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日々よしなしごと~京都ぶらり旅その2~

2023年3月に行った京都の旅。1日目は今回のメインの目的であった大徳寺の塔頭聚光院、そして西本願寺(の北の能舞台であったが公開されてなかった・・・)、そのついでのお向かいのお香の老舗「薫玉堂」にて、お香を求める、というミッションは達成された。
その合間にぶらぶらと歩いて立ち寄った今宮神社と門前のあぶり餅、和久傳「五」でのランチ、そこからのばら珈琲店という常盤貴子お気に入りコースだったが、のばら珈琲店は定休日という驚愕の結果(単にリサーチ不足・・)であったが、偶然に通りかかった「鶴屋吉信」での和菓子実演でお抹茶一服というプラマイゼロ?な展開だった。

そして、夕方お気に入りのホテルにチェックイン、おひとり様ディナーも美味しくいただき、明日は東福寺の涅槃会に行こうか。。。というユルい予定だった。
そう、今回は気ままに歩いてみようと思っていた。

このホテルには図書室があり、どれどれと眺めていると京都コーナーがあって、その中に入江敦彦さんの「京都でお買いもん~御つくりおきの楽しみ~」という本をみつけた。”京都でお買いもん”というフレーズに惹かれ部屋に持ち帰り読み始めた。
「御つくりおき」というのはつまり、自分の好みに合わせたデザインや素材などを指定して特別に作ってもらう特注のことらしい。
入江敦彦さんは京都西陣のお生まれの京都育ち。現在はロンドン在住のよう。京都にまつわる著書多数で、京都人の好きな食べ物や散歩道など、あくまで京都人から見た京都の姿を書いていらっしゃる(というのを後から何冊か読んで知った)

で、この「京都でお買いもん・・」を読んで、がぜん行きたくなったのが、宇治にあるお茶屋さん「利招園茶舗」
入江さんはロンドン在住と先に書いたが、お抹茶大好きな入江さんはロンドンの自宅でも毎朝一服お飲みになるのだとか。しかし、ヨーロッパの水は硬水。日本でお抹茶を点てるようにきれいに泡立たないらしい。
ある時、ロンドンで京都のあるお店の展示会を開催されることになった。その店とは銅などで作った茶筒のお店開化堂で、開化堂店主とは親友だった入江さんはその展示会をお手伝いすることになった。その際にお抹茶を点ててお出しすることにしたが、ロンドンの水では美味しく点てられない・・ということで、硬水でも美味しく点てられるお茶を作って欲しいと頼ったのが、これまた懇意の利招園のご主人利田さん(かがたさん)だった。
利田さんは、こういう難問?にがぜん奮い立つ方らしく、試行錯誤の結果その名も「倫敦」というお抹茶ができたそう。
このエピソードを読んで利招園茶舗さん、はたまた利田さんという方に興味津々となった私は、明日は宇治へ行こう!そして宇治と言えば平等院にも行こう!と決めた。そしてさらに、開化堂の美しくかつ素晴らしい技術で作られた茶筒も欲しい、開化堂Caféにも行こう!

そう決めたけどなかなか寝付けれずにいたら、窓から優しい光がさしている。べランダから眺めるとなんと美しい三日月が桜の木の真上に輝いていたのだ。寒さも忘れてしばし呆然と眺めておった。
このホテルの前は公園なのでさえぎるものがなく、くっきりと天上の月を眺めることができて、これは明日の予定を寿いでくれている証と勝手に喜んで眠ることができた・・・

ホテルのベランダから眺める月。すぐ前は公園

翌朝もすっきりと目覚め、バイキングの朝食では、あの手袋の強制もなく気持ちよくいただいた(あのバイキングの手袋本当に面倒くさかったよね)
京都駅までは梅小路公園の中を通って歩いて行くことにした。
梅小路公園というのは、平安建都1200年を記念して造られた日本庭園などのある公園で、災害時に避難場所としても使える広々と気持ちのいい公園。走っている人、広場でボール遊びする人、散歩する人なども多く愛されている公園だと分かる。
卒業式シーズンだったので、お着物に袴姿で笑い興じながら楽し気に行く女子学生とすれ違い、こちらも思わずおめでとう!と心の中で祝福。

