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海のはじまり② 有村架純を完全に見くびっていた

 この話は45歳のバツイチ子無しの男が、ネタバレ全開で感想を述べております。不適切な言葉や的外れな感覚を持った表現があるかもわかりませんが、それを踏まえて楽しんでいただければと思います。

 海のはじまりは見たものの立場によって感じ方も変わるのではないかと思います。男の人、女の人、家族を持つもの持たないもの、皆それぞれ人生があり積み重ねてきた生き方があるように、それぞれが感じたことがあると思います。私と同じような立場の方もいれば、全く違う立場の方もいると思います。それでも一人の人間が感じたままに、感想を述べたいと思います

 海のはじまりの1話を見たときは、生方美久さん率いる「silent」チームはやっぱりすごいなあと思いました。現代に沿ったドラマが得意な印象を勝手に思ってましたが、まさかの大映ドラマ風とんでもドラマを作ってくると思いませんでした。それでいて一つ一つのディテールが丁寧すぎて、大映ドラマみたいに笑いながらツッコむ隙を与えることなく、呆然としながら画面にくぎ付けになってしまった。

 1話をザクっと振り返るとこんな感じです

 ① 目黒蓮と有村架純とのささやかだけど、幸せな一コマに一本の電話が入る。それは元カノの死の知らせだった。7年も前に別れた元カノの死が電話で知らされるのは普通のことなのだろうか?
 元カノの行方は何にも知らず、音信不通となるパターンも普通にあると思ったのだが……
 ②元カノの葬儀に参列すると謎の少女がこちらを見ている。元カノにも子供がいたのか?幸せそうで良かった良かった...…(ん?何かがおかしい)
 ③大学時代の元カノ(古川琴音)との思い出、出会いは興味のないサークルの新歓コンパ、コンパの輪の中から見事に外れたところで二人がである。元カノはいろいろとマイペースで変わったやつだ。少なくとも私がお目にかかることがなかった人種である。
 ④ある日、元カノから「中絶同意書」のサインを求められる。月岡夏(目黒蓮)は逡巡しながらも、同意書にサインする
 ⑤元カノの水季が突然大学を辞める。それとほぼ同時に「夏くんより好きな人ができた」と言われて別れを切り出される。「なんか言いたいことある?」と聞かれても「お幸せに」と棒読みで応えながら、内心マイペースぶりにほとほと参っている。
 マイペースな水季に惹かれた夏だが、別れ際にはそのマイペースがめんどくさいやつだと思うようになる。「好きな人ができた。何か伝えることある」って聞くなんて、メチャクチャ変わったやつだと思ってしまった。

 ところが、水季は一人で子供を産み立派に育てた。そして、水季は亡くなった。その子供の海ちゃんの父は夏くんであるという。

 中絶同意書や「好きな人ができた」発言で夏は完全に他人だと思っていた。それが知らないうちに父になっていた。ハッキリ言って大映ドラマ風のとんでも展開である。

 水季との回想シーンの端々に伏線があり、その場で見事に回収されている。不自然な点もあるにはあるが、話の筋はちゃんと通っている。それでいて端々のシーンが私にツッコミを入れる隙を全くあたえてくれなかった

 情けなくもうろたえる目黒蓮に自分を重ねながら、これからどうするんだろうと不安と好奇心が入り混じりながら1話が終わりました

 1話を見てからすぐさま感想を書き、そのあといろんな人の感想・レビュー・考察などを読みましたが、私が思ってもみなかったことや読み取ることができなかったことがたくさんあり、大きな気づきがありました。

 一方で考察ブログや考察動画を見ないうちに感想を書けて良かったと思います。中には的外れなコメントもあるかもしれませんが、自分の感じたことをできるだけ素直に書くことができたことに意義があると思います。

 サイレント定番の「ぶちまけ」

 水季が働いていた図書館で同僚だった津野くん(池松壮亮)が絵本をぶちまけます。何かに動揺したワンシーンでしょう。

 真っ先に思い浮かんだのは「silent」で川口春奈が勤めているタワレコでCDのたばを落としてしまったシーンと目黒蓮が実家でCDをぶちまけてしまうシーンが想起されました。

 ドラマの考察ブログや考察動画を見過ぎたせいで悪い癖が出てしまいました。ぶちまけてしまった絵本に注目してしまいました。今頃、考察厨はぶちまけた絵本を解析してあることないことをいろいろと語っているでしょう。

 そういうところが生方美久さんの手の上で転がされているというのです。もちろん本棚などの固有名詞のある作品に意味を持たせたり、考察厨にドヤ顔で語らせようとするのは、生方美久さんのお家芸です。どちらかというと、東京ラブストーリーの坂元裕二さんがメチャクチャこだわったりする印象があります。映画「花束みたいな恋をした」が典型です。

 こうなりゃ私も企みに乗ってみようじゃないか!

