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【感想文】大人になって観た「紅の豚」

先日、「紅の豚」を観た。
こんなに面白い映画だったなんて思わなかった。

これまでの人生で「紅の豚」を観た記憶はある。ただ、どんな話だったのかは全くもって憶えていない。唯一覚えてるシーンといえば、自身の経営するホテルのバーでマダム・ジーナが歌っているところ。

前提として私はジブリ作品が大好きだ。特に好きな作品は「もののけ姫」で、森と人との共存を描いた壮大で美しい自然や神秘的な山の神々たちに心が強く惹かれ、幼い頃から何度も繰り返し観ている。

その他の作品も幼い頃にたくさん観たし、大人になってからも金曜ロードショーで放映される度に何度も何度も繰り返し観た。

それでもやっぱり「紅の豚」だけ記憶がない。

そこでふと、アラサーの今、もう一度「紅の豚」を見ることにした。集中して観るためにスマホはソファから遠くに置いて触れないようにした。




物語は豚人間の飛行艇乗りポルコ・ロッソが空中海賊団から人質の少女たちと金を奪い返すところから始まるのだが、初っ端からなんと面白いことか。

空中海賊団が客船から少女たちを人質として捉える際、「15人全員連れて行くんですか?」という団員の問いに対し、団長が「仲間はずれにしちゃかわいそうだろ」と答えていた場面にクスッと笑ってしまった。悪人なんだか善人なんだか(笑)。また、人質として捉えられた少女たちが怯えるどころか自由に遊び始め、そんな少女たちに「あぶないよー」と子守りに手を焼く空中海賊団の姿も観ていてほっこりしてしまった。

勝手に戦闘系の物語だと思い込んでいたので、初っ端からまさかのほっこり系でびっくり。

人質の自由すぎる女の子たちと子守に手を焼く空中海賊団

物語が進むと私が唯一記憶にあるマダム・ジーナが歌を歌うシーンがでてきた。空中海賊団も飛行艇乗りも皆、マダム・ジーナに恋をしており、彼女が歌う時だけは全員が静かになる。

ホテルの経営者であり、歌手であり、全ての飛行艇乗りを虜にする美貌を持つマダム・ジーナ。そんな彼女が、大人になった私にはとても魅力的な存在のように感じられた。

ホテル経営者であり歌手のマダム・ジーナ

少し話は逸れるがジブリ作品の女性は皆強くてかっこいい。自由で、意思が強くて、自分を持っていて、決して諦めない。大人になってそんなジブリ作品に描かれる女性の強さを感じるようになった。

例えば、幼い頃の私は「もののけ姫」に描かれるエボシが大嫌いだった。山や森を破壊する破壊魔のように見えたからだ。だが、大人になった今、エボシ様は私の憧れとなった。女性でありながらたたら場を築き、そこで暮らす多くの人たちを守るために自ら神々と戦うエボシ様。なんと強く美しい女性だろうか。簡単な言葉ではまとめられないのでエボシ様についてはまた別途noteにまとめようと思う。

私のミューズ、「もののけ姫」のエボシ御前

「紅の豚」にも女性の強さがたくさん描かれている。

前述のマダム・ジーナは経営者であり、歌手でもある一方で、三度の結婚と夫の死を乗り越えながらも強く生きている。なんならまだ次の恋を諦めていないところが逞しい。

アメリカ人飛行艇乗りのカーチスに攻撃されて大破したポルコの飛行艇を修理したのも女性たちだった。当時は第二次世界大戦中とあって女性たちが重要な労働力として描かれていたが、若い女性からおばあちゃんまでたくさんの女性がポルコの飛行機をいそいそと修理していた姿が印象的だった。

ポルコの愛機「SAVOIA」を修理する女性たち

また、そんなポルコの飛行艇の修理設計を任されたのも若い女性のフィオというキャラクターだ。フィオがまるで怖いもの無しかのようにポルコにも空中海賊団にも自分の気持ちや考えを真っ直ぐに伝える姿が印象的だった。誰に対しても真っ直ぐに自分をぶつけられる姿が本当に清々しくてかっこよくて素敵だった。

ポルコの愛機「SAVOIA」の修理設計を担当するフィオ

「紅の豚」にこんなにも強くて魅力的な女性たちが描かれていたなんて、、!!!

物語の終盤ではポルコとアメリカ人飛行艇乗りのカーチスが賞金とフィオをかけて一騎打ちを行うのだが、そのシーンもなんだか平和でクスッと笑ってしまうような場面が多く、ここでもやっぱりほっこりしてしまった。敵であり良いライバルでもある、ポルコとカーチスと空中海賊団のそんな関係性がなんだか見ていて心地が良かった。「ポルコは賞金稼ぎだけど人を殺さない」、そんなポリシーもかっこよかった。

カーチスとポルコの飛行艇での一騎打ちはアクション映画さながらの迫力
最終的にボクシング対決になるカーチスとポルコ

ラストシーンで一騎打ちに勝利したポルコにフィオがキスをすると、ポルコが人間に戻ったようなシーンが描かれている。最後の最後に童話をオマージュしたようなファンタジー要素が盛り込まれている点も印象的だった。


今回鑑賞してみて、過去に鑑賞したときの懐かしい感覚がした一方、新しい作品に出会ったような新鮮さもあった。まさにこれがジブリ作品の魅力だなぁ、と改めて実感した。というか、これが30年以上も前の作品ということにも驚いた。ジブリ作品は本当に色褪せない。

ただの飛行艇乗りの戦闘アニメだと思っていたが、そこに描かれる友情や愛情、内面的な強さが複雑に交じり合いながら渋く描かれていて大好きな作品の一つとなった。そして、大人になればなるほど「紅の豚」が好きになるかもしれない、そんな気もした。

ジブリ作品は見る度に新たな発見や解釈ができるところが魅力的だ。子どもの時と大人になってからは勿論、大人になってからも鑑賞する度に作品に対しての捉え方が変わるというか、受け取り方に深みが出るというか。長年大切に愛用すればするほど味の出るレザーのような。

今回鑑賞した「紅の豚」も観れば観るほど新たな発見や解釈、考えが生まれてくる、そんな作品なのだろう。そう思うと、もう既に未来での鑑賞が楽しみだ。映画では描かれなかったラストシーンの続きの妄想も膨らませたい。

最後に、

人生を通して何度でも楽しめるジブリ作品ってやっぱり最高だ!!!

画像提供元:スタジオジブリ


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