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生存競争

雷管の弾ける音が僕の頭の中に響いた。どこがゴールかは知らされずとも何故か理解している。周りの同族には負けられない。負けたら自分の生まれてきた意味が見いだせない。夥しい数の同胞が我先にとゴールを目指している。僕は負けじと一目散に直線を駆け抜ける。コーナーを曲がった先がゴールだ。僕は何かに吸い寄せられるようにコーナーを曲がった。その視界に移ったのは母性の象徴としか言いようのない球体である。僕は一着だった。これだけの母性を感じさせる球体だ、僕の頑張りを認めてくれることだろう。僕は悠久にも感ぜられるほどの時間、その球体の中で休息をとった。が、そんな日々も突然に終わりを告げた。なにか急に強い力で押し出されるのだ。次第に光が感じられるようになってきた。僕は一刻も早く休みたくてその光を目指して突き進んだ。
「おめでとうございます。元気な男の子ですよ。」
僕はこれまで感じたこともないような母性を持つ生物の腕に抱かれた。

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