見出し画像

何のためにペルソナをつくるのか - 4つの使い分け

「ペルソナは一人に絞るべきか?」「作ったものの活用しきれていない」「私のプロダクトのペルソナは53万人います」といったお話をよく聞きます。

ペルソナの書き方は世の中にたくさんありますが、それをプロダクトづくりの文脈でいつどう使うのかというお話が無いように思い、私が思うペルソナ活用についてまとめます。

プロダクトの解像度を上げる

「いつどのようにペルソナを使うのか」の話をする前に、プロダクトを解像度を上げて捉えたいです。私は下図のように、プロダクトをCore/Why/Whatと抽象度別に3つの階層に分割しています。

画像5

Coreはそのプロダクトで目指すべき世界観、Whyはなぜそのプロダクトをつくるのか(どんなユーザーをどう幸せにしたいか)、そしてWhatがその手段となるUIやUXです。

詳細は別noteがあるのでご興味持っていただいた方はこちらへ。

 プロダクトのCoreを支えるペルソナ

Core、即ち、プロダクトで目指すべき世界観となるビジョン・ミッションを考えるときにつくるペルソナは、普通の、教科書通りな、検索したら出てくるペルソナです。

スクリーンショット 2020-08-27 11.18.21

プロダクトのビジョンは、「誰を」「どんな状態にしたいか」に分割できます。そして、1つのビジョンを達成できる「誰を」「どんな状態にしたいか」のペアは複数あるでしょう。以下、簡単な例です。

スクリーンショット 2020-08-27 11.28.57

ここでは、例として「コロナで外に出ることを控えているOL」が「コロナリスクが低い状態で美味しいコーヒーを飲むことができる」というペアをとりあげましょう。

まず、脳内で「誰」にあたる「コロナで外に出ることを控えているOL」のことをありありと想像し、その人物を脳内で生活させて、どんな刺激を与えれば「どんな状態にしたいか」にあたる「コロナリスクが低い状態で美味しいコーヒーを飲むことができる」を満たすことができるのかをシミュレーションします。

そして、ありありと想像しようとすると、このOLのことをもっと知りたくなります。外に出ることを控えているとはいえ、通勤はしているのだろうか。買い物はどうしているんだろう。誰と暮らしているのか。そのため、このCoreでつくるペルソナではしっかりとした属性情報(年齢、性別、家族構成など)が必要になってきます。そして、この属性情報は可能であれば実際のユーザーの定量的な情報を用いて決めていくとよいでしょう。

補足ですが、「ビジョンから検討をはじめる」というと「新規事業のときにだけ利用しますか?」と質問されることがあります。ソフトウェアプロダクトに関して、その答えはNOです。新しい機能を追加するときに、必ずその機能(What)がCoreやWhyと整合が取れていること、どんな形でCoreとWhyを満たすのかを考えることで、プロダクトが一気通貫します。

プロダクトのWhyを支えるペルソナ(セグメント)

プロダクトのCoreを検討したあとは、Whyとなる「どんなユーザーのどんな課題を解決するためにプロダクトをつくるのか」を検討しましょう。

プロダクトのCoreを考えているときはペルソナは一人でも良かったのですが、プロダクトをWhy、Whatへどんどん具体的なものに落とし込んでいくにつれて、「じゃあそのペルソナは何人いるのか?」つまり、市場規模はどれくらいあるのかという当然の疑問が生まれてきます。

そのため、このWhyの階層で考えるユーザー像はCoreの時に考えたような属性情報が詳細に定義されているものではなく、「うちのプロダクトのユーザーはこういう人である」といったことが伝わるユーザーの特徴を定義します。そして、この特徴を導き出してくれるのがCoreのペルソナです。

具体的には、今回書いているこのnoteのWhyなユーザー像を以下のように設定しています。

🎨 このnoteの想定読者 🎨
1. 私のSNSのフォロワーで、ペルソナを作ったことがあるがうまく作ることができなかった
2. 私のことを知らなくて、ペルソナに課題感を感じている
3. 私のSNSのフォロワーで、ペルソナを理解した上で私の解釈に興味がある
4. 私のSNSのフォロワーでペルソナを知らない

ユーザーの特徴となっているのは「私のことを知ってるか?」と「ペルソナに課題をどれくらい感じているか」の2点です。こうして1-3をターゲットとすると想定するユーザーの規模がわかります。

また、例えば、この記事は「そんなにバズらないけれど、私に質問してくださるような方のお役に立てれば!」という気持ちで書いておりますので、私が日常的に使っているCore、Why、Whatという言葉の説明はさっぱりと終わらせてしまいました。というような意志決定ができます。

プロダクトをつくるときも、機能実装の優先順位を考える時にその機能が誰のために必要なのかを検討することができるようになります。市場全体の中でどんな特徴を持ったユーザーへの機能であるのか、そしてその特徴の組み合わせの優先度をプロダクトのWhyとして明示しておくとよいでしょう。

なお、一般的にはこの特徴の組み合わせによるユーザー像はペルソナではなく、セグメントと呼ばれます。しかしながら、ペルソナの事例をお伺いすると実際にはこのような成果物を活用されていて、かつとても役立てられている事例を多くお伺いしましたので、これもペルソナ活用の1つとして紹介させていただきました。私もよく使います!

