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鬼滅を読む

GW期間中にも関わらず暇を持て余していた娘たちが、アニメ「鬼滅の刃」にはまる。
どんなものかと、アニメの1話目を見て衝撃を受けた。
主人公の家族が物語が始まって早々に無残にも殺されてしまう。
なんて儚く悲しい物語なのか?そして、なぜこんな物語に子どもたちが熱中しているのか?その時は知る由もなかった。

あまり気が進まなかったが、その後も勧められるがままアニメを見続けた。
そして物語が進むにつれて、その魅力にどんどん惹かれていった。
人を食らう鬼たちの住むこの物語の世界は無慈悲なまでに厳しいく描かれている。しかし、その中で必死で生きていく主人公やその仲間たちのひたむきさに魅せられている自分がいた。

「好きな人や大切な人は漠然と明日も明後日も生きてる気がする。それはただの願望でしかなくて、絶対だよと約束されたものではないのに」

「破壊されてはじめてその幸福が薄い硝子の上に乗っていたものだと気づく」

物語の中で登場人物たちが発する言葉に身につまされる思いになる。
現実の実世界では人を食らう野蛮な鬼たちはいないのかもしれない。
しかし、度重なる自然災害や今も世界のどこかで繰り広げられる争いや、貧困等の社会的問題、形を変えた鬼のような難題はこの世界にも、しっかりと存在している。

この物語の特徴のひとつに主要な登場人物が次々と殺されいなくなる。
私が好きな炎柱、煉獄杏寿郎も物語に登場して間もなく殺されてしまう。せっかく出てきた好きなキャラがいなくなってしまう残念な気持ちもあるが、そこに、この無慈悲な世界観のリアリティーを感じる。
何度も再生を繰り返す強靭な肉体を持つ鬼たちに比べ、人間はあまりにも儚い。しかし、強さや儚さについて煉獄さんはこう言う。

「老いることも死ぬことも人間という儚い生き物の美しさだ」

「強さというものは肉体に対してのみ使う言葉ではない」

鬼に対して圧倒的に不利な立場である人間ではあるが、大切なものを守るため自らの命を犠牲にしながら必死に立ち向かい戦う。
悲しく辛い過去を背負いながらも、言い訳や弱音も吐かないで自らの運命と向かい合い鍛錬して成長していく。そんな心の強さに触れ、読者の一人として、大きな勇気をもらっている。

「己の弱さや不甲斐なさにどれだけうちのめされようと心を燃やせ。
歯を食いしばって前を向け。君が足を止めても蹲っても時間の流れは止まってはくれない。共に寄り添って悲しんではくれない。」

鬼滅の物語には鬼たちのストーリーも丁寧に描かれている。
人々を苦しめる鬼たちがいかにして人から鬼となったのか。
憎い敵であるはずの鬼たちでさえ、物語を読めば、不思議と同情を禁じ得ない。物語を多角度から描くことにより、単純な悪として存在しない鬼たちの存在がこの物語に深みを与えてくれる。
嫉妬や恨み、寂しさ悔しさ悲しさ等から生まれる怒り。
それらによって、すり減った心は弱さを攻撃へと変えていく。

物語の主人公竈門炭治郎はどんな境遇でもまっすぐな心を見失うことなく、仲間を想い、妹を助けるため、強くたくましく成長していく。

「頑張れ!人は心が原動力だから。心はどこまでも強くなれる」

「鬼であることに苦しみ、自らの行いを悔いている者を踏みつけにはしない」

自らの家族を亡き者にした鬼という存在にさえ寛容な気持ちを持つことのできる主人公の言葉に、許すことの大切さと、真の強さを学ぶことができる。

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