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最近うまくいかないと悩む中年以降の人は読むべし|本紹介「運転者」

「自己啓発本というのは、どの本を読んでも最終的には『まず自分から動け、動かねば始まらない』というメッセージに帰結する」と私は考えています。

しかし、今回は違う……というか、確かにそのメッセージもありましたが、もっと広い視点になる方法をより具体的に伝えてもらった気がします。

今回ご紹介する本は「運転者」(喜多川 泰・著)です。

実は自己啓発本だと知らなくて、普通の小説かなと思って最初読み始めたんですよね(笑)。
(喜多川 泰さんも書籍を何冊も出しておられるかたなのに、今回初めて知りました)

とはいえストーリーものとしても楽しめるかと思います。私は小説慣れしているせいで、伏線回収前に「あれ、これってもしかしてこういうことじゃね?」と察しながら読んでしまいましたが、そんな私でも「そことそこをそういう風に繋げるのか〜すごい!」と感心しながら読めました。

さらに、そんな読み方していてもめちゃくちゃ泣きました。感動の涙と、痛いところ突かれて「痛い痛い痛い! 心が痛い!!」となる涙です。

私は「絶対泣けるから!」とか言って読めとか観ろとかいう勧め方をするのが好きではありません。したがって、私が泣いたからと言ってあなたが泣くとは限りません。

しかしながら、この記事の表題の通り「最近うまくいかない」と感じる中年世代——30代後半以降のかたには積極的にオススメしたいなと思う本でした。
なぜならこの本の主人公が40代中盤(後半?)くらいだからです。

◆ざっくりとしたあらすじ

主人公は中古車販売会社から保険会社の営業職に転職した、岡田修一(40代中盤〜後半くらい)。妻一人、中学生の娘一人の三人家族で暮らしている。
妻は来年の夏休みのパリ旅行のことばかり気にかけており、娘は不登校になり、そのためか家族関係も少し窮屈な感じに。

修一は保険会社に転職してもうすぐ1年。新規契約が取れないと2年目から給料が大幅に下がってしまうという焦りで心身ともに疲弊していたところ、自分が担当した生命保険の大量中途解約が起こってしまう。

このままではパリ旅行どころか生活や娘の進学もままならない。そんな時、一人暮らしをしている実家の母からも電話がかかってくる。
気に病むことがどんどん積み重なり、

「……なんで俺ばっかりこんな目に遭うんだよ」

パンク寸前の頭でそう呟いた時、一台のタクシーが目の前に止まる。
そのタクシーには、気味が悪いくらい修一の現状を把握している、会ったこともない奇妙な“運転手”がいた……。

……というのがざっくりとしたあらすじですが、少しでも気になる方、変に前知識を入れずに本を楽しみたい方は、先述したリンクから即座に読むことをオススメします。

しかもKindle Unlimited会員のかたは無料で読めます。最近気づいたのですが、Unlimited本はいつまでもUnlimited対象になっていないことがある(いずれ読み放題じゃなくなる)ようなので、気になったかたは早めにダウンロードを。

ここから先はネタバレ的な要素を含みますので、ぜひ本を読んだ後にいらしてください。

「内容をある程度わかっていないと安心して読めない」「巴さんの感想文をまず読みたい」というかたは、本を読んだ時の感動や衝撃が半減するのを覚悟のうえでお読みください。ではどうぞ。

◆運転手はただ車を運転するだけの運転手ではない

ストーリーもの自己啓発本は大抵、何もかもうまくいかなくてやたらイライラしている主人公が、人生を幸福に生きる秘訣を知っている謎の人物(あるいは人外)に出会って大切なことを教えてもらう……という流れが多いですが、この本も基本はそういった流れです。

奇妙なタクシーの運転手がおそろしいくらい何でも知っているので、とても人外っぽいです(姿形は若い青年ですが)。
そういう意味では「夢をかなえるゾウ」の構成に近いかもしれません。

といっても夢ゾウのガネーシャのように家に転がり込んできてめちゃくちゃする訳ではなく、タクシーに乗っている間だけ大切な話をしてくれる、少し遠い位置のサポーター、という感じですが。

ただ設定や構成が面白いです。
車の運転をする運転手かと思いきや、
・人の運を転じさせる仕事をしているから、運転手
・タクシーに乗せて、人生の転機となる場所に連れて行く
というのが引き込まれました。