プロダクトのWhatを支えるペルソナと、セグメント

Core、Whyを検討をして、最後に実際のユーザの目に触れるUX/UIなどを検討するのがWhatです。実際のプロダクトのUX/UIを考えるとき、どんな印象を与えるプロダクトにするのか、ユーザーはどこでプロダクトと接点を持つのかを検討するためにもペルソナが必要になります。

ここまで、Coreで作ったペルソナをつかって、「どんな状態にしたいか」までのおおまかなUXを頭の中で構想して、プロダクトの全体像に輪郭を与えました。そして、そのプロダクトが対象とするセグメントをWhyで定義しました。

多くの「ペルソナが増えていってしまうんです...」という問題を抱えている方は、このWhyで作ったセグメントの中に居るユーザーを思い当たる限りすべてペルソナ化しようとされている印象です。

スクリーンショット 2020-08-27 12.37.19

そのため、すべてをペルソナに頼り切らずに、セグメントとペルソナを切り分けて作成します。つまり、「スタイリッシュな男女に使ってほしい」と考える時に、女性と男性の二人のペルソナをつくるのではなく、範囲はセグメントで表しましょう。そして、「スタイリッシュなUI」を導く項目はペルソナの方で表すと良いと思います。

スクリーンショット 2020-08-27 12.44.12

プロダクトのWhatを考えるためのペルソナは「この機能をこのペルソナが使っている状態が想像できるか?」というチェックリストのように使われることが多いです。Coreで作ったペルソナのように脳内で生活をシミュレーションするほどではないので、プロダクトに直接関係しないような属性情報まで作り込むことは必要ないでしょう。

そして、基本的にWhatのペルソナは1プロダクト多くて5人くらいが限度です。そして、Whyで優先度をつけた特徴の組み合わせを持つユーザーが各一人いると分かりやすいです。ペルソナにも優先度をつけて、一番のペルソナはプライマリーペルソナとして大事にしてあげましょう。
※ ECサイトでの出品者と購入者など、別の役割を持つユーザーが居る場合などは除きます

Core、Why、Whatのペルソナとセグメントのサマリ

用法用量を守って、目的に応じた粒度でユーザーと向き合って行くことが重要だと思います。Coreのペルソナ、Whyのセグメント、Whatのペルソナに関連があることが一番重要です。Coreのペルソナでこんな機能があったら良いのでは?を考えて、Whyのセグメントでユーザー規模を見積もってやるかやらないかの意志決定をして、WhatのペルソナでUI/UXを作り、チェックします。

このように、Core、Why、Whatでそれぞれなぜペルソナを作るのかを考えて、ネットで拾ってきたペルソナのテンプレートをただ埋めるのが良いのか、そのペルソナの年収が350万円なのか500万円なのかを議論する必要があるのかから考えてみましょう。

スクリーンショット 2020-08-27 12.53.20


[おまけ] 一番基本の、チームを支えるペルソナ

もし、チームに「私たちのプロダクトのユーザーはどんな人でしょう?」と質問したときの答えが千差万別になってしまう場合には、まずはチームの共通言語をつくることだけを目指してペルソナを作ることからはじめると良いでしょう。なぜなら、ペルソナはそれっぽい成果物ができてしまうこと、そして可読性が高いことから強い威力を秘めており、いきなりレベルが高いペルソナ活用にチャレンジするとやけどをします。

💀💀💀 やけどの例 💀💀💀
・ペルソナを作ったが実際のユーザーとその人物像が乖離しており、結果的にユーザーが離れてしまう
・営業部署と開発部署で想定するペルソナが全く異なることが判明し、統一の議論に半年かかる

ペルソナは以下のようにざっくりしていても十分効果を発揮します。チームのメンバー全員が「ユーザー」と言われたときにぼんやり思い浮かべる「ユーザー像」が統一されていればまずは十分です。

スクリーンショット 2020-08-19 2.14.11

このときのペルソナは複数人いても構いません。しかし、チームが何も見なくても全員を思い出せるくらいの人数が上限です。可能であればそのペルソナに優先度をつけておくとよいでしょう。チームの中で、「その機能って認識泡瀬子さん使わなくない?」といった会話が自然とできるようになるといいとおもいます!



以上です。

ここ一ヶ月ほど、色々な方を「ペルソナをどうやって使っていますか?」と質問攻めにさせていただきました。ご協力いただいた方に感謝を申し上げます。ありがとうございます。

なお、私はフィードバックをたくさんいただけると喜ぶタイプでして、全然ダメ!でも何でもご意見をいただけるとありがたいです。ペルソナの議論に付き合ってくださる方、私とzoomしてください!

最後までお読みいただいてありがとうございました💛

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?