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Kansas / Masque (仮面劇)

■Kansas / Masque
■収録曲:Side 1 - 1.It Takes A Women's Love (To Make A Man)(3:06) 2.Two Cents Worth(3:07) 3.Icarus Borne On Wings Of Steel(6:02) 4.All The World(7:08) // Side 2 -1.Child Of Innocence(4:33) 2.It's You(2:32) 3.Mysteries And Mayhem(4:19) 4.The Pinnacle(9:34)
■パーソネル:Phil Ehart(dr) Dave Hope(b) Kerry Livgren(g,key) Robby Steinhardt(violin,viola,vo) Steve Walsh(vo,key) Rich Williams(g)
■リリース:1975年
■カバー・アート:Giuseppe Arcimboldo

 1975年リリースの3作目、マスク、邦題「仮面劇」は、アレンジがややシンプルになり、全体にギターの荒いオーバードライブが耳につく仕上がりとなっています。そして、レコード会社の指示でシングル・ヒットを狙って作曲されたとされるIt's takes woman's love (to make a man) が収められています。

 唯一シングルカットされたにもかかわらずヒットはしなかったそうです。サックスの陳腐なソロが入っているなど、初期の作品の中でも特に異様です。歌詞が異常に馬鹿げていることもこの曲の特徴です。きっと、スティーヴ・ウォルシュにもそれなりの思惑があったに違いないのではと思えてくるような曲ですが、長年聴いていると、実は、この異質感がすごく心地よくなって来るので妙なものですね。

 さて、他方でこのアルバムに収められた他の作品に目を移してみると、これは実に素晴らしいものばかりなのです。ABBAのEagleのようなポップさにスピード感溢れる展開が融合した名曲Icarus-Borne on wings of steelをはじめ、ボーカル・ハーモニーと強烈な変拍子とギターのリフが印象的なAll the world、リフとキメそしてブレイクが鮮やかなChild of innocence、狂暴極まりないフレーズの展開が見事なまでにスリリングなMysteries and mayhemと挙げればきりがないって感じです。

 そして、何よりの極め付けは終曲9分強に及ぶThe pinnacle(邦題:尖塔)です。この曲からは、これまで彼らが見せてきた密度の濃いオーケストレーションから、比較的音の隙間を多くして、しかもその分、楽曲そのものの構成が練り込まれたという印象を受けます。そして、そのメロディーラインについて言えば、彼ら特有の哀愁あるいは叙情性が極みに達しています。シンプルであり物語性があり且つ訴えるところの多い歌詞もなかなかのものです。

 Kansasの楽曲のうち、オーケストレイションを多用するドラマチックな曲の殆どすべてはKerry Livgrenが書いています。彼はドラスティック・メジャースまでKansasに在籍し、以降も曲を提供しつづけています。ドラムス・ベース・ギター・キーボード・バイオリン・ボーカルという基本的なバンドの構成がマルチ・プレイヤーのKerry Livgrenの存在により、変幻自在なツイン・ギター或いはツイン・キーボードとなり、インストルメンタルに幅を持たせているのですが、かかる多才振りの中でも取り分け彼の作曲能力には目をみはるものがあります。

 さて、最後にチャートに触れておくと、本作は、ビルボード最高位70位(1976年2月)、売り上げ25万枚であり、セールスとしては過去のアルバムとほぼ同様であったようです。

 ジャケットの絵は、ジュセッペ・アーチンボルドーの「水」です。彼の絵は生で一度みてみたいのものですね・・・と思っていたら、上野の美術館にやってきたんですよ。魚や野菜などを並べて肖像画を描いていた1500年代のミラノの画家です。まさか、本当に見られるとは思っていなかったので大感激でした。美術館に売られている絵は発色が悪かったので、Allposter.comで額付きのを買ってしまいました。時々、オタ部屋の壁にも架けています。


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