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スタイリングチェアの上の僕

 カランカラン。僕の入店を告げる鈴の音が店内に響いた。

「いらっしゃいませー!」

店内に入ると眩しい。ひたすら眩しい。店員さんも他の客も皆キラキラしていて僕は自ら入ったものの、なんだかいたたまれない気持ちになった。誘導されるがままに僕は椅子に着いた。いつもならそんなことは考えないのだが、僕はその日に限ってふとこんなことを考えた。「美容師さんを怒らせたらどうなるのだろう」と。

 美容師さんは仕事として人の髪を切り、愛想よく話しかけてくれてこそいるものの、こちらの態度次第では気分を損ね、客の望まない髪型にすることも可能なのだ。陰気な僕は絶対に向いていない職業だろう。そんなことを考えている僕だから、あえて美容師さんの機嫌を損ねるようなことをする勇気は出ず、いつものようにこちらも愛想よく返すのだ。

誰か自分の髪を犠牲にする勇気のある人には是非とも今僕が考えていることを実験してみてほしいなと、そんなことを考える9月の中頃なのであった。

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