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やめるという経験

私が、部活動を辞めた時の話をしようと思う。

中学に入学したての私は、わくわくしながら部活は何を頑張ろう?とあれこれ考えた。

小学校を卒業するとき、卒業式のために合唱を沢山練習した。その過程で、合唱に対する魅力を感じる私がいた。私は、周りの友達が入りたいなど誰も言ってない最中、合唱部に飛び込んだ。合唱をしてみたかった。

良い部活だった。人数が少ないからこそ、先輩は歌が上手いし、優しかった。家族のような部活だった。同期も少ないながらに数人いた。

合唱にのめり込んだ私は、学校行事の合唱会も張り切ったし声楽までも自主的に始めた。合唱部の力になりたかった。憧れの先輩のようになりたいと強く意気込んだ。


しかし、私はいつの間にか少しずつ部活から浮いてしまっていた。

休憩時間には、私だけ音楽室でぽつんと座っていることが増えた。

きっかけはよく覚えていない。誰よりも合唱が上達してる自信もあったし、合唱部が好きだったはずなのに。同期たちが遠くではしゃいでるのを見ていた。

なんでこうなっちゃったんだろう。

合唱が好きなのに、部活に行くのは嫌だった。先輩に、休みますと伝える度に、心臓のあたりがぎゅっと痛んだ。申し訳ありません、今日の部活は休ませてください、と。


ある時、1番に尊敬していた先輩から呼ばれた。


最近、元気なさそうだけど大丈夫?


私は、ちょっと浮いちゃって、と笑いながら言った。別になんてことないですよ、と伝えたかった。

先輩はそんな私の様子に、そっと寄り添って抱きしめてくれた。涙が勝手に出てきて困ったな。

自分のことを見ていてくれる存在がいたことを知って、どうしようもない感情が止まらなかった。



結局、その先輩が引退する時に私も退部をした。退部届を書くのは少し勇気が必要だったけど、提出したらなんとも言えないスッキリとした感覚があった。

部活を続けることも大切だけど、やめることだって一つの経験だったかなと思う。部活を最後までやり遂げるだけが、経験だとか糧になるのではないと、思った。

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