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“東京国立近代美術館 所蔵作品展”が面白かったです

この記事は、「MOMATコレクション 特別編 ニッポンの名作130年」で個人的に好きだと思ったところについて語る記事です。

以上を踏まえて、気軽に読んでいただけたら幸いです。

日本の近現代美術が知れる!

1900-1960sの日本美術作品

 この展覧会では、西洋美術の流入、戦前後の思想、経済発展など様々な要因で変化してきた日本美術を、実際の作品を通して知れた。作品は生きた証であるため、時代の思想に感化されたものから、反抗したものまであり、美術だけでなく歴史や文化についても、多角的かつ体感的に知れる展示であったと思う。

1980s-2010の日本美術作品

 また、現代美術についても触れることが出来る。これは個人の見解であるが、美術の権威は、メディアの多様化によって以前より下がったと感じる。そのため、大衆は美術に関する知見が得られず、現代美術は難解だという印象を受けている人も多いのではないだろうか。実際、現代美術に関しての知識が浅い私は、今回の作品展でも何を示しているのかわからなかったものもあった。

だがしかし、わかるものとわからないものが合って良いのだとも感じた。今回の展示作品は、メッセージよりも技巧を追求したもの、特定の問題について訴えたもの、最低限の要素から想像を促すものといった様々な種類に渡っていた。

ex.)普通なら不可能であろう形をした銅の立体作品、震災復興、コンビニの写真が刷り込まれた鏡 etc...

見た人全員が、単純に見た目に感心するもの。自由に解釈できるもの。特定の問題について訴えているため、該当する人は深く刺さり、刺さらない人は全くわからないもの。様々だった。そんな作品群から、作品は多くの人に届くものばかり作らなくて良い。誰かしらに、作者が意図する範囲、深さで何か感じさせるものが芸術なのではないか、ということを感じさせられた。

古典から続き、発展する日本美術の良さ

 西洋美術が流入したことにより、西洋を真似したキュビズム的作品から古典日本美術に原点回帰したものまであった。これらの詳細については、展示内やホームページの解説が素晴らしいので書かない。個人的に好きだったものを紹介しようと思う。

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《千羽鶴》

作者:加山又造 制作年代:1970(昭和45年)/画像は左隻のみ

 展示内解説より、俵屋宗達の『鶴下絵三十六歌仙和歌巻』に影響を受けていると考えられる作品。宗達は琳派の画家であり、金が特徴的だ。琳派の金は、金という高価な色から、超常的な印象や力を描きたいときに用いられることが多いと言われている印象だ。

琳派の系譜、情感豊かに、繊細に

神秘的な雰囲気を纏い、幻想的な世界が描かれているこの作品。

大きく写実的に描かれた実在性の高い月。その周囲には、砂状になった銀が塵や霧のように煌めき、流動する曲線の塊が雲や波のように重なり合う。実に幻想的であるが、モノクロであることが、血の通っていない雰囲気を漂わせ、『千羽鶴』の行き先であり、我々が願いを届けたい先である、”死者の世界”であることを想起させる。我々と死者の世界を唯一橋渡し出来る特別な存在である鶴は、眩しい金で輝き、詳細なデティールは掴めない。

この作品の世界は、細密で、繊細に、揺らめいてる。『千羽鶴』にまつわる強く複雑な感情を暗示するかのように。光に反射することで煌めく金と銀が、余計に感情を揺さぶり、心を奪う。そんな魅力がある。

 このようなことから、琳派や日本画の魅力である金・銀を巧みに使いながら、西洋的な写実性を持って、幻想的かつ距離の近い世界を魅力的に描き出している作品であると私は感じた。

まとめ

 一つについて話したら結構な分量になってしまって、3つ位紹介するつもりだったのでガッカリしています。でもそれくらい魅力的な展示だったと伝わったら嬉しいなと思います!

 また、開催しているとはいえ、誰もが足を運べる状況ではないですが、是非実物で色んな人に見て欲しいと思う作品ばかりでした。立体作品であれば、様々な角度、影、平面作品であれば、画材の艶感、厚み、筆致といった実物ならではの情報量が充実していたからです。実物で見ることが前提で作られているものも多く、私は行ってよかったと強く感じています。

そして、何よりも解説や展示構成が面白くて、またこの美術館に行きたいと凄く感じました。作品ごとの見方のヒント(自由に見ること含め)が横のパネルには書いてあり、作者や時代の世界観を知るための補助冊子が入り口にありました。解説の情報量が多すぎることもなく、個人的にはバランスがめちゃくちゃ良かったです。

 ホームページの解説が充実しているので、もしこの展示を知らなかったという人がいれば、見てもらいたいなと思います!!

リンク

画像は全てポストカードより。

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