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プログレの深淵を覗く:トリガリング・ミスのマスターピース、究極のオーケストレーション、繊細かつ耽美なアコースティック、緻密な技巧と深淵の音楽、真夏に送る涼感、新世紀のプログレッシブ・ロックの創造性

■A Triggering Myth / Between Cages
■収録曲:1. Habile(4:27) 2. Deftly Dodging(5:18) 3. Squdge(10:11) 4. Il Voce(6:13) 5. Midiots, Vidiots, and the Digitally Delayed(3:27) 6. Between Cages(i: The Moment ii: Rattling Our Cages iii: Unencumbered iv: Fears Spent Chasing v: Over and Under vi: Badgered vii: Rattling Our Rages)(21:51)
■パーソネル:Tim Drumheller(key,programming) Rick Eddy(key,g,titles,poetry) Moe Vfushateel(dr) James Newton(per) John McNamara(g on 4) Mark Cella(dr on 4)
■カバー・アート:Michael Bennett
■リリース:1995年

A Triggering Myth の3rdアルバムです。レーザーズエッジ盤にライナーをつけてマーキーが1995年に国内発売したものです。かなり気合の入ったタイトルにしましたが、それくらい激推しです!


思い出など

当時、この完成度にびっくりしまして、ネットで色々と調べてみました。CDの解説に素性不明と書かれていたのですが、ちゃんと当時から手作り感満載のオフィシャルページがあり、さらに、そこに、feel free to corespondって書かれていました。

そこで、何のためらいもなく、メールで2ndアルバムがどうしても手に入らないとRick本人に聞いてみました。すると親切にcuneiformなどのオンラインストアを紹介してくれたのですがやはりダメ。再度、見つからないとメールすると、自宅のストックを直接売ってくれました。なんて親切。ネット黎明期。いい時代でしたね。さて、そんな、究極、激推しのアルバムです。チェンバー風味の無機的で冷たい音。こんな曲を宅録で作っていたなんて、なんてオタクな人たちだったんでしょうね。

バンドの沿革:A Triggering Mythの歩み

A Triggering Mythは、アメリカのプログレッシブ・ロックバンドで、特に1995年にリリースされた3rdアルバム「Between Cages」で知られています。このバンドは、Rick EddyとTim Drumhellerの二人によるマルチプレイヤー・デュオとして結成されました。

リック・エディは、10代の頃にトランペットを学び、大学でギターとピアノを専攻しました。彼は15歳から20代半ばまでロックバンドで演奏し、ヘンリー・カウなどの影響を受けました。彼の音楽への情熱はビートルズから始まり、70年代のプログレッシブ・ロック、特にイタリアのバンドに強く影響を受けました。その後、バルトークなど20世紀初頭のクラシック音楽やジャズにも傾倒しました。

一方のティム・ドラムヘラーは、8年間独学でピアノを学び、様々なロックバンドで演奏した後、ジャズやフュージョンに没頭しました。彼はまた、ユニヴェル・ゼロやキング・クリムゾンのようなバンドからも強い影響を受けました。

バンドの始まりは、1983年にリックがリッチモンドに住んでいた時に遡ります。当時、リッチモンドには小規模ながらジャズシーンは存在していましたが、プログレッシブ・ロックのシーンはほとんどありませんでした。リックは、地元のレコードショップに置かれたミュージシャン用の掲示板に「プログレッシブ・インストルメンタル・ミュージックに興味のある者募集」という投稿をしました。この投稿を見たティムのルームメイトからの連絡をきっかけに、二人は出会い、共に音楽を作り始めました。

トリガリング・ミスというバンド名はリックによって命名されました。彼の説明によると、バンド名は「社会的迷信を引き起こすもの」という意味合いを含んでおり、彼の哲学や精神学、事物の実存や現象に対する強い興味を反映しています。これは、彼が追求している「究極の真実とは何か」という問いに対する私的な表現だったようです。

