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感動させる作品ってなんだ?

先日舞台HIGH&LOW THE 戦国を見に行ってきました。
ハイロー好き!宝塚好き!主従関係好き!正義のぶつかり合い好き!な私には大変最高な舞台でした。
今年初現場でしたが、やっぱり舞台はいいですね。

こんにちは、LOCKERROOMのたかぴです。
月日が経つのは早いもので、年が明けてからあっという間にもう3ヶ月。
皆さんもう「初泣き」は済ませましたでしょうか?

嬉しくて泣く、悲しくて泣く、悔しくて泣く…など、「泣く」という体験にもさまざまな種類がありますが、その中でも「感動して泣く」というのは皆さんにとっても身近な体験だと思います。
ですが、改めて考えてみるとちょっと不思議ではありませんか?

基本的に「涙が出る」というアクションには何かしらのきっかけとなる感情があるはず。悲しい、嬉しい、悔しい…とすると、この「感動」というのは一体なんの感情によって動かされているものなんでしょうか?

また世の中には「涙活」という言葉があるように、感動的な作品をあえて鑑賞して、涙を流すによってストレスを発散する体験もあるそうです。映画や舞台など「感動できるぞ!」というパッケージで公開されている作品は特にその体験をさせるモノに該当します。
ということはつまり、不特定多数の人を「感動」という状態にすることが理論上何かしらの手法で可能なはずなんですよね…。なんなんだ感動というのは…。

そんな「感動するってどういうこと?」というのをテーマに今回は書いていけたらと思っています。
感動的な作品!作るぞ!


感動を構造化してみる

「感動」は辞書的な意味合いだと「心を動かされること」だそうですが、これでもやっぱりよくわからない。どういう状態になったら心が動かされたと判断されるんだ…。

そんな時に出会ったサイトさんがこちら。

参考にさせていただいたサイト:https://www.kandosoken.com/

感動想像研究所さんによると感動というのは「前提条件がある」上でユーザーの「驚き」から派生した「危険を伴わない」場合に発現する状態だそうです。
感動は驚きという感情が起源とのこと。なるほど確かに…。
掲載させていただいたサイトをもとに、自論も交えながらもう少し細かく感動について考えていきます。

1. 「前提条件がある」

「前提条件がある」というのは「共通認識としての前提知識があること」や「近い経験をしたことがある」という受け取り側の事象に関しての解像度を高める行為に値します。
ユーザーに感動させるためには「驚き」に向かうための下準備が最重要。
ユーザーが驚くためには「前提知識がある上での裏切りや期待値を超える」必要があります。簡単にいうと「こうなるだろうな〜」が「えっそうなるの!?」となるイメージ。
この「こうなるだろうな〜」を作ることが実はとても大事。いわゆる前振りですね。

物語における前振りがうまくいかないと、キャラクターの心の動きに自身の感情を重ねることができず、せっかくの「驚き」ポイントでなんだか冷めた目を向けてしまうのです。心当たりありませんかね…感動的なシーンでなんだかスン…としてしまった瞬間を…。

漫画で考えると物語の向かうゴールや主人公の目的、どうしてその目的を目指すことになったのかという経緯や動機、そしてそのゴールまでの過程や葛藤を1つ1つ描くことが前振りとなり、読者が作品に対しての解像度を高めることにつながっていきます。そして物語のピークである「驚き」へとつながっていくと…。
起承転結の「起・承」であり、ブレイクスナイダービートシートの第2ターニングポイントくらいまでかなという印象です、作品によってはもう少し前後するかもですが…。

この前振りをいかに丁寧にするかがとても重要になってくるのですが、実は、前振りを簡単に終わらせるシンプルな方法もあります。
それは受け取り側の大半が「主人公の抱く感情・状況を一度経験したことがある」というテーマを物語の軸として設定することです。
例えば「大きな挫折」「挑戦することへの恐怖」「夢を目指す瞬間」「告白前のドキドキ感」、具体的なもので言えば「母と子供」「結婚式」「ペットとの別れ」など。。全員が同じような経験をしているわけではないと思いますが、似たような状況を経験したことがある、だけでも受け取り側は自分の中の引き出しからその時の感情を引っ張り出してくれるんです。
占いでいうところのバーナム効果ですね。
こちらも非常に効果的な前振りになるかと思います。まぁこれも「なんか主人公が抱いてた感情自分と違うな…」と思われた瞬間スン…となるのでめちゃくちゃ難しいんですが!


