さなくても、誰でも他社の情報を知る方法があります。

ストア・コンパリゾン(他店の見学・調査)とは

小売業の面白いところは、他社の戦略や経営の重点が、店舗に行けば分かってしまうことです(知識と訓練は必要ですが)。店舗へ行けば「ライバル会社の社員」や「調査員」ではなく、「お客様」に変身できますから、心おきなく、観察できます。他の業種だと、なかなかライバル会社や注目企業の内部は見られません。

アメリカのチェーンストアで、最も重視される技術のひとつが、「ストア・コンパリゾン」です。他店と自店とをそれぞれ見学し、調査して、経営戦略上の狙いを分析し、我が社はどのような経営課題を重点として設定すべきかを判断します。なので、悪いところや、アラを探して、自店の方がマシだ、自店の方が素晴らしと、安心するためではありません。相手企業の「長所」を発見し、その長所を抽象化または翻訳して、我が社で活用するために行います。前提として、長所かどうか気づくためには、基本原則を知っておく必要があります。

1962年に創業して、わずか28年後の1990年に世界最大の小売業となった「ウォルマート」の創業者、サム・ウォルトンは、
「わたしが他社のどの経営者にも、まさっていたのは、頭の良さや決断力や統率力などではない。それは毎日、他社の店を誰よりも多く視察し続けてきたことである
と言っています。1位になっても、ストア・コンパリゾンをずっと続けていたんですね。今でもずっと1位であり続けています。すごいことです。それほど、ストア・コンパリゾンは、大切な技術なのです。

陳列や商品の戦略を表面的に見るのではなく、長期的な根本対策として取り組むべき課題を発見することが狙いです。「混んでた」とか「売場が明るかった」など、印象だけで終わっては、調査の意味がありません。店作り、商品、作業システムを重点的に調査します。
商品部であれば、品種ごとに、価格ごとの陳列数を調べて、商品構成グラフを作成し、競合他社の価格戦略を調査したり、ゾーニングやレイアウトを調べて、自社と比較したりします。商品を実際に購入することもあります。商品自体はもちろん、サービスや接客方法などを知るには購入するのが一番です。

「ストア・コンパリゾン」の対象は、A級企業です。業績がよい会社(各業種のTOP3まで)や、急速にチェーン展開をしている企業のことです。今にも つぶれそうな商店を見に行っても仕方がありません。あらかじめ、調べたい企業の経営効率数値をおさえてから調査に行くと、何が得意な会社なのかが分かり、注目すべきポイントが絞れます。
また、対象の店舗は、定期的に、同じところを、観測・観察すると、効果をあげやすいです。

異業種にもヒントはたくさんありますので、A級企業であれば、どこでも勉強になります。店を見るだけで仕事になるのですから、ショッピング好きのわたしには、もってこいの業務です。食品スーパーは、ほぼ毎日いきますから、定点観測しまくりです。次いで頻度が高いのが、ドラッグストアですね。そうそう、この間はセブンイレブンの記事を書きました。全然ストア・コンパリゾンになってませんが・・・。

靴をたくさん扱っているので、アパレル、スポーツ専門店、雑貨屋さんも、もちろん見ます。

逆に、ちっともA級でない我が社でも、大手からストア・コンパリゾンされています。
以前、県外ナンバーの車3台くらいで店舗の駐車場に乗り付け、15人くらいのスーツ姿の人が一斉に店舗に入ってきて、売場のすべての扉(在庫が入っているスペース)を開けて、写真を撮りまくって帰って行ったことがありました。恐ろしい光景です。しかも、扉、開けっぱなしで去って行きました。こういう、あからさまな調査は、大変失礼ですので、気をつけたいですね。我が社に学ぶようなところがあったのかどうかは、分かりませんが、我が社とソックリの店舗を実験で作っていた会社があったので、多分、あの企業だと思います。
靴業界第1位のA社さんも、我が社をよくチェックしているようです。我が社がちょっとでも値引き販売すると、すぐにメーカーからクレームが入ります。そして、我が社の売れ筋を、必ずかぶせてきます。すごい情報網と、実行力です。さすがです。

ストア・コンパリゾンは、重要であると分かっているものの、時間があるときに、と思っていると、なかなか行けないものです。商品部の評価項目にも入れているのですが、月6件以上の目標をなかなかクリアできていません。例えば、毎週火曜日の○時、などと決めて、行動するように、キマリを変更する必要があるのかもしれません。
他社の良いところを自社にも落とし込み、よりよい店舗にしていきたいと思います。

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