縄跳び、未来、ワクワク

2月に入ってから毎日縄跳びを跳んでいる。
ネットでポチった、一応トレーニング用の縄跳びだ。

重りがついているとか、特別に縄が太いとかではない。だから“一応”と付けておく。億が一でも意識が高いと思われては困るからね。

縄跳びを飛び始めた理由は特にない。強いて言うなら、「人が1人縄跳びするのにちょうどよい庭が家にあったから」かな。

築50年を超える平屋賃貸の我が家には、畳を縦置きで６枚並べたくらいの広さの庭がある。ズボラなので手入れもほぼせず、いじりもせず、持て余して早5年。ついに使い道が見つかったのだ。

朝起きて、顔を洗って、ご飯を食べる。相方が皿洗いをしている間に私は縄跳びを跳ぶ。初日は50回でへばった。膝が痛い。なんかピキピキする。息がゼエゼエする。昔は小学校の縄跳び検定で毎年、名人の段を取っていたのに。悔しい。

翌日は120回飛んだ。次の日は155回飛んだ。その次の日は180回。何度もつっかえつつも、昨日の自分を更新していくのが楽しいし嬉しい。ささやかだけどちょっぴり誇らしくもあった。

5日経って、朝だけじゃ物足りなくなった。昼間、仕事の合間に跳ぶようになった。

朝とはまた違った太陽が目に眩しい。しゅびんしゅびんと耳元をかすめる縄。50回をすぎるとやっぱり息がゼイゼイする。つらい。顎が上がる。見上げた空が青い。鳥が飛んでいる。高いなぁ。

しゅびんしゅびんの合間にコツーンと軽石が飛んでいく。納屋に石があたると、ボブンッとすごい音がする。そのうち大家さんに怒られやしないかちょっと心配。

6日目の昼に初めて100回連続で跳べた。ゼイゼイしてる息、それさえもなんだか心地よく感じた。心臓に負荷をかけるってなんかワクワクする。頑張れ自分！今、強くなってるよ！よしよし！グッジョブ！と心の中で自分をハグする。さっきまで、ぎゅうぎゅうに詰まっていた脳みそがハラハラ〜と解けていく感じ。締め切りとか、納期とか、そういうものも一瞬どこかへ跳んでいく。たぶん3分後には戻ってくるんだけどね。

こうやって私の日常に縄跳びがすろんと入ってきた。まだ1週間だけど、これはきっと習慣になりそうだ。

縄跳びの効果はとってもすごくて、ちょっと自分でも驚いている。

まず肩こりがなくなった。前は朝9時に仕事をはじめたら午前中のうちに右の肩甲骨がしびれていたのに。首をちょっと傾けるだけでゴリゴリッと音がしたのに。そういった身体のキシミが気づいたらなくなっていた。

ついでに肌もきれいになった気がする。これは気がするだけかも。でもなんか毛穴がなくなった気がする。お腹がよく空くようになったのと、お通じもよくなった。これは運動してるから当たり前かな。

そしてあとはもう気分が違う。全然違う。集中力も上がった気がする。相変わらず捗らないこともあるけど、ダラダラしちゃう気分が前よりなくなった。集中できなくなったらとりあえず縄跳びをしてるから、ダラダラをする暇もない。

1日でトータル5分も跳んでいないのに、思った以上に縄跳びの効果がすごい。今までどんだけ運動してなかったのよって、こんなちょっとの運動で目に見えて変わっちゃうくらい運動不足だったんかって、自分にびっくりする。身体と心はやっぱりつながってるんだね。

振り返ってみると、運動ばかりしてた学生の頃はあんまり落ち込むことが少なかった。集中力も「キノコ食ったマリオ」くらいあった気がする。

小学校の頃は、放課後は毎日公園でドロケイをして、中学・高校はずっとスイミング。学校行って、泳いで、塾行って、走って、みたいな生活だった。

今よりも身体にかかる負荷は大きかったはずなのに、全然疲れなかった。もちろん年齢もあるんだろうけど、メンタルももっと健全だった気がする。今ほどクヨクヨもダラダラもしなかった。

自己肯定感の低さとか“気にしいな性格”とかは、今とほとんど変わらない。昔からメンタルは最弱。でも当時は身体を極限まで追い込んでいたから、フィジカルの強さでメンタルの弱さを補っていたのかもしれない。

やらなきゃいけない仕事をほっぽってスマホをスクロールしている自分に、「私はいつからこんな堕落した人間になっちゃったんだろう」と思うことがあった。多々あった。それでまた落ち込んだ。負のルーーーープがつらかった。

縄跳びをして気づいた。多分、私にはフィジカルへの負荷が足りていないのかもしれない。

「なんか表情も変わったよ」と相方からの意見。確かにちょっとやる気が出ない朝も縄跳びをするとパッと心が晴れるのだ。「今日も縄跳びだけは跳んだ自分えらい」と思う。それだけでデスクに向かう心持ちがちょっと違う。

経営者の多くが身体を鍛えている意味、できる人ほどジムに通う意味がなんとなくわかった。残念なことに、我らが小さな港町にはパーソナルジムもチョコザップもない。でも大丈夫。今の私には、縄跳びがある。

跳び続けたらどんな変化があるかな。
どんな未来が待っているかな。
縄跳びのおかげで未来の自分がちょっとだけ楽しみになった。