2. 「驚き」

丁寧な前振りが完了した後、読者を感動へと感情を切り替えるための「驚き」の爆薬を仕込みます。
これは前述でも載せましたが「読者の想定や期待をいい意味で裏切る」ポイントになります。

今思い返してみると弊社で「スパイクポイント」と呼んでいるイベントと近いのではと思いました。「スパイクポイント」とはこれまでの前提を覆し、「この作品は一味違うぞ!」と思わせる出来事のことと定義しています。
進撃の巨人で行くと「主人公以外にも巨人になれる人間がいることを提示した女型の巨人編」、NARUTOで行くと「主人公チーム以外にも実は同期の下忍がおり、彼らと争っていく中忍試験編」などなど…。
この驚きのポイントがうまく作動すると読者は一気に作品に引き込まれていきます。世界観に没頭し、主人公に感情移入し、次がどうなるか気になって仕方がない…!という状況。ここが前述の前振りとうまく噛み合ってくれると、理論上…泣ける…はず…!!という感じですね。


3. 「ノイズを減らす」

理論上は以上で終わりなのですが、私は漫画制作においてはもう一つ重要な事項があると思っています。それは「ノイズを減らす」ことです。
言い方を変えると世界観に入り込む際にユーザーが引っかかる要素を1つでも減らすことが没入感を高めることにつながります。
映画館はなぜ暗いのか、オリエンタルランドにはなぜ電信柱がないのか、考えたことはありますか?
環境的な調整を行うことでユーザーが世界観にスムーズに入り込めるように仕組まれているんです。

漫画作りでも基本的に同じです。この中世の時代なのにキャラはスマホを使うのか…?一人暮らしのはずなのにベッドがこんなに大きくていいのか…?季節が夏のはずなのに服装が長袖でいいのか…?などなど、細かい要素の辻褄を合わせていくことが作品の没入感を増し、読者が作品にのめり込めた結果…上記で述べた「前提条件」や「驚き」が効果を発揮するようになります。

お気づきの方もいらっしゃるでしょう…。そうです、漫画は何よりも書き手の知識量と日頃の観察力で成り立つ世界なのです!服の構造や物の大きさ、時代背景の解像度や職業の理解度、そしてもちろんキャラクター自身の理解を深める…知っておく・考える必要があることは山のようにあります。そしてそれを自身の絵で表現すると…。
考えてみるとそれはそうなんですよね、漫画というのは世界を作っているので作家さんはいわば創造主になります。草木の一つまで世界観に忠実に生み出さないといけません…なんとも…。

と言いつつ、それを作家さん自身で全てを賄い切るのは難しい話。だからこそ編集者という立場が必要なんだとも思っています。引き出しは一つよりも二つの方が、見える幅も広がりますからね。

この立場でいると編集業を生業とされている方とお話しする機会が多々あるのですが、皆さんやはり引き出しがとても豊富な方が多いなという印象です。
そして我々も日夜引き出しに物を詰める作業を行っており…そうすることで少しでも作家さんのサポートやノイズに気づくことができるとも思っているので…。日々勉強です。

感動までの道のりは険しく長いですね…。



いかがでしたでしょうか。
感動とは緻密に作られた世界観の上に成り立つもの。
そして漫画は奥深く、なんとも難しく…そしてだからこそとても美しく感じるコンテンツなのだなと改めて感じました。

ではでは。
来月もまた舞台の予定が入ってにっこりです。
たくさん泣くぞ〜〜!!

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