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14.研修旅行と悔しさ 長野ゲストハウスヘルパー体験記

2021年7月7日 午前9時。長野県諏訪市下諏訪「マスヤゲストハウス」にて1166バックパッカーズ、平野珈琲のメンバーで集合写真を撮る。

 毎年6月〜7月頃に1166バックパッカーズと、平野珈琲のメンバー合同で研修旅行に出かけるそうだ。今年は2021年7月6日〜8日で全行程は二泊三日、長野県内の研修で、1日目諏訪市、2日目松本市でそれぞれ一泊する。
 研修の目的は「旅人になってみてみる」。ゲストハウスのスタッフとして、旅人を迎えるだけではなく、旅人の目線で訪れる場所や宿をみて、仕事に活かそうということだ。さらにスタッフ同士、寝食を共にすることで親睦を深める意味合いもある。

 もともと、わたしはこの研修旅行の前日にヘルパー期間を終える予定だった。しかしスタッフ間で「いやいや、研修一緒に行くよね?」という感じになり、織絵さんに相談して参加させてもらうことになったのだ。だからわたしにとっては研修というよりも、卒業旅行という意味合いが強かった。そしてその通り思い出をたくさんつくった。しかしながら、少し悔しさを感じた。それは“本”についてだ。

 今回の旅程には本に関する場所が4ヶ所もあった。2日目の松本市、浅間温泉のブックホテル「松本本箱」、その近くのブックカフェ「哲学と甘いもの。」、3日目松本市街のカフェ「栞日」、その向かいの銭湯「菊の湯」だ。(菊の湯は普段は銭湯だが、行ったときはミシマ社の本の展示中だった。)
 上記以外にも、1日目諏訪市で宿泊した「マスヤゲストハウス」や、2日目の宿、松本市の「tabi-shiro」にも、そして食事やお茶をした飲食店にも冊数に多い少ないはあれど、本を置いている空間があった。

 それぞれの本棚を見て、毎回色々な気持ちになった。それは「もっとこんな本が置いていたらいいのになぁ」だったり、「空間演出と本でこんなことができるのか、すごい」だったり、「この本のラインナップはこのお店の精神を表している…わたしじゃ思いつかない」等。そのどれも総合して“なんか悔しい”気持ちが根底にあった。

 研修からは離れるが、ヘルパー期間中盤のスタッフミーティング後に、織絵さん含めスタッフ全員が雑談ベースで“これからの詩乃さん、なにやるのが面白いか妄想会議”を開いてくれたことがあった。
 色々アイデアを出してもらい、暫定の最終案は「①民間の図書室を開く。②図書室蔵書を使い、希望があった近隣のお店や施設の本棚をプロデュースする。③希望者を1時間ほどインタビューして、その人に合った本を後日郵送する。」ということになった。これはわたしが以前図書館司書だったり、まちづくり支援を志していたり、話を聞くのが好きだったりという経歴や好きなこと・得意なことを総合した結果だ。
 こんなことを話していたので、「自分がこの施設に本を置くとしたら」という目線で研修中は本のある空間を見ていた。

 研修中感じた悔しさの中身を考えてみる。まず、あの本を置いたら、もっとこの場所のことや店主さんのことが分かってもらえるのではという時、悔しい。さらに、あの本があれば、訪れた人がここにいていいんだという安心感を得られるのではないかという時、悔しい。
 少し目線を変えると、本棚に自分が知らない本が多い時、悔しい。それにともない、本棚のセンスが良いのかどうかさえ分からないこと、これも結構悔しい。
 そして以前、司書時代にすごく本に詳しい同僚に嫉妬(多分)し、どうせわたしは本にそこまで向き合えないんだから知~らないっと投げ出してしまったことがあったのだが、今回の旅で、それぞれの本棚をつくった人に嫉妬し、また本に向き合うのが怖く感じている自分が悔しい。「あんたの本好きは好きに入らない。だって何も知らないじゃない」と旅の間言われ続けているような気がしたのだった。

 妄想会議の最中、織絵さんが、悔しいと思えることは仕事になりうると本で読んだと教えてくれた。ということは、本を選ぶということが、わたしの仕事になる可能性があるということだろうか。少し前は逃げ出してしまった本の世界、どんな形でかは分からないがまた戻ってみようか。

(本関係でもうひとつ。行きの車で平野珈琲のじんさんとスタッフのかいくんと本のイベントの話をした。長野市内で本に関するイベントを考えているそうなのだが、それに対するアイデアを出し合う。じんさんから、なにかアイデアないかなぁと聞かれたことがうれしかったし、かいくんも話に加わって企画が深まっていくのが面白かった。本のある空間や本で人がつながることはすごく興味のある部分なので、わたしが長野にいれば喜んで加わったのに・・・と、これも悔しかった。)


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