 ぶちまけてしまった絵本の一つに「なぐもうみ」と名前が書かれている絵本があります。おそらく借りてきた絵本に名前を書いてしまったのでしょう。その作品は「くまとやまねこ」という絵本です

 さっそく「くまとやまねこ」の朗読劇をYouTubeで拝見しました。主人公のくまは親友の「ことり」とささやかながらも幸せな日々を過ごしてました。いつもと変わらない「きょうの朝」を迎えることが不思議だけど幸せであるとかみしめている。ある日、親友のことりが死んでしまった。この日はいつもと違う「きょうの朝」だ。悲しみに暮れたくまは、ことりを綺麗な箱に入れて肌身離さず持ち歩いているという。といった絵本ながらも中々にショッキングな冒頭から始まる物語だ。これを海ちゃんが名前を書いてしまうほど気に入っている。これは何かを暗示しているのではないかと思ってしまった。

 考察厨の方々はもしかしたら津野くんがぶちまけた絵本すべてから何かを読み取ろうとするだろう。私にはそこまでの元気は残念ながら持ち合わせていなかった。そして何が出てくるのか楽しみでならない。

 生方美久や坂元裕二はそんなところに思い切り凝りそうな期待がある。もしかしたらなんも考えていないかもしれん。

 それでもいいじゃないか。意味無き事を考えることがやがて意味になる。

 突然父となること

 夏にとって突然父になるということは、突然お義母さんが現れることでもある。海ちゃんの祖母であり、水季の母として大竹しのぶが登場した。夏くんのもとに無邪気に現れた海ちゃんを迎えたのが大竹しのぶである。

 とつぜん、知らないおばさんから「この子はあなたの子です」と言われたら恐怖は想像に難くない。海ちゃんの手を引いて夏のもとから離れるシーンは何とも言えない恐怖を感じた。

 大竹しのぶからすれば「責任を取らずに逃げた男」ぐらいに思っているのかもしれない。元カノの葬儀だと思っていたら、知らないところで血のつながった娘がいて、義理の母がいる。しかし、妻はいない。

 これは大映ドラマばりのとんでもシチュエーションだ。

 連想したのは、金持ちの娘と貧乏な家の娘の二人が実は病院での取り違えだったという「乳姉妹」を思い浮かべてしまった。他にもやたらと絡んでくる不適切な金持ちや嫌味なおばさんが実の親子だったという、ありがちなシチュエーションと重ねてしまった

 ヘタレの目黒蓮と大竹しのぶが2話でちょいちょい対峙する。知らなかったのは本当だとしても、この超展開で義母の大竹しのぶと対峙するのはやっぱり怖すぎる。大竹しのぶの腹の中が全然読めない表情は傍から見ても怖すぎる。

 私だってバツイチとはいえ、元妻の両親へのあいさつはメチャクチャ緊張した。もちろん妊娠もしていないし、正式にプロポーズはしたはずだ。当時もお互い30を超えたいい大人のはずだ。それでもやはり緊張したものだ。

 最初は元妻を私の両親に紹介したのだが、これもまた緊張した。最初は妻も両親も緊張しているといったが、いざ対峙してみると一瞬で打ち解けてしまっている。母が「こんな息子でもいいんですか」と言い放ってしまい、「考え直した方がいいですかね~」となぜか漫才が始まっていた。ホームのはずなのに、私がメチャクチャ緊張して食事ものどに通らなかったぐらいだった。こういう時に女は強いのだろうか

 そして、わたしが相手の両親のところに挨拶に行くときはメチャクチャ緊張した。ご両親のほんの些細な一言一言が重苦しく感じる。私が何を言っていたのかはもう全然覚えていない。一言一言が究極の選択であり、地雷原を歩いているようで、生きた心地がしなかった。それでもどうにか結婚まではこぎつけることができた。

 やましいことは何もないはずなのに、とにかく怖かった。目黒蓮も知らなかったとは言え、結果的に不義理を働いていることになる。二人の会話の恐怖は想像に難くない。

 変わり者の象徴「鳩サブレ」で大竹しのぶは娘を思い出しながら、笑いがこみあげてきたが、私には全然打ち解けているように見えない。何もかもが恐怖にしか見えない。目黒蓮は父となると共に、お義母さんとの恐怖と向き合わなくてはならない。

