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読書感想 渡部千春『北欧デザインを知る ムーミンとモダニズム』に豊かさを考える


こんばんは。
今日は渡部千春『北欧デザインを知る ムーミンとモダニズム』(2006年、NHK出版)を読みました。

20年近く前に出版された本ですが、当時訪れつつあった北欧ブームは一過性に終わらず、現在も人々の暮らしに浸透し、取り入れられ続けています
人々を惹きつける北欧デザインの魅力はどこから来るのでしょうか。
北欧のライフスタイルモダニズムの歴史といった複数の切り口から、その理由に迫る一冊です。

家具、家電、テーブルウェア、雑貨、日用品、建築、玩具、そして北欧を象徴するキャラクターであるムーミン……多岐に渡るジャンルで、われわれの暮らしに馴染み深いものとなっている北欧デザイン。
巻末には「北欧デザインを知るためのデザイナーガイド」が付いており、代表的なプロダクトやデザイナーについて広く知ることができるので、興味がある人の入門書としても良い本だなと思いました。

ビジュアルが充実してるのも良い!


最終節、「本当に北欧デザインから学ぶべきこととは」では「モダニズム」の思想こそ学ばなければならないものだと筆者は述べています。
ここでいうモダニズムは、19世紀以降、既存のブルジョワのための芸術や思想を乗り越え、大衆のためのデザインが生まれていった時代を指しています。
現代の消費社会は、大量のモノが溢れ返り飽和したポストモダンの時代と言われます。資源が豊富な大国においてその傾向はより顕著と言えるでしょう。
一方で、北欧の国々はいずれも、気候が厳しく物価も高く、資源が豊かとは言えないにもかかわらず、幸福度ランキングでは上位を占めており「生活の質が高い」と言われ続けています。
資源の限られるなかで、いかにして大衆が快適で豊かな生活を享受するか?という課題意識が北欧のデザインには引き継がれ続けている、と著者は述べていました。

家具や身につけるモノのスタイルだけを真似ることはカンタンですが、豊かさとはなにか?という問いと常に向き合いながら、生活における選択をしていきたいな〜と感じます。

また、日本の民芸運動と北欧デザインの相互的な影響や親和性についても述べていて、確かに……!と思いました。
マリメッコからは北欧と和の要素が融け合ったプロダクトが多く出ていますね。

一例ですが、マリメッコTiiliskivi ティーポット。


(2019年に大阪市立東洋陶磁美術館で行われた「マリメッコ・スピリッツ」展では、マリメッコデザインの茶室も展示されました。)
木への愛着や、閑雅さを重んじる日本古来の美的感覚には、北欧の風土やデザインと通じるものがあるのでしょう。

わたしも器とか伝統工芸とか好きなのですが、そういうものをモダンな暮らしに融和する形で取り入れていきたいなあ、と思いました。たとえば北欧スタイルのダイニングに焼き物の食器とかねえ、それで自分のなかでしっくり来るものを見つけていきたい。そういう暮らしを自分のペースでやっていきたいな〜、と思うのでした。

きょうも読んでくれてありがとうございます。
それではおやすみなさい。

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