宇治までは電車で40分ほど。京都の街中とは違う少し鄙びた風景を眺めながら宇治に着くと、降りた人はみんな平等院を目指しているようなのでその流れに乗って歩く。
参道には、お茶の宇治らしくお茶屋さんが並んでいるが、下町の商店街っぽくてお惣菜やさん(おばんざいやですね)や炭火焼の鰻屋さんもあって、帰ってからの夕食用に買って行くぞ!と目をつけておく 笑
徒歩10分ほどで平等院に到着。まさに10円玉の建物が見える。
池の真ん中に建つ寺院はまるで極楽世界のように美しい。寺院の中も見学できるらしく、50人ずつガイドさんの案内で回る。
平等院は、元々平安時代に栄華を極めた藤原道長の別荘だったところを、道長亡き後息子の頼道が阿弥陀像を安置して寺院にしたとか、藤原定家が建立したとか諸説あるらしいけど、いずれにしろ平安時代の優雅で天上的な雰囲気のある建物であるには違いない。
それにしても阿弥陀像の廻りに飛んでいる飛天菩薩の数の多さに、当時の宮中の人たちの死への怖れや死んでからも極楽浄土に行きたいという痛切な願いを感じた。
お店でやっている「枕草子」の読み解きで知る平安時代の様子が、ここにリアルに浮かんでいるようだった。

平等院から駅への帰り道、沿道に連ねるお茶屋さんの「抹茶ソフト」ののぼりの波(はちょっとおおげさか) 暑いくらいの日差しだしせっかくなので食べていこう!と立ち寄ったのが、冒頭の写真のお店。宇治川に向いたテラス席もあり、川の流れと遠くに見える山並み、サギの姿などをのんびり眺めていただく抹茶ソフトの美味しいことよ!
大満足でそちらを出てから、途中のおばんざいのお店であれこれ買い、鰻屋で特上の鰻丼を買い(といってもお店で食べるのの約半額!)、往きに気になっていた「上林記念館」 宇治茶の老舗「上林春松本店」の横に趣のある建物。お抹茶で有名なお店なので、どんなものが展示されているのか見ることにする。
中は元作業場だったような小さいけどきれいな建物。お抹茶ができるまでの工程と使われる道具などの展示があり、創業者?の上林竹庵(春松)の像などがある。
その中に面白いエピソードが書かれていた。
上林春松が茶屋を始めようとした時、千利休を茶会に招いた。まだ若くお茶の経験も浅い自分の招きに応じてくれることはないだろうと思っていたが、ある日利休が弟子を何人か連れてやって来た。大変光栄に思った春松は点前をするが、利休を前に茶筅は倒す、茶杓を落とすと粗相を重ねた。利休の弟子たちはそれを見て笑っていたが、利休は一服飲み終わった後に、「大変見事な点前であった」と褒めたたえた。春松はその言葉に大感激してお茶屋をやっていくことを決心したという。終わってからの帰路、弟子の一人が利休に「なぜあのような粗相だらけの点前をお褒めになったのか」と聞くと利休は「春松の点前はひたすら良い茶を点てようとそれしか考えずまっすぐな気持ちで点てていたからだ」と答えたという。
なるほど~と利休なら言いそうなことかも・・不遜にも思いながら春松がそれから茶師として精進したであろうことは想像がついた。

という豆知識も仕入れて、宇治をあとにしていよいよ?利招園茶舗に向かう。利招園さんは、ここから京都よりに少し行った三室戸というところにあり、宇治からはバスと電車を乗り継いでいかなくてはならないのだ・・・

ここで本当に一服ということで、
このあとの続きは『京都ぶらり旅その3』で!

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