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【論考紹介】 “ウクライナの一番長い日:予期される反攻の最初の24時間は、間違いなく決定的な時間になるだろう” (Ukraine’s Longest Day: The first 24 hours of the expected counteroffensive will likely be decisive., by Franz-Stefan Gady, Foreign Policy, 18.04.2023)

以下、上記英文論考の内容要約になります。

ウクライナの反攻が予期されているが、1944年、ノルマンディに連合軍が上陸する前、ドイツのロンメル元帥が述べたように、勝負を決めるのは最初の24時間であり、そのため、攻勢初日はウクライナ軍の“一番長い日”になるだろう。

ウクライナの反攻作戦については、時期や場所、兵力といったことがよく議論されるが、そのようなことを知り得るのはウクライナ指導部のごく一部の人間のみであって、ここ数カ月間で私たちが知り得たことは、この戦争がますます消耗戦の様相を呈してきたということである。

だから、ウクライナの“Dデイ”に何が起こったとしても、ウクライナが消耗戦から逃れることは容易ではない。たとえウクライナ軍が大兵力で、準備も装備も良好だったしても、それは容易ではない。

ウクライナが消耗戦から逃れる唯一の方法は、ロシア軍の指揮を麻痺させ、ロシア軍の下士官兵にパニックを引き起こすことだ。たとえ戦力比でウクライナが優位に立ったとしても、それだけでは十分ではない。むしろ無形の要素が、攻撃開始後24時間の成否を決定する可能性が高い。無形の要素とは、戦術的奇襲であり、戦場におけるリーダーシップであり、戦う際の士気である。

戦術的奇襲が重要なのは、それが達成できれば、局地的な火力優勢と数的優勢を確保できる機会が増すからだ。なお、ウクライナが部隊集結を隠すことはできない。部隊集結の欺瞞を行うよりも、ウクライナ軍攻撃点へのロシア軍の集結を妨げるために、ウクライナは“いつ”“どこ”で攻撃するのかを、ロシアに分からせないようにする必要がある。

そうはいっても重層的なロシア軍防衛網を突破するのは、困難な任務だ。だから、成功可能性の高いウクライナ側のアプローチは、ロシア軍守備隊が陣地から逃げ出す状況をつくり出すという方法だ。陣地が迂回され、後方連絡線の遮断と包囲の危険にさらされれば、ロシア兵はパニックに陥る。

ウクライナ軍がロシア軍陣地の弱い点を見つけ、そこに局地的かつ一時的に優勢な火力を投じてロシア軍を消耗させ、突破後、戦線後方へと進撃する。ロシア軍を組織的に麻痺させるには、このような迅速な戦略的縦深突破しかないと思われる。

また、戦術レベルでの指揮官の行動・態度も重要だ。戦場というのは、秩序立ったカオスであり、そのカオスの影響は攻撃側により強くもたらされる。そのカオスに打ち勝つ軸になるのが下級指揮官だ。

さらに戦場における指揮官の姿勢は、戦闘時の士気に直接的な影響を与える。指揮官を信頼できない兵の士気は、瞬く間に消え失せる。戦術レベルの指揮力と戦闘時の士気が高ければ、最初の24時間の先も戦術的優位を確保できる可能性はより高くなる。

上述の要素以外に、ロシア軍が予備戦力をどの程度すばやく投入できるのかという点も反攻の成否に関わる。これもまた、最初の24時間以内にロシア軍が対応できるかどうかで決まる問題だ。前線の兵士がパニックを起こし、道路上を埋め尽くして逃げ出せば、ロシア軍予備が突破口を埋めるのは難しくなる。

これまで述べた方策を実施するのは難しいことで、それゆえウクライナ攻勢の初日は“一番長い日”になるだろう。ロシア軍の麻痺に成功すれば、ウクライナ軍は戦術的な戦果をあげることができる。だが一方で、このことがウクライナの長期的な戦略的戦果にとって十分なものなのかどうか、それはまったく別の問題なのだ。

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