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冬の比叡山延暦寺へ 西塔地域編

東塔地区を一通り歩いたので、そのまま西塔へ向かいます。

西塔地区全体図はこちら。

西塔地区へと向かう道

東塔からは、阿弥陀堂と東塔の間を通り、途中の巡拝受付スタンドでチケットを見せてから、未舗装路を歩きます。時は2月、積雪で足元はかなり不安定なので、登山靴推奨。途中で川を渡る短い橋があるのですが、その上はかなりツルツルで、注意深く進みます。

これは進んでから振り返ったところ。奥に見えるのが巡拝受付。

橋を渡ったところに山王院があります。

山王院

ここは、弁慶が千日間参籠をした堂と伝えられているところで、木造のひっそりとしたお堂でした。その時代は今よりずっと山奥感覚だったはずで、こんなところで千日も、誰ともつながらずに過ごしたわけですから。そりゃ豪傑になるわけです。

山王院からは長い下り階段があり、下から男性が一人ずつ数人登ってきました。

登る人が全員つらそうな階段

その全員が全員、非常に苦しそうにハーハー息切れしながら登ってきます。えっ、そんなに?  というくらい、走り込んでいないのに参加してしまったマラソンみたく、本当に辛さの極致のような表情で。正直、それほど急な階段でもなく、帰路では私ももちろん登りましたが、それほど厳しいわけでもなく・・・偶然そこにいた方は全員、日頃から運動不足の方々だったのでしょうか。そのすれ違う顔のすべてが忘れられない比叡の思ひ出となりました。

雪深い、奥ゆかしい浄土院

西塔地区へ向かう道で、最初にあるのが浄土院です。

荘厳な浄土院

場所としてはまだここは東塔にあたるのだそう。比叡山の境内案内によると、ここは最澄大師の御廟所で、現在でも十二年籠山の僧が生身の大師に使えるごとくに奉仕しているとのこと。
なんというか、本当にお坊さんというのは、屈強な精神力がないとあかんもんだと思い知らされます。私はなんとなく昔から、生活に窮したらお寺へと甘い考えを持つ瞬間が何度もありましたが、到底私のようなグウタラな人には務まりません。そう実感させられる浄土院でもありました。

椿堂で聖徳太子

さらに進むと、道から少し外れたところに椿堂というこじまんりとしたお堂があります。

聖徳太子ゆかりの椿堂

お堂に登るスロープは雪と凍結で難儀でしたが、お堂の横にはその名の由来を示すように椿の木がありました。説明を読むと、なんと延暦寺が創られるよりも前に、ここを訪れた聖徳太子が観音像を安置したのだとか。そしてこの椿の木は、聖徳太子が刺した椿の杖から育ったとのこと。

真ん中が椿の木


実は私、山岸涼子先生の名作漫画「日出処の天子」の愛読者。法隆寺や斑鳩、石上神宮に聖地巡礼したこともある。なので聖徳太子といえば厩戸皇子。まさか比叡山でまで足跡に出会えるとは思わなんだです。偶然推しに遭遇したような感動がありました。

箕淵弁財天からにない堂へ

椿堂を出て元の道に戻り、さらに歩くと左手に箕淵弁財天という小さな神社があります。周りが開けている気持ちの良い神社です。

光さす箕淵弁財天

そして進むと見えてくるのが、にない堂。向かって左が常行堂、右が法華堂で、相似形のお堂が廊下で繋がっています。

にない堂

ここに来る前に東塔地区で見た、東塔と阿弥陀堂のような二連のお堂です。「にない堂」の名前の由来は、弁慶がそのつながり廊下に肩を入れて「になった」ことから来ているそう。弁慶どれほどやねん。ここらへんは、親鸞聖人が修行した地でもあるらしく、本当に何度も言うけどこんな山奥にお寺を作って籠って修行するなんて、その不自由さに自由を感じてしまうほどです。この二つのお堂のあたりは、鈍感な私でも厳粛さを感じ取ってしまう雰囲気がありました。

法華堂側から見たところ

西塔の本堂、釈迦堂とその奥

そして、これまた長い階段を降りるとそこに、西塔の本堂にあたる釈迦堂が聳え立っています。

長い階段、その奥に釈迦堂


西塔の本堂、釈迦堂

なんていうか、その、境内に続く階段が下りなので、客席の最奥から舞台に向かって歩いていく感覚。そして境内が異様に広く、本堂までの距離がかなりあるので、これまた遥々やってきた感に満ち溢れています。ここは延暦寺に現存する建物のなかで最も古いのだそう。確かに他のお堂に比べて、柱などの木の感じに歴史が刻まれているようす。ちなみに東塔のように「塔」はありませんでした西には。しかしこの、奥座敷に鎮座する長老のような釈迦堂の見事さよ。

高いところに鐘楼があり、ここでも鳴らしてみました。やはり良い音。比叡山の鐘はどれも痺れます。

階段を登り切ると鐘楼

釈迦堂の奥の道はぐるっと回れるっぽかったので、ちょっと行ってみましたが、かなり急な山道を登ります。さっきの山王院の階段でヒーヒー言ってた男性諸君には登れまい、とつい思ってしまうほどの急坂を登り切ると、そこにとても立派な相輪橖が、凛とした姿をみせてくれました。

相輪橖

そこから舗装道路をぐるりと周り、再び釈迦堂に戻ってきます。
もうしばらく雰囲気を堪能してから、境内から同じ道を戻ろうと、下ってきた階段を登ると、お寺の方がお掃除をされていました。その姿も風情を感じます。

おそうじ中

次は横川地区も

今回は時間切れで、横川地区までは行きませんでした。シャトルバスがあれば行ったのですが、運休の今時期は西塔から徒歩90分というし、戻ってこなければならないしで、次回のお楽しみにすることとしました。

ケーブル延暦寺駅から琵琶湖


冬の比叡山延暦寺は、京都からの行き方も限られているし、内部もバスが運休しているのでかなり歩く必要があるし、山の中はそれなりに寒く、人もまばらで足元も危ない箇所がありますが、この雪化粧をした山奥の寺院は、他の季節では感じられない格別な雰囲気を味わえます。
途中で何度も雪がちらつきましたが、赤いお堂と白い雪のコントラストがそれは見事でした。ぜひモコモコに厚着をし、山を歩ける靴をはいて、冬の延暦寺をまた訪れるぞと心に誓う1日でした。

比叡山延暦寺

ご覧いただきありがとうごさいます。旅と登山と散歩の記録をコツコツと書き続けていきます。