花に埋もれる(彩瀬まる著)

 異性との恋愛、親子間の無償の愛、友人愛、様々な関係性の愛がこの世の中には存在している。しかし愛とは何か、どういう状態が愛し合っていると言えるのか、明確に言語化することは難しい。この本は、その愛について、言葉にして、わたしたちの心に届けてくれる。

 きっとみんな、確かだと思っていた腕からすべり落ちた経験があるのだ。だから安心して体を預けられるものが欲しくなる。言う通りになる他人、拒む手段を奪った肉体、将来の約束、不安をなだめてくれる体温を、確保しようとする。

 シライさんに近づくたび私の体内で細かに弾み、存在を訴えるものが既に生まれていた。その振動がどうしようもなく私の感情の調律を乱し、シライさんに対して極端な行動をとらせ続ける。これ以上こらえていては、私が私ではなくなってしまう。

 最近、将来のことを立ち止まって考えて、これからどのように歩いていくべきか、方向性を定めた。
ただそれを決めたが故に、自分が中心になってしまい、周りに目を向けづらくなっていた。どんな人生を歩むにせよ、愛なしで生きていくことは難しい。この本が忘れかけていた気持ちを、思い出させてくれた。

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