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通院記録 9月30日


息子は劇症1型糖尿病。
今年18歳になった。
同級生たちは高校3年生。
息子は引きこもり。
生活時間もよくわからない。
なかなか通院もしない。

インスリン注射のおかげで生命を維持していて
リブレという血糖値を常時測る器具を肌に装着しているから
血糖値を見ながら生活している。

リブレはスマホと連動できるらしく
私のスマホとは連動してくれないが
この頃は通院先と連動している。
受診すると医師はそれをプリントアウトして見せてくれる。

でもなかなか通院しない。

「採血がいやだ」とか言っていたこともあるが
通院に限らず毎回決まって言うのが
「準備するのが面倒」ということ。

そんなわけで
なかなか通院しないのだが
この度、リブレが無くなる自覚を持ち
9月21日の予約日を過ぎてからではあるが
9月30日ようやく受診できた。

低血糖が頻繁にあることを担当医から指摘された。
日中の寝ている時間に低血糖が長く続くことが目立つようで
優しい担当医でさえ
「まだ体力あるから生きているけど
無ければ寝たまま死んでいます」と、きっぱり言った。
息子は驚いたかわからないが
私はそれは承知の上なので特段動揺しなかった。

息子は
「低血糖より高血糖にならない方がいいんじゃないですか」と
担当医に訊ねた。
「高血糖は合併症を発症し、生きるのが大変になる。
低血糖は死に繋がる危険性と脳へのダメージが大きい」と応えた。

「まず昼夜逆転を直して、
日中体を動かすと夜眠れるようになるから、
日中外に出るように」などと改めて基本的な生活をすすめた。

息子はうなずいた。

息子はこの担当医を信頼している。
そして今日は興味が湧いているようなので
私は、今まで息子の耳には入れなかった
”移植”の話を切り出してみた。

担当医は
「移植が希望なら隣県の大病院に紹介状を書きます。
移植は手術が必要です。
拒否反応の可能性はあります。
術後まめに通院が必要です」などと続けた。

息子は
「手術はしたくない。
自動で必要な量やタイミングがわかるインスリンができるまで待ちます」とはっきり言った。

私は、息子の考えを知れたので
思い切って切り出してよかった、と思った。

診察室を出てから看護師に声をかけられた。

「まだ昼夜逆転しているの?」と
息子は「日によります」など歯切れ悪く応えていた。
「太陽と一緒に生活しないと臓器に悪い。
ホルモンの分泌が狂う」などど
昔私が言っていたことを言われ
どこか面倒臭そうにしながらも
それを押さえようとしてその場から逃げなかった息子。

看護師は続けて
「低血糖の時はどうしてるの?」と聞いてきた。
息子は
「ごはんとか食べます」と言った。
看護師は
「ごはんよりぶどう糖の方が糖の吸収が早いから
ぶどう糖の方がいい。
噛む力が無いと喉に詰まらせるから
出来れば粉のぶどう糖が良い」などと
熱心に語ってくれた。
息子はその間も
看護師の方に身体を向けて話を聞く姿勢を維持していた。

一通り語った看護師は
「他に何かわからないことある?」と言った。
私は即座に手を上げた。
看護師は笑いながら
「はい、お母さん」と言った。

私は
「お菓子などを好きな時間に好きなだけ食べる、
食事は食べたり、食べなかったり、
食べた分インスリンを打つからいいんだ、
低血糖なるから運動はできない、などと
本人とばぁちゃんは言うけど
私は納得していなくて…。
他の病気を抱えないように
健康的な食事や運動が大切なんじゃないか、と
思っていますが違いますか?」と聞いた。
看護師は
「もちろんそうです」と応えた。

私はその答えに安堵した。
そして、息子の前でその会話ができたことに満足した。

これが9月30日の通院記録。

これを書いていても思ったけど
私は、他人をコントロールしようとしている。

通院しなければならない、
それは身体のために、
その身体で生きていくのがこれ以上しんどくならないように、
人に迷惑をかけないように、
約束を守れる人になるように、と
この期に及んで
まだ私目線の勝手な願いを詰め込んでいる。

そして、次の予約は11月2日。
行けたらいいな、とやっぱり思うのだ。

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