◆上機嫌でいることの重要性を具体的に教えてくれる

主人公のイライラ感は、私が好きな本「嫌われる勇気」や「仕事は楽しいかね?」の主人公を彷彿とさせます。

というか自己啓発本でうまくいっていない主人公は、だいたい過剰にイライラしていますね(笑)。

そしてこの本でももちろん、うまくいかない現状を変えるためには上機嫌でいることの重要さを教えてくれます。
が、その教えかたがとても具体的でいいんですよね。

「運が劇的に変わるとき、そんな場、というのが人生にはあるんですよ。それを捕まえられるアンテナがすべての人にあると思ってください。そのアンテナの感度は、上機嫌のときに最大になるんです。逆に機嫌が悪いと、アンテナは働かない。」

「運転者」(電子版p43)

自分のご機嫌は自分で取るべし、機嫌よくいれば状況が良くなる……というのは私もこれまで学んできたことですし、意識もしていたことですが、説明が具体的で「ふ〜む、なるほど〜」と唸りました。

また、上記のような話をすると「スピリチュアルか」と言ってバカにする人もいますが、現実的に基本不機嫌でいると何がどう悪いかという話も出てきます。それは本書でご確認ください。

さらに私は「人は恥を感じたとき最大級に変化する」と考えているので、主人公が“自分が不機嫌にしている様”を映像で見せつけられて、ものすごく恥ずかしくなるシーンも大変いいなあ、と思いました。

自分のカウンセリングでやりたいくらいですね、これ(笑)。

というか私自身も最近すこし不機嫌にしていたことがあったので、それを思い返して自分も猛烈に恥ずかしくなり、「ああ……本当に変わろう……」と思えたのも(痛かったけど)すごく良かったです(笑)。

◆自己啓発本の教えをうわべだけすくい取らせない痛快な文章

自己啓発本はもちろん、私が学んだ心理学でも「どういう風に態度を改めれば苦しみから解放されるか」という話が出てきます。

で、自己啓発や心理学をかじった多くの人が、うわべの方法論だけ読んでそれを実施し、「あの通りにやったのにうまくいかない」と文句を言うんですよね。

この本の主人公もまた、上機嫌でいるように言われて“上機嫌のふり”をしてしまい、それを運転手にたしなめられます。

もうこのシーンが心に刺さりすぎて泣きました(笑)。
痛い所を突かれた、というのと、励まされた、という二重の意味で。

つい先日、下記の記事で「世界一!愛されて幸せになる魔法のプリンセスレッスン」の紹介をしましたが、この中にも上機嫌でいるとうまくいく、という内容や方法は書かれています。

で、私も最初この本に書いてある「プリンセス・ダイアリー」を久々に実施したのですけど、やっぱり久々だったために、最初は“上機嫌のふり”をしてしまったんですね。

嬉しくもないことを無理やり嬉しいと思おうとして、そのせいでイライラが溜まってしまったり。
5年も心理カウンセラーをやっているくせに、まさに私が「うわべをすくいとって実践したつもり」になっていた訳です。大変お恥ずかしい。

そのことには今回の本を読む前に気づいて直したのですが、それでも私はまだまだ“本当のご機嫌”にはなれていなかったな〜と思う点があったので、グサグサグサグサァッ!! ときました。

自分の精神疾患を自力で治すほど猛勉強した私でも、久々にやろうとすると失敗するくらいですから、精神疾患を治そうとしてなかなか治らない人・最近学び始めた人はもっとできていないと思いますよ。

「うわべの自己啓発/うわべの上機嫌」にならないよう、本気で気をつけてください。そうすることが、あなたを幸せにしますから。

そしてこの本には、突き刺された心をやさしく力強く励ます言葉もありますので、安心してお読み下さい(笑)。

◆「運」の定義が面白い

多くの人が、「運が良かった・悪かった」という言い方をします。
もちろん私もそういう考え方でした。

しかし本書では、運は「良い・悪い」というものではなく、「貯める・使う」ものだと定義しています。

運が良いように見える人は、それまでに何もしていない訳じゃない。
それまで貯め込んでいた運を、そのときに「使った」だけなのだと。

これは衝撃的でした。私もこれまでの人生で「たまたま運が良かった」と思うことはいくつもありましたが、それは目の前にやってきた運を掴み取るだけの準備ができていた、それだけの努力をしてきたからだと考えていたのです。

