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「海辺のカフカ」村上春樹



「君はこれから世界でいちばんタフな15歳の少年になる」


1つの本に心を揺さぶられてしまうことがある。

「もうこの世界から出たくない」

いつまでも見ていたい夢のように。

自分の心を離さない物語がある。

主人公と同じように家を出て、旅に出て、

読み終わった時に、「ただいま」と
帰ってきた感覚に陥った。

夢の中へ、旅をする本。

読む前よりタフになった自分が、現実にいる。

自分の体を預けるようにこの物語から離れられない。

私は15歳の男の子ではない。

しかし、なぜか、この本に自分がいるのだ。

私の心がいるのだ。それを掴んで離さない。

どうして、「私の気持ちがわかるんだ」

主人公は田村カフカ。15歳の男の子。

突然父親の元を離れて、家出をした男の子。

それと同時に

猫と話せる老人、ナカタさんの物語が
進んでいく。


発売は2002年。
今から約20年前の物語。

物語の中には、本や、芸術作品もたくさん紹介されている。


バートン版「千夜一夜物語」

カフカ「変身」「審判」「城」「流刑地にて」


字を読むことができない。

「普通ではない」ナカタさん。

しかし、猫とおしゃべりすることができるナカタさん。

いつも謙虚で、強く生きるこのナカタさんに
とにかく勇気をもらった。

ナカタさんに少し自分が似ているような気がして、
周りの人たちに支えられナカタさんが成長していく姿を見ると、
自分自身も変化していく。そんな気がする。

運転手は笑った。「あんたちょっと変わってるな」
「はい。ときどきそう言われることがあります」
「俺は変わった人間って、好きだよ」と運転手は言った。
「こんな世の中で普通の顔をして、まともに生きていけるようなやつはかえって信用できねえもんな」

「おじさんも字が読めねえってのはきっと不便だろうけど、つらいこともあるだろうけど、それがすべてじゃないんだ。たとえ字が読めなくたって、おじさんにはおじさんにしかできないことがある。そっちの方を見なくちゃいけない」


自分の欠点ばかり見てしまうけど、
自分にしかできないことだって、きっとあるはずなんだ。

そっちを見ていればいいじゃないか。

と自分に言い聞かすように。

私は
不完全なものに惹かれる。
完璧じゃない物語や、完璧じゃない人。

この物語は、読めば読むほど、
好きになって、惹かれていく。
どこにこんなにも惹かれるんだろう。

私がこの作品を、見つけたのか。
それとも、この作品に見つけられたのか。
どっちだろう。

村上春樹さんの作品には、
よく猫が登場する。

私も猫が大好きだ。

そんな猫たちが喋りだすんだから、
猫好きにはたまらない。

本を読めることが幸せだ。
こんなにも素晴らしいことがあるのだろうか。


私の心を揺さぶった物語の話。








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