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【Twitterスレッド和訳】 “ウクライナ戦況考察” (@KofmanMichael氏 | 2143 JST 04.04.2023)

※以下は、ロシア軍事専門家のマイケル・コフマン氏が、日本時間2023年4月4日にツイッターに投稿したウクライナ戦況分析を、日本語に翻訳したものになります。

https://twitter.com/kofmanmichael/status/1643232900685463554?s=61&t=Hec3KraNWDg6Q9eZhM76Ow

現在の戦争の動向、ロシア軍冬季攻勢、バフムート戦、現在のこの段階が今後の数カ月間に及ぼす影響の程度、それらに関する幾つかの考察。また、以下のWOTRポッドキャストもチェックしてください。今回のテーマの一部に触れています。

ドンバスでのロシア軍攻勢は未だ終わってはいないが、作戦のペースと烈度の点で弱まりつつある。成果はほとんどなく、ロシア軍はウクライナ軍攻勢を予期して、おそらく防御態勢へと移行する準備を進めている。

ヴフレダルにおいてロシア軍は2個旅団所属する優良な部隊を、ウクライナ側の地雷原と対戦車ミサイル網へと流し込み、その後、最終的にアウジーウカに切り替えた。アウジーウカでロシア軍は、包囲環をつくりかけているが、現時点でウクライナ軍は戦況を落ち着かせている可能性がある(不透明ではあるが)。

不平不満の表明を撮った動画の多くは、アウジーウカ周辺からのもののようだ。同地区において、ロシアの各地域から動員された兵員はDNR軍団に配属されている。この兵士たちはおそらく大隊規模か中隊規模の集団で、戦場に交替要員として送り込まれ、歩兵突撃に投入されている。

他の戦場: クレミンナ〜リマン、ビロホリウカ、マリインカはつまるところシーソー・バトルという展開になっている可能性があり、これらの地域でロシア軍は優勢を得ようと苦闘している。全体的にみて、ロシア軍の質は攻勢ポテンシャルを回復するには不十分な模様で、それゆえ攻撃の大部分はVDVか海軍歩兵が担っている。

結果として、ロシア軍攻勢は予想されたの通り失敗する方向に向かっている。問題なのは、ロシア軍の消耗度合いと弾薬供給制限の程度だ。プーチンは砲弾数に限りがあり、それによって砲撃を制限せざるを得なくなったことついて、公に発言している。

以前のスレッドでの主張から私の考えは変わっていない。つまり、ゲラシモフは悪い時期での無意味な一連の攻勢によって戦力を消耗させており、その攻勢で得た戦果では、ロシアの戦略的展望は変わらないだろう。その一方で、ロシア軍はより脆弱な状態に置かれた可能性がある。

他方、ウクライナは大規模な追加戦力を構築しつつある。それぞれ6個機動旅団とその支援部隊からなる3個の軍団。現状不明なのは、これらの部隊のうちどれだけの数が、攻勢の時期までに編成と訓練を終えているかだ。

幾つかの旅団は完全に西側製装甲戦闘車両を装備することになるだろう。だが、これら新設部隊は最近動員された人員で構成され、極めて余裕のない訓練を受けている可能性もある。部隊として一体性をもって任務を遂行すること、諸兵科連合機動戦術を試みることは、難しいものになるかもしれない。

私の印象では、能力・性能面でのギャップが依然として存在する。それは突破突入用装備・戦闘工兵技能・架橋能力・支援能力であり、そして通信・暗視・ISRのような中核的装備である。

ロシア軍は頑強な防御を行うためのマンパワーと予備兵力を保持している可能性が高く、そこに地雷原と塹壕が加わる。このことがウクライナ軍によるロシア軍防衛線突破を不可能にするわけではないが、過去の攻勢が示唆しているのは、突破成功後のモメンタムの持続という問題を、ウクライナが抱えているということだ。

マンパワーについて手短に触れると、ロシア軍は未だに長期にわたるマンパワーの問題を抱えている。上層部は新たな動員を避けたいと強く思っている。動員の代わりに、この時点でロシアは、40万人の契約兵士を集めようと試みている。

