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うんちくおじさんを黙らせるワインになる

北海道は余市町に来て、一週間が経ちました。
7月いっぱいは、こっちにいる予定です。
昔から海の見える街での生活に憧れていたから、歩いて10分もしない場所にモイレ海水浴場という美しい場所があることがまだ信じられず、お休みの日毎飽きずに海辺を散歩しています。
ゴミひとつ無い綺麗なビーチ沿いにポツンと、白い外壁の小さな可愛らしいカフェがあって、そこで小説を読んだり、ワインの勉強をしています。

奥に通称、ゴリラ岩

グランピング施設で提供するアルコール類の目玉は、希少価値の高いワインとウィスキーです。
ウィスキーについては、こっちに来る前にある程度勉強してきたので、
「余市のウィスキー、まじでうまいっす!」
と、まるで生産者にでもなったかのようなテンションで言えるのですが……。
ワインについては、勤めていた東京のレストランにはワインソムリエが数人いたし、
元カレがワインに超詳しかったし、(初めてのデートで決めてくれた食事とのペアリングで惚れた)
まぁ、行ってみてからでもどうにかなるやろ、と軽く捉えていました。
他力本願というかなんというか……。
勘違い野郎の悪い癖です。
ワイン通の近くにいるだけで、自分も彼ら並みにワインに詳しくなるわけでは当然なくって。
ので、ワインの基礎知識から易しく、分かりやすく解説してくれている本を読み始めました。

テイスティングが天職かも

専門的な知識があってもなくても、美味しいものは美味しいし、不味いものは不味いです。
けれど、例えばぶどうの品種や産地、土壌の状態や収穫年によって個性は無限にあるというのも分かっちゃいても、やっぱりエキスパートから学ぶことによって説得力がぐんと増して納得しやすくなるし、
というか、何が面白いって……、
ワインの味を言語化する形容詞や表現の組み合わせ方が面白い!
過去に、美味しいんだけどこの味をどう表現すればいいのかが分からない…と困ったときの答え合わせをするみたいで楽しいです。

うんちくおじさんを黙らせたい


ワインは好きです。白も赤も、ピンクもオレンジも。
でも、それについて(聞いてないのに)知識と経験を自慢するようにべらべらと語り出すおっさんがいたんですよぉ~。(クール〇コ)
というか結構遭遇します。
バーとか、居酒屋とか、ゴルフ場とか。
私も最初は気になるものだから、どこのワインのどういうところが好きなのですか、とか聞きがちなんだけれど。
なんだろう……、途中からサンドバックにされるようなあの感じ。
フランスだか何語だか分からない(たぶん本人も微妙)カタカナ言葉ばっかり、酸味・苦味・香りまではいいけれど、エレガント・華麗・芳醇etc.
いまいちイメージのつかない、使い慣れていない形容詞がさく裂して、
その言葉、使いたいだけやん。
と思ってしまうことが多々あり、だから「ワイン通」という言葉そのものに、ある種の苦手意識を抱いていたのかも知れません。

でも、改めて一から学ぼうとすると、あながちうんちくおじさんたちは間違っていなかったのだな。ただ私が素直じゃなかったんだな、ということに気付きます。

人間と似てる


いつかどこかで聞いたことがある台詞のようで、うんちくおじさん化してしまいそうで憚られるのですが、
ワインって人と似てるよね。
ウィスキーについて勉強したときも思ったけれど、ワインに関しては余計にそう思います。

優しく甘やかして育てると、ぼんやりとしていて弱い香りのぶどうになってしまったりもするし、
土壌や風土、土地の傾斜や日当たりや微生物の量など、把握しきれない差異によって、同じぶどうの品種でも個性が出るし、収穫年によっても当然変わってくる。
若い方が個性が強くて、熟すほどにまろやかで豊かな香りになったり。
中には若いうちに美味しさのピークを迎えるのもあれば、熟せば熟すほどに旨味を増すものもある。

ルビーのような輝き

まるで舞台の裏側を見ているような、知れば知る程、新鮮な発見ばかりでした。美味しいか不味いか。好きか嫌いか。味覚って主観で決まるものだし、どれだけ知識をかき集めてもさほど意味はないと思っていた部分もあるけれど、やっぱりある程度の基礎知識があると今度は深さも感じられるようになって、楽しみ方も変わるんだと思いました。ぶどうだけじゃなくって、ぶどうの味を表現するためには他の果物の特徴を知っておく必要があるし、スパイスや、時には食べ物じゃないものまで……!(皮革、クレヨン、葉巻など)生きている中で味わうもの、経験の全てでもって表現されるワインは、だから、酸いも甘いも多くの経験を積んだ人であればある程、奥深く、また面白く感じられるんだろうな。

おいしいね、といって誰かと幸せを共有する。ワインの魅力はまさにそこにあるのだと思います。

「ワインの基礎知識」 (若生 ゆき 新星出版社)

ぐるぐるといろんな場所を通って、経験して、学んで積み上げて、それでいつか心から「おいしいね」と言えたら、今とは違う深みのある言葉になるかな。
深みのある人間になれるかな。

またごちゃごちゃ考え過ぎて、途中からもうワインの勉強ではなく、人生とはなんぞや的な学びの時間になってしまいました。



これだけは気を付けたいです。
私たぶん、たまにうんちくおじさんになってる。


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