そうではなく、運が貯まるようなことをしてきていて、それをその状況で使っただけ。

そういえばふと、昔読んでいた漫画「ハチミツとクローバー」のあるシーンを思い出しました。真山という青年が長年片思いしていた女性と近づくきっかけがあった時、「今まで貯蓄した幸せ貯金を全部使っているのでは」的なことを思うシーンがあるんですね。

う〜む、私はすでに運は貯める・使うという考え方を知っていたにもかかわらず、忘れていた&きちんと理解していなかったのか……と思いました。

今回の本の話に戻ります。
しかもその貯まった「運」は、自分が貯めたものだけでなく、自分よりも前の世代が貯めたものを受け継いでいる、というのです。

この辺の話はぜひ本書で読んでいただきたいのですが、私はこれを読んだ瞬間、まっさきに自分の祖父を思い出しました。

以前の記事で書いた通り、2022年秋に私の祖父は他界したのですが、

私は祖父はもっと色々とやりたいことがあったのに、できないまま亡くなってしまったと思っていたのです。

自分の望みを叶えられず、人のために何かすることばかり考え、晩年は世の中や周囲のいろんなことに文句を言うようになってしまい、死ぬ直前にたった少しだけ、自分の好きだった絵を描いて亡くなった……
それが私の“祖父の人生”についての印象でした。

祖父は運をたくさん貯めたのに、それを使えずに亡くなったんだ、と思いました。しかし、私に起こった数々の幸福が、祖父が貯めて残してくれた運を使って起こったものだとしたら……と思うと、涙が溢れました。

いや、祖父に限らず、もっと前の親族たちが貯めてくれた運のおかげで、私は死なずにすんだり、治らないと言われる精神疾患を寛解できたり、本を出版できたり、パートナーと仲良く過ごす生活を得られたのかもしれません。

私は自分一人の人生のことしか考えておらず、いかに自分が得をするか・損をしたかばっかり気にしていたので、非常に恥ずかしくなりました。

◆「損」は損ではない

私はかつて、よく利用される人間でした。色んな意味で。
だから自分の人生は損が多かった、でも若いときに損した分、これからはずっとそれを取り返せるのだと思っていました。

しかしそれは違ったんですね。私は確かに、自分が与えたぶんを返してもらうことの少ない人生でしたが、そのぶん「運」を貯めていたのです。
……という考え方も、この本に出てきます。

ここ1〜2年モヤモヤすることが多かったのですが、それは私が貯めてきた運をかなり使ってしまったからでしょう。
あるいは、今年また貯めていったのかもしれません。

それを「損した、損した」と嘆いたり、「損しないように、損しないように」と画策したりしているだけでは、何にもならないのだと思い知りました。

私もかなり恥ずかしい人間ですが、カウンセリング上で、やはり私と同じくらい恥ずかしい人をよく見かけます。

自分一人の損得しか考えていない人。
自分の人生一個のことしか考えていない人。
親や子供のことを考えているようで、自分のことしか見ていない人。

それでも、誰にでも運を使うチャンスはあるし、自分自身が貯めてきた運や、先代先々代から貯め込まれ受け継いできた運を持っているはずなのです。

たぶんこんな記事を書いても、全員がそれに気づくことはないでしょう。
それでも、この本が必要な人はたくさんいるはずだと思い、記事を書くことにしました。

私のエッセイ漫画を読んで、「巴さんは運良くいいパートナーに出会ったから病気が治ったのだ」などと思っている人。
私のカウンセリングを受けようかどうしようか悩んだまま、長いこと踏み切れずにいる人。

そういう人はおそらく、この本に1650円(電子版だと1617円)払ったほうがいいです。他に読みたい本がある人は、Kindle Unlimitedに入会して無料で読むのもいいでしょう。

先述した通り、人間は「自分が恥ずかしい」と思ったときに最も変われるパワーを得ます。
この本を読んで、一人でも多くの人が「自分は恥ずかしい人間だった」と思って、今よりもっと変わる勇気を得てくれたら嬉しいなと思います。

といっても合わない人には合わないと思いますので、自己責任でお願いします。本にも人にも相性はありますからね。

それでも私のように、たくさん泣いてくれるかたがひとりでもいたら嬉しいです。それだけで、この記事を書いた甲斐があります。

最後になりましたが、この本を紹介してくれた友人・ほしみん、本当にありがとう。最近の彼女はYouTubeで輝き出したので、まだ見ていない方はぜひ見てくださいね。私もチャンネル登録しました。
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では本日はこの辺で。ごきげんよう、さようなら。

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