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各社の総額表示にもの申す

こんにちは、(株)ワシントン靴店 商品部長の北川純子です。今回は、ちょっと怒っています。総額表示が義務化になり、5ヶ月が経ちました。各社の総額表示について、書いてみたいと思います。

総額表示になる経緯

事業者(小売店や飲食店など)は、今年、2021年4月1日から、商品の正札(しょうふだ:値段がついている札のことです)やチラシ、飲食店ならメニュー表などへの価格表示に、税込み価格(総額)を表示するように、国から義務づけられました。消費税は、2014年4月1日に5%から8%へ、2019年10月1日に8%から10%へに引き上げられました。消費税5%から2段階で10%になることは決まっていたため、そのたびに事業者が値札をいちいち付け替えなくてもいいように、との配慮から、「○○○円+税」という表記を特例として認めてくれていたのですが、その特例措置の期限が2021年の3月31日までだったのです。

2020年10月あたりから、各社、そわそわしていました。コロナ禍でもあり、消費は低迷。休業やら時短営業やら、事業者は、それどころではありません。「こんな時期だから、特例措置、延びるでしょ~」と楽観的な経営者も大勢いました。しかし、特例措置の期限が変わらず3月31日までのままだった場合、3月31日だけで、店内のすべての商品の正札を付け替えることは不可能です。わたしは、楽観的な人たちの言うことなんて信じられなかったので、ホームページで問い合わせ先を調べ、財務省に電話してみました。(ちょっと緊張しました。)
「今のところ、特例措置の延長はありません。」
やっぱり。お国が決めたことですからね。従うしかありません。法令遵守が我が社のモットーです。清く正しく、ありたいですよね。
特例措置がどうであれ、お客様にとっても、実際に支払う金額(総額)が分かった方がいいに決まっています。わたしは、すぐに準備にとりかかりました。
財務省(国税庁)のガイドラインでは、「総額」が明確に表示されていれば、「税抜き価格」の表示も併記してもよい、と書いてあります。

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ただし、併記してあっても、「税抜き価格」が目立ちすぎるのはダメです

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Q&Aコーナーも、くまなくチェックします。ふむふむ。

(Q8) 「9,800円(税込10,780円)」という表示でも総額表示を行っていることになるでしょうか。
(答)
1.総額表示の義務付けは、消費者が値札や広告などを見れば、『消費税相当額(含む地方消費税相当額。以下同じ。)を含む支払総額』を一目で分かるようにするためのものですので、ご質問のような表示方法であっても、直ちに総額表示の義務付けに反するものではありません。
2.しかしながら、ご質問のように「税抜価格」を本書きとする表示方法(「9,800円(税込10,780円)」)の場合、他の表示方法に比べて文字の大きさや色合いなどを変えることにより「税抜価格」をことさら強調し、消費者に誤認を与えたり、トラブルを招くような表示となる可能性も懸念されます。このような表示がされた場合には、総額表示の観点から問題が生じうることはもとより、そうした表示によって、『9,800円』が「税込価格」であると消費者が誤認するようなことがあれば、「不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)」の問題が生ずるおそれもあります。
3.したがって、事業者の皆様におかれましては、「支払総額を一目で分かるようにすることにより、消費者の利便を向上させる」という総額表示の趣旨を踏まえた表示方法をご検討いただきたいと考えます。

太字の部分、よーく覚えておいてください。

我が社の選択

「総額」だけを表示すると、なんだか値上げした感じになってしまいます。
悩みました。「総額」と「税抜き価格(本体価格)」を併記した正札も作ってみました。うーん、なんだか分かりにくい。小さい札に情報量が多すぎるように感じます。我が社は、思い切って、「総額」だけを表示することに決めました。靴業界は、春物が1月下旬ごろから入荷する商品が多いので、春物の新商品から「総額」だけの正札を採用。そこからは段階的に店内の既存の商品を付け替えていき、店舗の皆さんのがんばりで、3月末までに、すべての商品の正札の付け替えを完了させました!
チラシにも、「総額」と「税抜き価格」を併記していましたが、もう、やめました。価格の文字が多すぎて、本当に伝えたい商品の画像が目立たなくなってしまうからです。今は、チラシにも「総額」だけを表示しています。

各社の価格表示の現状〈各社のチラシ〉

アパレル業界トップのファーストリテイリング(ユニクロ、GU)さんは、今までの「本体価格」をそのまま「総額」にスライドするという対応で、実質9%の値下を発表。これには愕然としました。粗利益率の高い、儲かっている会社は違いますね。さすがです。
良品計画(MUJI、無印良品)さんは、1994年、消費税が3%の頃からずっと「総額表示」をしています。さすがすぎです。
わたしが尊敬しているペガサスの先輩、「ニトリ」さん、「ワークマン」さんも総額のみの表示です。

本題はここからです。各社のチラシをご覧ください。

1,税抜き(本体)価格と総額が同じ色。ただし、税抜き価格の方が大きい

同じ色

まあ、いいでしょう。(急に上から)

2,「税抜き価格」の方が大きく、さらに、「目立つ色」を使っている

赤字

スーパーの多くは、なぜか、「税込み価格」が「参考税込み価格」となっています。参考ってなんなんでしょう?本当のことを教えて欲しいものです。炊飯器の「税込み価格」、ちっさ!!
テレビは、価格を表示しておいて、「価格はご相談ください」って。いくらなのかが、知りたいのですよ!初めから売る気の価格を提示してください。
このあたりから、怒りがこみ上げてきました。

3,総額が「銭」単位

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いやいや、その単位の通貨、現代の日本では扱いがありませんよ。
一体「総額」はいくらなのでしょうか?レジの設定次第で、なんとでもなりそうなものですが、おそらく、このお店さんは、単品で購入した場合と、複数購入した場合とで、数円の誤差が出るタイプだと思われます。

4,ポイントのみの謎のチラシ

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この店舗で貯まるポイントのみが掲載されています。もう、「税抜き価格」とか「総額」とかの次元を越えて、訳がわかりません。一体、いくらなのでしょうか。

5,靴業界のリーディングカンパニー、A社さんのチラシ

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いやいやいや。各業界トップ企業さんの取り組み、ご存じでしょうか。先ほどご紹介したユニクロさんを初めとする、優良企業さんの、いさぎよさ、見習っていただきたいです。
税込み価格は、大きい価格の下にある、小さく細長い四角の中に、ものすごく小さな文字で書かれています。誰が見えるんじゃい!という大きさです。原寸大では縦3mmくらいしかありません。小さすぎて、画像がこんなにもボケてしまうくらいです。粗利益率が高くて儲かっているのに、せこいです。同じ靴業界として、トップ企業がこんなでは、恥ずかしいです。
靴業界2位、3位も、いまだに「税抜き価格」と「総額」を併記しており、相変わらず、「税抜き価格」の方が大きい場合が多いです。
「安さ」を演出したい気持ちは分かりますが、総額表示の趣旨は、「支払総額を一目で分かるようにすることにより、消費者の利便を向上させる」こと。このような表示は、お客様の誤解を招きかねません。

6,我が社のチラシ

チラシ

すっきり分かりやすい、「税込み価格」のみを掲載しております。

まとめ〈メッセージ〉

消費者庁の皆さん、公正取引委員会の皆さん、景品表示法の取り締まりを、もっと強化していただきたいです。
中小企業の我が社ですら「総額」のみの表示にしているのですから、正直者が、むくわれる世の中であってほしいと、切に願います。

そして、お客様の皆さん、チラシは、大きい価格だけでなく、「総額」をちゃんと見てくださいね!

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