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なぜ、94%もの企業が研修を実施しているのか?

株式会社アイ・キュー(現 株式会社HRビジョン)調査「人事白書2015」によると、従業員数100人以上の企業の94%が研修を実施していると回答しています。企業はなぜ時間とコストをかけてまで研修を実施するのでしょうか?それを考えるうえで参考にしたい調査があります。

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つまり、人材育成を要素分解したような調査です。この調査によると、「自身の経験」がもっとも多く70%、次いで「他者の観察、他者からの薫陶・フィードバック」が20%、「研修」はわずか10%でした。

研修は人材育成の要素の10%しか構成していないのですね。ということは、特に役割はないのでしょうか?もしも、研修に役割がないのであれば、大多数の企業が実施するのはおかしいですね。(役割がないならやらなければいいのです)
研修にはどのような役割があるのか確認したいと思います。

企業研修3つの役割

はじめに確認しておきたいのは、研修とは人材育成の手段のひとつであるということです。前述の通り、研修以外にも自身の経験や他者からの薫陶などの手段が重なって人材育成が成り立ちます。続いて、研修がもつ役割を整理したいと思います。その役割とは主に3つあります。

① 知識の補充
② 役割認識

③ 従業員体験

① 知識の補充
これはわかりやすいと思います。例えば経理部に配属になったら企業会計や法人税務などの知識が必要ですね。システム部であれば最新のIT技術やウィルス対策などの知識が求められるでしょう。その知識を補充するために研修を受けるのです。

② 役割認識
これは少々イメージしづらいかもしれませんので、私の体験談をお話しします。私がはじめてマネージャー(課長級)になったときに感じたのは、周囲の人の自分を見る目が変わったということです。私自身は係長の延長で何も変わらず忙しいくらいにしか思っていなかったのですが、部長は課の業績管理や部下育成、他部署との連携などいろいろな役割を求めていたのです。部下の方も、課長である私がどういう仕事をしたいのかを求めていました。私にはその役割認識がなかったためギャップが発生していました。そのため、今、研修企画の助言をしている身としては、役割認識について、OJTという名の現場放置にせず、会社のオフィシャルな研修として学ばせることをおすすめしています。

③ 従業員体験
最近、オシャレな事務所や豪華な社食をつくる企業が増えました。コロナ前までは社員旅行やBBQなどのレクリエーションを実施する企業もありました。研修もこれらと並列の従業員体験なのです。研修を受けるのはせいぜい年に数回、多い人でも月一回程度ではないでしょうか。つまり、非日常です。この非日常な研修の中で自分のキャリア観について考察したり、同僚とグループワークをしたりすることも貴重な体験となります。この従業員体験が、エンゲージメントの向上につながります。
エンゲージメントについては長くなるのでまた別の機会に記したいと思いますが、そのひとつの要素に従業員のやる気があります。このやる気を刺激するのが従業員体験であり、研修の役割なのです。

以上3つが研修の役割です。
私は人材育成の目的を従業員のやる気を引き出すこと(動機づけ)と定義しています。動機づけされた従業員がそろっていれば様々な企業目的をより早くより低コストで達成できるからです。そのための手段として、企業は様々な施策をとるのです。
先述の通り、研修は人材育成のひとつの手段に過ぎません。これが全てではありません。とはいえ、従業員を動機づける役割があることがわかります。

研修のほか人材育成には時間とコストがかかります。しかし、従業員を動機づけることにはそれだけの価値があるのではないでしょうか。だからこそ、94%もの企業が研修を実施しているのです。
研修を企画するときは、コストだけでなくその役割についても考察することをおすすめします。

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