全国規模の契約兵士募兵キャンペーンが行われており、それに広報とロシア各所にある移動募兵センターが伴う。招集通知は、今までと同じく情報更新の求めとして出され、それに応じた人々に契約するよう圧力をかける。

各地方にはおそらくノルマが課せられ、国営企業は募兵のための道具として使われる。この取り組みは昨年も試みられたが、その結果は芳しいものではなかった。ロシア社会の一部には戦争を支持する者や、仕方なく戦争を容認する者もいるが、大部分の人々は金銭提示があっても、参加したいとは思わない。

それゆえ、戦力の入れ替えと損失の穴埋めを行うために、モスクワは今年後半に再度、動員に頼らざるを得なくなると私は考えている。私の推測だが、新規動員があるならば、それは夏か秋だろう。ただし、戦場でどのようなことが起こるのか次第ではある。

ロシアは年2回行う徴兵を実施し始めたところで、14万7千人を招集することになるが、過去数年間と比較して相当な人数増となる。これに関する詳細は、CITの最新投稿で確認してほしい。

バフムートに戻ろう。過去数週間でロシア軍はアプローチを変え、運河の方向へとこの都市の北西で進撃し、そして3側面からバフムート市内へと進撃した。ウクライナ軍はまだ包囲されていないものの、状況は危うく、不安定な状態が続く。なお、以下地図は3月のものである。

ロシア軍がアプローチ変更をした理由は不明だ。考えられるのは、補給路遮断ができないこと、戦力消耗、側面をさらすことへの懸念、ワグネルと参謀本部の内部抗争、ウクライナ春季攻勢がみえつつあるなかで予備戦力を投入してバフムートで釘付け状態になることへの懸念、といったことだ。

バフムートにおいて、ウクライナ軍はロシア軍を消耗させ、春季攻勢を発動するまでの十分に長い期間、ロシア軍をここで釘付けにしようとした。しかし、ウクライナが今でもロシア軍より自軍にかなり好ましい戦力消耗比率を享受しているという証拠、もしくは相当数のロシア軍を釘付けにしているという証拠は、そのどちらに関しても見当たらない。

バフムート保持が軍事的意味をもつかどうかは、後日に判定を下すのが最善だ。ここで述べたことは、よくいって不完全な全体像であり、保持・撤退・反撃・春季攻勢時期の繰り上げ、そのどれも、ウクライナにとって選ぶのが容易な選択肢ではない。一方で、先月の間にワグネル部隊は、市内へとさらに進撃していった。

バフムートが問題になる理由は、それが直接的にウクライナ軍攻勢の展望を不明瞭にすることにあるのではなく、戦力の質を再度生み出すのが困難なこと(加えて、限りある弾薬)にある。ウクライナが今消耗しているものを、攻勢が終わった今年の後半の時点で、ウクライナは手に入れられない可能性があり、その結果、モメンタムを持続させるのに苦しむことになる可能性がある。

ウクライナ軍はロシア軍と比べてモチベーションが高く、適応力もより高いが、1年を超える戦闘を経て、戦力の質に関する問題が眼前に浮かび上がりつつあり、そして、一つの軍隊のなかに2つの軍事的文化が、好ましくないかたちで共存していることに起因する組織内対立も存在する。

ウクライナに無駄に戦力を使う余裕はない。なぜなら、一連の攻勢が成功したのちに続くことは、この2〜3月の消耗戦と同様のものになり得るからだ。たとえ完璧な勝利が成し遂げられるとしても、この戦争は国境を挟んだ消耗戦として続く可能性がある。

近視眼的発想の議論を乗り越えるために、ウクライナ軍攻勢のあとに続くものを考えることが重要だ。米国とEU諸国はウクライナの戦争への取り組みを持続させることができる。しかし、攻勢終了後のしばらくの期間、ロシアに対する決定的な軍事的優位性をウクライナに与えることはできないかもしれない。

結果的にみると、ウクライナは今後の期待感を決めることになる極めて重要な好機をその手に掴んでいる。ウクライナは常に期待を上回るパフォーマンスを示しており、一方でロシア軍のパフォーマンスは期待以下だった。だから私は慎重ではあるが楽観的に考えている。しかし、今後起こり得ることの不確実性には懸念している。

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