二周目の恋(一穂ミチ、窪美澄、桜木紫乃、島本理生、遠田潤子、波木銅、綿矢りさ著)

 そう言って絹香は笑った。もう何種類の絹香の笑顔を見たのだろうと思う。目がカメラならいいのに。今の笑顔を瞳のシャッターで私の脳裏に永遠に残しておきたかった。

 心が通じ合うという言葉は、心を相手に開き、お互いに求め合っていることを感じられたときに出てくるもので、その最たるものがこの短編集で描き出されているじゃないかすら思った。
過去の経験で醸成されてきた価値観はそれぞれ複雑で面倒くさくて、でもそれが誰かと絡み合ったときにこんなにも美しく、尊いものになるんだというのを、初めて分かった気がする。

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