好きなことを仕事にするべき?
好きなことを仕事にする方がいいのか、それとも得意なことを仕事にするべきか。
そんな問いにぶち当たった経験を持つ人も少なくないはず。もれなく私も、就活や転職の時、なんなら現在進行形で考えていると言っても嘘ではない。
私が最初にこの問いに頭を悩ませたのは大学生の時、就活を目前に控えた3年生くらいだっただろうか。
当時の私は「好き」と「得意」の区別もあまりついていなくて、好きなことは?得意なことは?と聞かれても、明確な答えを出せないでいた。
そんなぐだぐだモヤモヤしている私を見かねてか、ある日、8歳年上の兄が鬼気迫る表情でこう言ってきた。
「好きなことだけは絶対に仕事にするな。仕事にした瞬間に嫌いになるぞ」
金髪モヒカンの超パンク野郎だった兄は、大学もろくに行かず、ライブハウスとCDショップに入り浸り、留年ギリギリで卒業したかと思うと、趣味の延長線上で出会った人のツテかなんかで、レコード会社に就職した。
徹夜、仕事、飲み会、仕事、徹夜・・・と「業界人」として怒涛のような日々を過ごし、目の下にいつもクマをつくっていた兄は、見るからに「過労の人」だった。
なので、「好きを仕事にするな」という彼の言葉にはすごく重みを感じたし、自分の中で「好きを仕事にしてもダメになる」というイメージがしっかりついてしまった。
それから「好きなこと」はとりあえず傍に追いやって、「今できること」の中から「求められていそうなこと」を選んで仕事を探していった。
その結果、私の最初のキャリアは「メディアの広告営業」だった。
本当は、記者や編集者になりたいなーとずっとぼんやり思っていた。
でもそれらは「好きなこと」だった。ジャーナリズムを専門に学んだわけじゃないし、当時流行りだったマスコミゼミみたいなものにも所属していなかったから、「できること」の中にその職業は当てはまらなかった。
だから得意“そうな”営業をすることにした。
昔から「人当たりが良い」「元気だ」「体育会だね」と言われてきて、OB訪問した先輩たちなんかから「営業できそうだね」と散々言われた。
就活生当時、営業の仕事なんかもちろんしたことがなかったけど、営業はきっと「できること」であり「周りが私に期待していること」だと思ったからその職業を選んだ。
やってみた結果、まぁまぁ楽しかった。求められ、評価されることは嬉しかった。
でも続けていると、途中で働くのが嫌になってしまった。「好きなこと」への憧れが日増しに高まっていったからだ。
やっぱり、つくり手になりたい。記事を書いたり、編集したり、誌面をつくる仕事がしたい。その気持ちを認めてしまってからは、「なんで好きでもないことをやってるんだろう」とモヤモヤが募るばかりだった。
それで2年半働いた会社をやめて、旅をしながら書くことをはじめて、巡り巡って今、書くことを中心に、イラストを描いたり、誌面をデザインしたり、写真を撮ったりと、なんとなく「つくる側」の人になっている。
じゃあ今、ハッピー?満足?と聞かれると、んーどうなんだろう。
書くことは好きだ。だけど、私よりライティングがうまい人や素敵な文章を書く人はめっちゃくちゃいるし上を見たらキリがないから、よく落ち込む。
今は個人で受ける仕事が多いから、会社で求められる仕事をしている時と比べると明確な仕事への評価が測りづらいし、過程を褒めてくれる上司もいない。(これは会社に属してたら解決するのかもしれないけど)
結局はないものねだりなんだなーと思う。
得意なことでも好きなことでも、きっとどっちを選んでもそれなりの不満や葛藤はあって、一生懸命やっていればどちらも同じくらいのやりがいや楽しさがあるんだろうなと。
今は転職も普通になったし、雇用形態や働き方も多様になった。だからあんまり悩まず、その時々で思ったことに全力でやればいいんじゃないかと思う。少なくとも10年前の自分にはそう伝えたい。
「まあどっちでも多分なんとかなるから、とりあえず思った通りにやってごらんよ」
問いの答えにはなっていないけどね。それくらいのゆるさがあっていいんだと思う。
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