彼らの音楽は、リックとティムの豊かな音楽的バックグラウンドが融合し、独特のスタイルを形成しています。彼らは、プログレッシブ・ロックの枠組みの中で、クラシック、ジャズ、実験的な音楽などを取り入れて、独自の音楽世界を築き上げました。それは、彼らのアルバム作品、特に「Between Cages」においても明確に表れています。

以上が、A Triggering Mythというバンドの沿革についての詳述です。これは、このアルバムが出た当時にオフィシャルページに書かれていた内容です。

アルバムの特徴:「Between Cages」の世界

1995年にリリースされた「Between Cages」は、A Triggering Mythの3枚目のアルバムであり、彼らの音楽的成熟を示す作品です。このアルバムは、Rick EddyとTim Drumhellerのデュオによる独特の音楽性が際立っています。

彼らの創り出す音は、どちらかといえばユニベル・ゼロなどのチェンバー系の音に近く、線は細いけれども、深淵に引きずり込むような重さを伴っています。しかも、これに加えこのアルバムの各曲はメロディックマイナーなどちょっと怪しげに響く音階なども巧みに取り混ぜつつ、更に変拍子も多用して技巧的に作曲されています。加えて、キメのフレーズが随所に配されていまして、ライト・フュージョン的若しくはイージーリスニング的にふわふわしたところが一切なく「プログレッシブ・ロックがロックであること」を再認識させてくれるものとなっています。

楽曲の傾向としては前作までの延長線上にあるものの、更に完成度が増している。・・・というか、彼らの音楽は、このアルバムにおいて、ひとまず完成したのではないかと思えます。

実にクール且つ自然な音。彼らの完璧なオーケストレーションと完璧な演奏を聴くと、真夏であっても涼しげな感触に見舞われます。実に美しい一押しのトリガリング・ミスの傑作です。

収録曲

「Between Cages」は、緻密で感性豊かな楽曲群で構成されています。

  1. Habile (4:27):このオープニングトラックは、アルバムのトーンを設定します。繊細なピアノの旋律と、リズミカルな打楽器が融合し、リスナーをA Triggering Mythの音楽世界へと誘います。この曲では、彼らのクラシカルとプログレッシブ・ロックの影響が顕著に表れています。

  2. Deftly Dodging (5:18):より実験的なアプローチが取られているこの曲では、変拍子と複雑なメロディが特徴です。バンドのジャズとフュージョンへの傾倒が感じられる、技巧的でありながら感情的な楽曲です。

  3. Squdge (10:11):この曲では、バンドのシンフォニックな側面が前面に出ています。豊かなオーケストレーションと、感動的なメロディラインが印象的なトラックです。

  4. Il Voce (6:13):アルバム中でも特に繊細な楽曲で、リックとティムの優れた演奏技術が光ります。アコースティックな要素が際立ち、心地よいメロディが特徴です。

  5. Midiots, Vidiots, And The Digitally Delayed (3:27):この曲は、技術的な洗練さと音楽的な深さを示しています。複雑なリズムとメロディが組み合わさり、アルバムの多様性をさらに強調します。

  6. Between Cages (Suite) (21:51):アルバムの終曲であり、7つのセクションから構成される壮大な組曲です。このスイートは、アルバムのクライマックスを飾り、力強いピアノと濃密なサウンドスケープで、リックとティムの音楽的な深みと多様性が如実に表れています。

まとめ

音楽的には、リックとティムの多様な背景と影響が結集した作品であり、プログレッシブ・ロックの伝統にクラシック、ジャズ、実験音楽など、異なるジャンルの要素を巧みに組み合わせることで、独特の音楽世界を創造しました。「Between Cages」は、A Triggering Mythによるプログレッシブ・ロックの枠組みを超えた音楽的探求の象徴です。

なんと、こんなに推しのアルバムなのにyoutubeに上がっていませんね。仕方がないので、5枚目のアルバムを載せます。これが、曲想としてはやや近いかな。

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