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短編連作小説『透目町の日常』まとめ

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短編連作シリーズ『透目町の日常』をまとめました。基本的には一話完結なので、気になった作品からご覧いただければ幸いです。
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短編連作シリーズ『透目町の日常』を紹介する

はじめまして、四十九院紙縞と申します。 この記事では、唐突に投稿を開始した短編連作シリーズ『透目町の日常』についての話をしていこうと思います。 通りすがりに偶然この記事を見かけたかたに興味を持っていただければ幸いです。 やんわりと世界観の話と、現時点で投稿している作品の紹介をしていきますが、この記事を読まないとこのシリーズの世界観がわからなくなるということは決してありませんので、ご安心ください。 「透目町」とは 物語の舞台となる「透目町」とは、架空の町です。 町の名前

【短編小説】友達(猫)を殺した犯人を捕まえる為に友達(人間)と協力して張り込みをする「私」の話

『はんぶんこの二乗と抱擁』  友達が二人、公園で殺された。  いや、この表現は些か正確性に欠くか。事実に即して著すのであれば、「友達の地域猫が二匹、公園で殺された」である。  私は子どもの頃から、猫と仲が良かった。  それは一般的に動物に好かれている状態というものではなく、本当の本当に、猫に特化していると言って良い。母さんが言うには、赤ちゃんの頃に公園デビューしたその日に、それはもうすごい数の地域猫が寄ってきたそうだ。  さらに、私には猫の話す言葉がわかるということもあり、猫

【短編小説】失声症だけど鳥の言葉でだけ喋れる「私」の話

『飛べない翡翠の歩きかた』   私は、人間である。  或いは。  私は、鳥である。  それは、どちらでもあり、どちらでもないという、実に中途半端な存在であるようにも聞こえるかもしれないが、しかし事実は事実だ。  一番最初の記憶は、今も鮮明に残っている。  あれは私が小学四年生の五月上旬――大型連休中のことだった。どこの家族もそうであるように、私の家も連休を利用して外出をしていた。雄大な自然の中にアスレチックがたくさんある施設で、当時都市部に住んでいた私は、その目新しさに大はし

【短編小説】夜の公園で少年と猫に出会う「私」の話

『停滞する紫煙』  子どもの頃、時計の針が止まっていれば、その時間は永遠だと思っていた。  具体的には、よく遊び場にしていた公園の時計。  何年もの間修理されなかったそれは、ずっと四時四十五分を指し示していた。私はそれを言い訳に、頻繁に門限を破って親から怒られていたのを、今でも強く覚えている。  家に帰りたくなかったわけではない。  宿題をしたくなかったわけでもない。  当時は上手く言語化できなかったが、大人になった今なら、一言で説明がつく。  小学生の私は、夕暮れどきが好き

【短編小説】「私」の弟が猫に好かれている話

『手紙』  弟は近所の野良猫たちから好かれている。  とても。非常に。すごく。  好かれている。  或いは、愛されている。  彼は特段、野良猫に餌を与えているわけではない。むしろ、それは無責任な行為だからと、頑として拒否しているくらいだ。  それでも弟は、野良猫たちから好かれている。  弟が登校する時間になると、猫たちは各々思い思いの場所から姿を現して彼を見送り。  弟が下校する時間になると、朝と同じように姿を現して彼を出迎えるのだ。  その際、猫たちは必ず弟に声をかけている