はじめてのクライストチャーチ#2
第2話 ハプニング(その2)からの出会い
前回のあらすじ
歩いて、食べて、吐いて…そして寝る、普段よりじぶんを解放していた。
クライストチャーチ2日目、今日はテカポに星空を見に行く日。私は日本からクライストチャーチ発テカポ行きのバスチケットを予約・購入していた。
11月9日 7時45分
ホステルを出て、バスターミナルへ。前日に Inter City の待合室をちらっと見た記憶があり、そこに行けばテカポ行きのバスが来るのではないか、そう思った。バスターミナルまでは歩いて15分ぐらい。道路のあちらこちらが工事中で、道幅が狭かったり、片側が通行止めだったりと歩きにくく、思ったより時間がかかった。
ふぅー。バスの予定時刻は8時半。予定通りに来るか来るかとドキドキしながら待っていた。
なんかおかしい。バスの行き先表示が見知らぬ場所ばかり。10分前になってもテカポ行きのバスが来ない。それはもしや…?
受付のスタッフに恐る恐る、もちろん英語で聞いてみた。すると
停留所はここではありません。テカポ行きは1日1本しか出ません。
無愛想に英語で返ってきた。
1日1本!?
まずいと思い、カンタベリー博物館方面に急ぐが、こういう時、余計に道に迷う。「うわっ!泊まったホステルから歩いて5分ぐらいのところだったのに!なんで逆方向に行ってしまったの?!」ってすごく自分を責めた。
向かっている途中で8時半を過ぎた。タイムアップ。バスはたった一人の私なんて待ってくれない。バス停に行くことを諦めた。
ぐぅぅーーーー
お腹が鳴った。そういえば朝から何も口にしていない。とりあえずバスターミナルに戻った。周囲には個人で営んでいるカフェやファストフード店がぽつぽつ並んでいた。個人のカフェはひとりだと入りにくいな…と思いつつ、ガラガラスーツケースを引っ張って歩いていると、パイ生地のいい匂いがしてきた。
ここなら良さそう!
窓が全面で店内も明るい。出社前だろうか、数人が各々コーヒーを飲んだり食べたりしている。早速、窓際のカウンター席にスーツケースで席をとってショーケースの前で注文した。冷たい感じの年配女性だったから何か聞き取りづらかったのかなと心配したが、ホットチョコレートドリンクとほうれん草のパイ、それとアップルシナモンマフィンを受け取った。
▲紙袋の中にマフィンが入っている
私はしくじってしまった。もう『しくじり先生』を笑って観られなくなった。キッシュのようなパイでお腹は満たされたが、私の心は虚しかった。
それから、クライストチャーチ大聖堂を拝み、トラムに乗って市内を一周した。予定通りいかなかったことに悔しいが、「勘違い」はいい機会をくれた。
▲ トラムの中から見えた大聖堂
いや、待てよ。バスは行ってしまったが、テカポのホテルと星空ツアーはまだ予約のままだ。別の方法で現地に向かえば間に合うのではないか。でも、どうやって?その時、i-Site という観光案内所の前を通りがかった。
ここに相談してみようか…
中に入ると近くに女性スタッフがいたので、「すみません、テカポまで行きたいのですが」と声をかけた。
あなた、日本人?日本語話せる人がいるからちょっと待ってて
奥から背丈の大きいおじさん、チャーリーが出てきた。ハローと自己紹介は英語で、これまでの経緯は英語と日本語を交ぜて話した。
タクシーで使って行けるかな?
