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難聴と自閉スペクトラム症(ASD)の共通点

世の中にはいろいろな障害を持つ人がいます。
より理解を広めていくためには障害に関わる人が別の障害を理解していくということも必要と思っています。
その中でもASDと難聴(※1)の間には似た特徴があります。
世間ではあまり語られていない部分ですが、今日はそのことについて触れてみたいと思います。

共通点を知ることで以下のようなメリットがあると考えます。
・難聴と思っていたけどASD、ASDと思っていたけど難聴ということをなくす
・似た問題を抱えているのでお互いに対処方法を学ぶ
・併発している場合に対処を間違えない
・相互理解していける

①呼びかけても反応しない

呼びかけに反応しないというのはASDにありがちな特徴ですが、難聴でも同じことがあります。
ASDの場合は自分の世界に集中していた結果だと思いますが、難聴の場合はそもそも聞こえてないor聞こえていても呼ばれたとはわからなかった、ということになります。
難聴の場合の対応方法は子供の前に回ってもう一度声をかけるというものになります。
ここで気をつけたいのはASDが疑われる場合はまだ様子見の場合も多いと思うのですが、原因が難聴だった場合はすでになるべく早く療育を受けさせる段階ということです。
今は生後6ヶ月から補聴器を付けることを目指していますから、もし新生児聴覚スクリーニング検査を受けていない場合は難聴の可能性も考えるとよいと思います。
早期の療育を受けることで②の問題も改善します。

②発語が遅れる

これも全員ではありませんが、話し始めが遅くなるというのもASDと難聴に共通する特徴です。
発語がない2大原因なんじゃないでしょうか?
ASDは言葉のストックはあるが話すところまで行かないという問題。
難聴はそもそも言葉のストックがたまりにくい問題です。
よく聞くのは3歳になっても発語がない→難聴でした、というものです。
この段階ではどちらにしても早めに療育に繋がることが必要と思います。
一方で話し方には違いがあります。
難聴がある場合、全体的に赤ちゃんぽい喋り方で言葉の間違い(子音が抜ける)が多くなります。
ASDの場合はそういう事はあまりないようです。

③視覚優位がある

ASDは耳からの情報が入りにくく、視覚的なもので示すと良いと言われています。
難聴も耳が聞こえにくいので当たり前っちゃ当たり前なんですが、視覚優位です。
聞こえているけど聞いていないというのと聞こえていないというのは結局同じことなので、対処方法もそのまま流用できます。
通っている園では発達障害のある子のために壁に1日のスケジュールが貼ってありますが、これが難聴児にとっても大変ありがたいです。
お願いする際にはASDの配慮と似ているということを伝えることで、受け入れ側もハードルが下がるのではないかと思います。
ちなみに上のタイマーの写真はASD関係で紹介されていたのを見て知ったのですが、我が家の難聴児も時間がわかりやすいようで気に入っています。

④騒音が苦手

ASDの中には感覚過敏で大きい音や騒がしい環境が苦手な人もいます。
同じというと驚かれるかも知れませんが、難聴も大きい音や騒がしい環境が苦手です。
難聴児も大きい音は大きいと感じますし、うるさい音はうるさいと感じます。(※2)
そして補聴器の特性上、騒音があると聞きたい音が聞き取れなくなります
難聴の方の中には、集中するときに補聴器を外すという人もいますが、ASDの方はそのようなときイヤーマフを使われますよね。
ここもけっこう似ているなぁと思います。
対策としては教室の椅子にテニスボールをはめ込むというのは難聴界隈でよく聞きます。
③の視覚優位もそうですが、この2点はASDと難聴が手を取り合って配慮を求めていける部分かなと思います。

⑤人よりモノを優先する

ASDは物に対する興味が強く、人への関心は薄いという特性があります。
自閉スペクトラム症という言葉通り、自分の世界というのが強くあるんですね。
実は難聴も同じような特徴があります。
難聴の場合、他人に関心はあるのですがやはりコミュニケーションに不安があり、より安定した存在であるモノに頼る傾向があります。
例としては本が好き、一人遊びが好き、などという状態です。
基本的にはそれを認めてくれる環境が一番大事かと思います。
その上で、うまく他人との関わり合いを促していく方法は難聴とASDで少し手法が違うのかなと思います。

⑥複数人での会話が苦手

ASDは1対1の会話は得意ですが4〜5人とかでいろんな話が飛び交うと付いていけない場面があります。
難聴も1対1の会話は静かな環境であれば問題ないですが、人が増えるほど付いていきにくくなります。
ここも非常に似ている部分です。

まとめ:本当に似ていましたね!

こうやってまとめてみると本当に共通点が多かったです。
ASDに良い環境は難聴にも良いので、お互い協力できる部分も多いと思います。
まあ見た目に分かりやすく騒音が少ないというのは誰であってもうれしい状態なんで、なるべく遠慮せずに配慮をお願いしていきたいものですね。
今回は読んで頂きありがとうございました。
相互理解の輪が広がっていき、よりよい社会になるよう願っています。

(※1)軽度・中等度難聴の場合を想定してお話ししています。
(※2)感音声難聴の場合になります

番外編:併発している場合

最後に併発している場合について考えたいと思いますが、こちらはほぼ難聴側の問題です。
なぜなら難聴は1000人に1人の割合であるのに対し、ASDは40人に1人、ASDグレーゾーンまで含めると13人に1人。
つまり『ASDだけだと思ってたら実は難聴もあった』という人はほぼいませんが、その逆は全然あり得るということです。
そしてすでに難聴という障害で療育を受けている上、特徴としても難聴あるあるで済んでしまいますので、併発していた場合早期に気付くのは困難です。
親としてできることはASDの特性を理解してその子育て論を取り入れておくこと。ASDの子育てに関する考え方は定型発達であっても有益なものが多いですから、もう併発していてもしていなくてもどっちでもOKという状態にしてしまおうということです。
そして知っていることで何か問題があった時に、難聴の環境調整をするのか、それともその調整は十分で他の理由なのか考えて行くことができると思います。

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