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愛がなんだってんだよ

「愛がなんだ。」を観た。
山田テルコが自分に思えて仕方なかった。私はもしかしたら田舎の18歳の女の子なんかじゃなくて、本当は田中守のことが好きな山田テルコなんじゃないかと思った。それくらい、山田テルコは3月までの私にそっくりだった。私は高校に入学してすぐの頃から今年の3月まで約2年間ずっと先輩のことが好きだった。きっかけは典型的な一目惚れというやつだ。最初の頃は純粋に好きだという気持ちだけで想い続けていた。でも、先輩は私のことを好きにはならなかった。それどころかうっすら嫌いだったと思う。田中守のように。それに気付きながらも気付かないフリして私は先輩を追いかけ続けた。私が高校2年生になった頃にはもう、あれは恋ではなくなっていたと思う。周りからは「依存」や「執着」という言葉が聞こえてきた。自分でもなぜそこまで先輩に拘るのか、どこが好きなのか、そもそも好きなのか分からなくなっていた。でも引っ付いていたかったのだ。その形が恋人じゃなくてもよかった。先輩の母親や兄弟や従兄弟になりたかった。ただ傍で見続ける権利が欲しかった。作中の山田テルコは自分を好きではない男のために仕事も何もかも犠牲にする馬鹿な女のように描かれているが、私には他人事だとは思えなかった。山田テルコと田中守の関係をセフレだと呼ぶ人もいるが、決してセフレの話ではないと思う。山田テルコは痛いほどに真っ直ぐに、誇りを持って田中守のことが好きなのだから。セフレという言葉で片付けていい感情ではない。
若葉竜也演じるナカハラと山田テルコの別れのシーンが印象的だ。ナカハラの言っていることも、それを綺麗事だと言うテルコの言っていることもどちらも間違っていないと思う。たぶん2人とも、自分自身さえも置き去りにして走り続け、もう自分がどこにいるのか分からなくなってしまったのだ。愛ってなんなんだろう、愛がなんだってんだよ。山田テルコにも、仲原青にも、坂本葉子にも、田中守にも、塚越すみれにもそれは分からないだろう。みんな「愛がなんだってんだよ」とぼんやりとした苛立ちと虚無感を抱えながら生きているのかもしれない。幸せになりたいっすね。

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