「地下室にいる悪魔」
愛用の自転車はクロスバイク。主に街乗りをエンジョイするスポーツタイプである。カラーに一目惚れをして、ただいきりたいという調子乗り根性を抑えられずに購入に至った経緯がある。自宅では盗難防止のため、玄関先の吊り下げラック格納している。かなり軽量なのでグイッと持ち上げられるほどだ。ラックに収める際は気合いを入れて、自転車を高々と持ち上げる。それと同時に我が腕の筋肉の状態の確認を怠ることはない。
ある日地下鉄に乗るために最寄駅の駐輪場に向かった。そして地上からスロープを使って地下駐輪場へと降りていく。
「最近、冷えますね。たまらんです」
「ほんまやな!めっちゃ冷えるでぇ」
管理人のおっちゃん達と他愛のない会話で、コミュニケーションをとるのがおきまりのパターン。管理人のおっちゃん達も笑顔で返答してくれるのが嬉しい。なんと微笑ましい日常であろうか。おっちゃん、いつもありがとう。
そして管理人のおっちゃんの案内に従って駐輪場スペースへと向かう。
駐輪場の下段はスライドラックを移動して、駐輪スペースを確保する。僕のクロスバイクのため上段のラックスペースになる。スライドラックを移動して、上段のラックを引き出し、自転車を乗せて上昇させるのである。
僕は下段のスライドラックを移動して駐輪スペースを確保し、上段から引き出したラックに自転車を納めて施錠していた。その時、右方向からスライドラックが、ガーっと音を立てながら勢いよくこちらに向かってきた。右側にいたサラリーマンらしき男性が自分の自転車スペースを確保しようと左右を確認もせずにスライドラックを押してきたのである。
そして施錠をしていた僕の右手に自転車が激突した。咄嗟に回避する事も出来なかった。
早朝の寒さで冷え切った僕の右手はじんじんと痛み出し、怪我はなかったが怒りが込み上げてきた。
「こいつ地下室にいる悪魔か」
「エクソシストのように聖水をかけてやりたい」
「逆さまブリッジになって迫ってやろうか」
「お前を蝋人形にしてやりたい」
腹の奥底で怒りと複雑な心境が沸々と、そしてぐらぐらと蒸気をあげていく。
「こやつの体を浮遊させて、上段の駐輪ラックに収納してやりたい」
「こやつに施錠してやろうか」
しかし僕の右手は活躍を忘れ、思いの外施錠に手間取っている。
「この手は誰のものですか」
そんな事を思っている間にサラリーマンが立ち去っていった。地下室の悪魔に復讐することは叶わなかった。
最近、自転車でなにかと事件が起こりがちなので気をつけたいと思う。
〜パンくずよりも小さな事をカタルヒト〜
★パンヲカタル 公式ホームページ★
http://panwokataru.net/
★パンヲカタルFacebookページ★
https://www.facebook.com/panwokataru/
★『パンヲカタル Twitter』★
https://twitter.com/masakazu0801
★『パンヲカタル Instagram』★
https://www.instagram.com/masakazu0801
★パンヲカタルYOUTUBEチャンネル★
https://youtube.com/@panwokataru
★『パンと本とねこ Instagram』★
https://www.instagram.com/pantohontoneko0801
★『パンと本とねこ Facebook』★
https://www.facebook.com/pantohontoneko/
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?