 「彼女さんが一番のもらい事故だよね」

 やだやだ……怖すぎる……

「この物語は有村架純の物語である」とドヤ顔で語りそうになってしまった

 有村架純は目黒蓮よりも年上の彼女である。若干ヘタレで情けない目黒蓮に対してすべてを包み込むような母性の塊のような感じの彼女だ。

 目黒蓮の部屋なのに、本人以上に部屋のことがわかっているしっかり者である。また憎たらしいことにコロッケをお惣菜で済ませようとするキャラクターを作ってしまっている。ガチで料理ができる彼女よりも有り合わせのものを効率よく食卓に並べる奥さんの方がありがたい。少なくともヘタレの男どもより何倍もしっかりしている。男の料理なんて、何にもできないか趣味として凝りすぎるかのどちらかしかできないものだ。

 私は料理全般がダメなので、彼女がキッチンに立ったらすべてをゆだねてしまっている。できるところだけでも協力すればいいものの、それすらできないから結局別れを選んでしまうことになってしまうのだ。

 じゃあ男が料理をできればよいのか?

 それでも男はバカだ。なんでもガチでこだわってしまう。極めすぎて自分の世界に入ってしまう。とにかくシェフ並みに上手ければなんでもいいのか?

 そうじゃねえだろ。そんな風に考えているのは私だけかもしれないが、もし私がいやいや料理を覚えようとすると、間違った方向に向かいそうだ。

 「お惣菜のコロッケ」というのが個人的にはまたそそるのである。

 象徴的なのは「ううん」と「うん」とも解釈できるような返事やめなよといったセリフが完全に目黒蓮から見た理想の彼女だと思えた。そして、厚かましくも情けない目黒蓮に自分を重ね合わせた、私の理想の彼女に思えた。

 顔は有村架純だ。まったく文句はない

 このシチュエーションから、どや顔で考えた。

 この物語は有村架純の物語である

 いわゆる「三人称一元視点」であり、とんでも展開に巻き込まれている情けない目黒蓮が当事者だが、有村架純の視点を通して目黒蓮を描いている。

 「有村架純からはこんな風に見えているんだろうな」という物語だ。その情けなさも、もし同じようなシチュエーションだったら同じようなことをしてしまうだろうと思えてしまった。

 有村架純は大映ドラマのようなとんでも展開を冷静に受け止めている。それでいて、目黒蓮の性格を見事に代弁するかのように言い当てている。

 「肝心なことをごまかしてしまったけど」、「それはいつものことでしょ」と冷静にツッコんでいるぐらいだ。

 私も肝心なことをすぐにうやむやにする癖はあり、元嫁に指摘されていたのを思いだす。決定的に違うのは私のそんなところをガチで嫌っており、それが別れの決定打となってしまった。さらに悪いことに、そんな私の性格はいまだに治らない。

この状況をどうやって説明するのか

 このとんでも展開を有村架純は極めて冷静に受け止めていた。まるで、このとんでも展開に振り落とされそうになる私たちを引き戻す、道標のようにだ。

 「中絶したと思っていた子供がこうして生まれたことでほっとしている。」「中絶同意書にサインしていたことをずっと後悔していた」

 出産経験のない私の乏しい想像力からは「何をきれいごとを」と思っていたが「夏くんは悪くないよ」という言葉に救われたが、間髪入れずに「殺したんだよ」と強めに言い返していた。
 
 自分に当てはめてみたら目黒蓮の言うことに同意してしまう。むしろ、あわてふためきながらやはり罪悪感にさいなまれてしまうだろう。客観的に見れば綺麗ごとに聞こえても、やっぱりおんなじことを言ってしまうと思った。

そして、すべてがひっくり返った

 予告編で見た有村架純の涙は、目黒蓮のすべてを受け入れた涙であると思った。もしくは、まったく受け入れることのできない涙だと予想した。

 さらには、「三人称架純視点」という訳のわからない理論を提唱しようとしていた。

 (これからドラマを見ようとしている人は引き返してください)

 急にエコー画像が出てくる。

 なんと有村架純にかつて中絶した過去があった。元彼に中絶同意書にサインをしてもらい本当に中絶手術をしたことがある。水子の仏壇もしっかりあり、今でも手を合わせている。

 そんな過去を目黒蓮はしらない。

 突然、有村架純が主人公になった。すべてをひっくり返された。

 この展開は全然予想していなかった。2話予告を見たってわからない。

 目黒蓮が中絶同意書にサインをしたことの罪悪感は嘘ではないはず、しかしその言葉がとにかく軽い、軽すぎる。

 男にとっての出産が如何に軽いものなのか!!

 完璧にやられた!!有村架純を完璧に侮っていた。

 まだ2話だぞ!!こんなサプライズを隠し持っているとは

ドヤ顔で有村架純を「ナレーション」と言おうとしていた、私が恥ずかしい

 

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