私が半ば諦めて言うと、チャーリーは「東京と違って高いよ!」と言い返した。「だったら、チャーター車を呼ぼう」とチャーター車の会社に電話をかけてくれた。4社のうち1社が NZ$600 (日本円で約4万6千円)なら引き受けると出たが、少し高いらしい。全滅は避けたいので保留しつつ、5社目に電話をかけてくれた。
その会社もすぐにOKは出なかった。そりゃ、「今すぐテカポまで行ってほしい」なんてニュージーランドの人でさえ無茶なのだ。ビジネスだとなおさら割りに合わない。
20〜30分後、5社目から折り返しの電話がかかってきた。引き受けできるそう。値段もNZ$441 (日本円で約3万4千円)でいい具合。ここに決めた。その場で料金を支払い、約束の時間に建物の前のベンチで待っているよう言われた。
ちなみに、その i-Site では私のほかにもうひとり日本人女性がいて、彼女もチャーリーに助けてもらっていた。
まだ時間があるのでスーツケースを預かってもらい、私は周辺をブラブラと歩いた。
▲ランチ。サーモン、稲荷、カリフォルニアロールとエビフライ、海藻も
13時
ドキドキしながらベンチで待っていると、ドライバーのマイクが車でやって来た。一緒に待っててくれたチャーリーにお礼と別れの挨拶をしてチャーターした車でテカポに向かう。
出発して5分、マイクはガソリンスタンドとコンビニに立ち寄った。急な依頼でごはんを食べられなかったらしく、チョコバーを買って食べていた。(すまん!私のせい)
それから約3時間、マイクはひたすら運転してくれた。最初の30分ほど、私は軽い自己紹介とテカポに行く理由みたいなことを話した。マイクも昨日テカポに雪が降ったことや友人と何回か行ったことなどを話してくれた。街を抜けて一面草原が続くと、私はうとうと寝てしまった。
目を覚ましてもまだ一面草原。高低差のある道路をくだったり、丘の上にいる羊の群れに感動したり長いドライブを楽しませてくれた。
15時50分
テカポに到着。マイクは私のスーツケースを運び、ペッパーズブルーウォーターリゾートまで見送ってくれた。
Thank you
昨日まで知らなかった人たちにお世話になってここまで来れた。本当はサンキューだけじゃ足りない。けれど私は精一杯のお礼を言った。
ペッパーズブルーウォーターリゾートは日本語対応のスタッフが駐在しており、チェックイン手続きから朝食の案内、星空ツアーの集合場所まで答えてくれた。
部屋はロッジタイプ(一戸建てのようなつくり)。ベッドとバスルームが1階、リビング&キッチンが2階にある。
▲クイーンサイズのベッド ▼フライパンや包丁、お皿などひと通り揃っている
1階と2階、そして窓からの絶景を独り占めできるなんて贅沢すぎる。しばらくの間、落ち着かなかった。キッチンの隅にコーヒーメーカーを見つけるとカップを取り出して淹れた。
▲朝買ったアップルシナモンマフィンを添えておやつタイム
WI-FIが通るのでTwitterを見たり、インスタに投稿したりと楽しんでいるうちに部屋の中が暗くなった。もう夕食の時間だ。食べてすぐにツアーに出れるよう支度をして部屋を出た。
レセプションまで向かう道に灯りがほとんどなく暗かった。さすが、星空保護に努めている証だ。
チェックインカウンターの奥にレストランがあった。19時台、すでに賑わっていた。
▲鴨肉のロースト(手前)と地元産の白ワイン、アジアングリーン(奥)
頼んだ後にこれからツアーに参加するんだと気づいた。激しいアクティビティではないが、アルコールを含んだ状態で大丈夫なのか?
21時10分
お会計を済まし、ツアーの集合場所へ。もう2〜3組の日本人が集まっていた。ガイドスタッフの方もやって来て予定時刻の21時30分を前に参加者全員が揃い、出発した。さすが日本人!と感心した。
今回、私は Earth&Sky Stargazing の日本語ツアーに申し込んだ。他に英語や中国語でツアーが行われる。季節やその日の気候によるので以下、⑴〜⑻のとおりにいかないかもしれない。
⑴ Earth&Sky Stargazingの事務所内で注意事項などをレクチャー(日本語)
⑵ 無料貸し出しの防寒ジャケットを羽織りバスで観測地へ向かう(バスの中でもテカポについての話や質問など)
⑶ バスから降りてマウントジョン展望台へ向かう(歩きながら肉眼で星を観る)
⑷ 説明を聞きながら巨大な望遠鏡で星を観る
⑸ いくつか望遠鏡を回る
⑹ 頂上にて説明を聞きながら全員で星を観察(+一眼レフカメラを持っている人はプロの写真家にお願いして星空を撮ってもらえる)
⑺ 参加者全員の記念写真+ホットチョコレートドリンクをいただく
⑻ 再びバスに乗って下山、事務所に着いてから解散
ツアー後、私は三脚を担いで星空の写真を撮りに出掛けた。目指すは善き羊飼いの教会。ガイドブックに載るような写真を撮ってみたかった。
ここ、どこ?
テカポの周辺は街灯がないためどこを歩いているかわからず、教会までたどり着けなかった。それじゃ、ホテル周辺でと思ったが、逆に星が写らず真っ暗な写真ばかりになってしまった。(私の知識不足や操作に問題がある。)
0時30分
身体が冷えてきて、私は諦めて部屋に戻った。4日前に買った三脚とミラーレスカメラが無駄だった。ぬるくて浅い湯船に浸かりながら後悔した。白い一眼レフを買えばよかったと。
3日目につづく
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